スタチンの副作用である重症筋無力症について

2023720日、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知で、すべてのスタチン製剤の添付文書において、スタチンの重大な副作用として重症筋無力症を発症する可能性のあることを注意書きとして記載することが義務付けられました。医師は、重症筋無力症患者、あるいは、その既往歴のある人の場合には慎重にその点を考慮して、スタチン製剤の処方を判断しなければなりません。

 

症例報告の多くはスタチンを内服開始した後2週間以内に重症筋無力症を発症していますが、数ヵ月たってから発症する例もあり、長年、スタチンの副作用として重要視されていませんでした。しかし、スタチンの投与を中止した後には症状は殆どの場合に改善していますので、スタチンの副作用であることは明らかです。

 

発症のメカニズムは諸説ありますが、その中でも有力なメカニズムの候補として考えられているのが、シナプス伝達障害です。コレステロールは細胞膜の構成成分ですが、神経筋接合部のシナプス後膜に多く存在していて、ニコチン性アセチルコリン受容体の機能にも関わっています。したがって、コレステロール不足によって、シナプス伝達に障害が起こり、重症筋無力症の症状を増悪させるものと考えられます。神経筋接合部は図1をご参照ください。

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現在、LDLコレステロールが高めであるとスタチンが処方されるのですが、LDLコレステロールは全身の細胞にコレステロールを届けるという重要な役割があります。コレステロールは細胞膜の形成に必要なものであり、男性ホルモン、女性ホルモン、胆汁酸、ビタミンDの原料であるなど、ヒトのカラダにとって重要な成分です。実際、伊勢原市民のLDL値と死亡率の関係を図2に示していますが、男女ともにLDL値が高くなるにしたがって死亡率は減少傾向にあります。

 

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LDLコレステロールが動脈硬化の原因ではなく、LDLコレステロールを大型と小型に分ける必要があり、小型LDLコレステロールが動脈硬化を引き起こす、真の悪玉コレステロールであることは、冠動脈疾患患者の小型LDLコレステロール値で明らかです。

 

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スタチンを服用すると、コレステロール不足によって重症筋無力症を発症するだけではなく、コエンザイムQ10の生合成も抑制しますので、善玉ホルモンと呼ばれるアディポネクチン分泌量も減少し、糖尿病の発症率も2倍から3倍に上昇すること、さらには、肥満やがんの発症率も高くなることも明らかとなっています。

 

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したがって、スタチンを服用してコレステロールとCoQ10を減少させるのではなく、小型LDLコレステロールを減少させるためにαオリゴ糖の摂取をお薦めします。

 

LDLコレステロール値が高いために医師の判断でスタチンを処方された場合には少なくともコエンザイムQ10をサプリメントで補うべきであることを提案します。

 

尚、私の友人で、スタチンを服用して、みるみる白髪になり、シワが増えるような老化症状が出てきた人を何人も確認しております。

タウリンの効能について

タウリンはヒトをはじめとする哺乳動物に最も多く含まれるアミノ酸の1つで、ヒトの体内には、体重の0.1%のタウリンが含まれています。 このうち60-70%は筋肉にあり、Ca2+の動員、浸透圧調節作用、抗酸化作用などを介して筋収縮や筋機能維持において重要な役割を担っています。これまでの研究で、加齢に伴って血中タウリン量が減少することは知られていました。 

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しかし、血中タウリン濃度がどのように老化に影響するかどうかは不明でした。そこで、米コロンビア大学の研究グループが老化の結果としてタウリンが減少するのか、タウリンが減少する結果として老化するのかを明確にするための研究を行い、サイエンス誌に発表しています。ここでは、その研究結果の総括のみを記しておきます。

 

動物(マウス)の試験によって、タウリンを摂取すると寿命の延長が示され、さまざまな健康状態の改善が確認されました。

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ヒト試験においては、まだ、詳細な効果の検証が必要な段階ですが、体内のタウリン濃度と各種疾患の指標に負の相関のあること、つまり、タウリン濃度が低いとさまざまな疾病のリスクは高くなることが確認されています。

 

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PSトッピング成分による腸内環境改善(その➋)

これまでにプレバイオティクスとしてのαオリゴ糖による腸内環境改善については幾度となく紹介してきました。ここでは、αオリゴ糖に限らず、パーソナル化サプリメントに使用されているさまざまなトッピング成分の腸内環境改善作用についてまとめておきます。前回(その)は、αオリゴ糖、γオリゴ糖、クルクミン、そして、レスベラトロールについて紹介しました。今回(その)は、δ-トコトリエノール、キウイポリフェノール、そして、大麦若葉について紹介します。

 

 δ-トコトリエノールのF/B比の低減効果とアッカーマンシア菌増殖作用

 

δ-トコトリエノールには、クルクミンと同様にF(デブ菌)/B(ヤセ菌)比の低減効果が示され、レスベラトロールと同様にアッカーマンシア菌の増殖作用が示された論文があります。(E. Chungら、NUTRITION RESEACH  77, 97-107(2020)

 

5週齢の雄マウス48匹に、固形食品と蒸留水を自由に摂取させ、5日間新しい環境に馴染ませ、馴化後、マウスの体重を測定し、体重により無作為に層別し、4つのグループ(n=12/群)に分けて、以下の食事を14週間摂取させています。

 

グループの内訳:

●低脂肪食グループ:LFD(脂肪由来のエネルギーは5)

●高脂肪食グループ:HFD(脂肪由来のエネルギーは58%)

HFDにδ-トコトリエノール800mg/kgを添加したグループ:AT

HFD200mgのメトホルミン/kgを添加したグループ:MET

 

尚、ATはアナトー油から抽出したもので、純度は70%であり、90%のδ-トコトリエノールと10%のγ-トコトリエノールで構成されています。また、METはメトホルミンという糖尿病治療薬です。

 

LFD群と比較して、HFD群では、F/B比が顕著に増加し、さらに、メトホルミン群では、更なるF/B比の増加が観られました。しかしながら、AT群ではF/B比が低脂肪食のLFD群よりも低下しています。

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アッカーマンシア菌のバクテロイデス菌と同様にヤセ菌と呼ばれる善玉菌で、腸内で増やすことにより痩せやすくなり、糖代謝、脂質代謝、腸管免疫制御、抗肥満作用があることが明らかとなっていますが、糖尿病治療薬のメトホルミンを使用すると、糖尿病患者のアッカーマンシア菌を含む腸内細菌叢に変化のあることが知られています。今回の結果では、メトホルミン(Met)群ではなく、δ-トコトリエノール(AT)群が、LFD群に比べて、アッカーマンシア菌が増加していることが確認されています。 

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 キウイポリフェノールの善玉菌増殖作用と悪玉菌低減作用

 

 キウイフルーツのポリフェノール抽出物にも腸内細菌叢を改善して高脂肪食によってもたらされた腸管のダメージと炎症を軽減させる作用が報告されています。

 

Supplementation of Kiwifruit Polyphenol Extract Attenuates High Fat Diet Induced Intestinal Barrier Damage and Inflammation via Reshaping Gut Microbiome

(M. Yuanら、Frontiers in Nutrition, Original research published 30 August 2021 doi: 10.3398/fnut. 2021, 702157)

 

雄のSDラットの腸管バリアに対する高脂肪食とキウイフルーツポリフェノール抽出物(KPE)の影響を調査したところ、KPEを補給した食事は、体重を減らし、密着結合タンパク質の発現を増加させ、高脂肪食によって誘発されたリーキーガットの状態を軽減できることが明らかとされています。

 

糞便のRT-PCR解析を行ったところ、普通食に比べ高脂肪食では有益な菌が減少し、有害な菌が増加しますが、KPEの含量を増やすにしたがって、善玉菌の増殖と有害な細菌の減少が確認されました。これらの結果は抗炎症と相関していることが示唆されます。

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❸ 大麦若葉(青汁)の短鎖脂肪酸産生とプレボテラ菌の増殖

 

コサナの『マヌカハニー青汁』に配合されている原料のニュージーランド産大麦若葉の機能性についての紹介となります。大麦(Hordeum vulgare)はイネ科の穀物で、世界でもっとも古くから栽培されていた作物の一つです。大麦若葉とは、まだ穂をつける前、生育して草丈が20cmくらいになった頃の葉の部分を指します。大麦の葉は旬の頃が最も栄養価が高く、60cmほどに育った葉と比べると、タンパク質やカルシウムの含有量はおよそ1.6倍、カリウムは1.35倍多くなるといわれています。また、ビタミン、ミネラル、食物繊維など、さまざまな栄養素がバランスよく含まれることも、注目される理由のひとつです。大麦若葉に含有されている機能性成分と慢性疾患に対する効果を表1.に纏めています。 

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ここでは、大麦若葉も腸内細菌叢に好影響を及ぼし、短鎖脂肪酸が増加することが示された論文を紹介しておきます。

 

『ラットの腸内細菌叢と盲腸内容物短鎖脂肪酸含量に及ぼす大麦若葉搾汁末の影響』

(海野ら、Nippon Shokuhin Kagaku Kaishi, 63(11), 510-515, 2016

 

大麦若葉 乾燥末あるいは大麦若葉搾汁末のヒトにおける便通改善効果の知見は蓄積されつつありますが,腸内細菌叢の構成・機能 に及ぼす影響についてはこれまで詳細に検討されてはいませんでした。そこで、この論文では,大麦若葉搾汁末をラットに混餌投与した場合の腸内細菌叢と盲腸発酵性に及ぼす影響を検討しています。使用した大麦若葉搾汁末は100 g当たり水溶性食物繊維を1.8 g、不溶性食物繊維2.7 g含有しています。

試験内容は雄ラット(n=26)に対して、1週間予備飼育を行った後、①コントロール群(n=8)、②2%大麦若葉群(n=9)、③10%大麦若葉群(n=9)に群分け、4週間、飼料と水は自由摂取として飼育しています。

 

飼育4週間後、盲腸内容物中の短鎖脂肪酸を測定した結果、10%大麦若葉群ではコントロール群と比較して酢酸、プロピオン酸、酪酸のいずれも高い値を示していました。 

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また、腸内細菌叢を解析した結果、大麦若葉搾汁末の配合量依存的にプレボテラ菌の増加が確認され、コントロール群と比較して10%大麦若葉群で顕著に増加することが明らかとなりました。

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尚、コバチェバらの研究では、健常人を対象に食物繊維を多く含む大麦を用いたパンを摂取させ、その後に糖負荷試験を行った結果、血糖上昇が抑制された被験者群の糞便中にプレボテラ菌が増加していることが明らかとされています。プレボテラ菌が糖代謝に関与しているものと考えられます。このことは、プレボテラ菌の占有率を高めることで糖代謝が改善される可能性を示唆しています。

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