酪酸産生によるNK細胞活性化で免疫力向上

病を逃れるための免疫細胞であるナチュラルキラー(NK)細胞をご存知ですか?

 

健康な人の生体内では1日に5000個のがん細胞が発生することが判っています。このがん細胞に対して、その生体内では50億個のNK細胞が働き、がん細胞を破壊しています。その理由で殆どのヒトはがん細胞に侵されずにすむわけです。このNK細胞の働きはNK活性と呼ばれていて、NK活性化に、笑いや森林浴、有酸素運動などが有効であることが明らかとなっています。

 

NK活性を高める栄養素としては、この『健康まめ知識』では、以前に三大ヒトケミカルを取り上げました。三大ヒトケミカルの生体内生産量が減少する20才を境に、このNK活性値も比例して減少していくことが報告されており、CoQ10R-αリポ酸などのヒトケミカルの摂取がNK活性を高める可能性が示唆されています。

 

城先生と寺尾先生の知って得するかも? 健康・化学まめ知識 健康編 : ヒトケミカルで健康的なエイジング、K-エイジング(その2. 笑いとヒトケミカル摂取でNK細胞の活性を高めてがん予防) (livedoor.jp)

 

NK細胞やキラーT細胞などのがん細胞やウイルスが感染した細胞に対して攻撃する細胞を含めた免疫細胞の約70%は腸に存在しています。安定した免疫の働きのためには腸の健康が欠かせません。そこで、今回の『健康まめ知識』は腸の健康のためのキウイフルーツとα-オリゴ糖で粉末化したキウイ・α-オリゴ糖・パウダー(KAP)の紹介です。

 

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KAPはキウイフルーツに含まれる消化酵素のアクチニジンの安定化のために開発されました。ただ、キウイフルーツにはもう一つ健康増進に重要な腸内環境改善のための物質である水溶性食物繊維のペクチンが含まれています。

 

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キウイフルーツの食物繊維量はさまざまな果物の中でも群を抜いて高いことが知られています。したがって、キウイフルーツを食べると善玉の腸内細菌によって腸内環境を整える短鎖脂肪酸の酪酸やプロピオン酸が作られることが確認されています。

 

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一方で、KAPに使用されているスーパー食物繊維α-オリゴ糖もキウイ食物繊維と同様に、他の食物繊維に比べて、酪酸産生菌による高い酪酸と水素の産生量が確認されています。

 

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2024年にスペインの研究グループはNK細胞の培養において酪酸を添加すると無添加と比較して増殖率が向上することを確認しました。つまり、KAPを摂取することによって腸内に酪酸が増加することで、これまでにも、腸管上皮細胞のエネルギー源、炎症性腸疾患、腸管バリア機能改善、抗糖尿病、抗アレルギー、脳機能改善、骨量増加などの効果が知られていましたが、それらに加えて、酪酸はNK細胞の活性化によって免疫力を向上させることも明らかとなっています。

 

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尚、腸内で酪酸が産生する際には4倍量の水素が発生します。酪酸作用機序は異なるのですが、酪酸とともに水素も癌などの恐ろしい病気から私たちを守ってくれる物質です。

 

活性酸素には私たちの体に良い善玉活性酸素と悪玉活性酸素があって最小の抗酸化物質である水素は善玉ではなく悪玉の活性酸素を選択的に除去してくれるのです。

 

活性酸素は4種類に分けられ、その中で、スーパーオキシドラジカルや過酸化水素は善玉活性酸素であり、私たちの体にとって有益であり、神経伝達や血管新生、そして、免疫機能といったはたらきがあります。一重項酸素は抗菌抗ウイルス作用を持っており、体にとって有益な働きもあるのですが、その一方で、紫外線によって皮膚のタンパク質や脂肪を酸化させることによって肌老化を促進してタルミやシワの原因を作る活性酸素でもあります。そして、最も悪玉の活性酸素がヒドロキシラジカルです。ヒドロキシラジカルは4種類の活性酸素の中で最も強力な酸化作用を持っており、シミやしわ、たるみなどの肌老化のみならず、糖尿病、認知症、生活習慣病、癌といった恐ろしい病気の原因となっています。

 

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このヒドロキシラジカルが発生する要因は、太陽からの紫外線や酸性雨、飲酒や喫煙、激しい運動、細菌やウイルス、車の排気ガス、化学工場やごみ焼却場からの排煙やダイオキシン、殺虫剤や除草剤、食品の防腐剤、携帯電話、テレビ、パソコンからの電磁波、放射線治療、ストレスなど実にさまざまです。なので、遠い昔から悪玉活性酸素であるヒドロキシラジカルの問題は存在していましたので、ヒトは生まれながらにしてヒドロキシラジカルの攻撃から自然と身を守るスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やグルタチオンペルオキシダーゼといった『抗酸化物質』を体内に備えています。しかしながら、老化現象として、年齢に伴ってこのような体内の抗酸化物質は減少していくのです。そこで、抗酸化物質を日々補充することがアンチエイジング(抗老化)となります。

 

抗酸化物質にはビタミン類やポリフェノール類など様々な物質が知られていますが、水素は抗酸化物質の中でも唯一、善玉と悪玉の活性酸素を選別して悪玉活性酸素のヒドロキシラジカルだけを消去できる抗酸化物質なのです。

 

アンチエイジング、病気にならないカラダ、免疫力を高めるためにキウイフルーツとαオリゴ糖と酪酸菌を配合した『キウイとオリゴのパウダー』を摂取しましょう。

 

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ポリコサノールの吸収性を高めるのはα-オリゴ糖

この『健康まめ知識』では202092日に『米ぬか成分ポリコサノールの効能』というタイトルで米ぬかのロウ層に含まれているポリコサノールを取り上げています。

 

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主に日本油脂の米ぬか由来ポリコサノール含有機能性製品『コメコサノール』のパンフレットに記載された研究結果を紹介しています。

 

    ポリコサノールの効能としてヒト試験による小型LDLコレステロールの低減作用

 

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    肝機能改善効果として二日酔いの原因物質であるアセトアルデヒドの低減作用

 

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    融点が高く水に溶けにくく低吸収性ポリコサノールのγ-オリゴ糖包接化よる生体吸収性の改善

 

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城先生と寺尾先生の知って得するかも? 健康・化学まめ知識 健康編 : 米ぬか成分ポリコサノールの効能 (livedoor.jp)

 

ここで、『なぜもう一度、『健康まめ知識』でポリコサノールを取り上げるのか?』との質問にお答えします。

 

その一つ目の理由は、最近、コサナのパーソナル化サプリメントのトッピングとして『ポリコサノール包接体』がリリースされたのですが、その効能は『ドロドロからさらさらへ』と薬機法を意識してなのか、効能が分からない説明になっていて、とても素晴らしい成分にもかかわらず、このトッピングを摂取したいと思う方は皆無の可能性があるからです。

 

ポリコサノールには、前述の小型LDLコレステロール低減作用、肝機能改善作用に加えて、運動能力の向上作用とストレスの緩和作用があります。

 

運動能力

S.H.Lee et al., International Journal of Sports Physiology and Performance14, 1297(2019).

 

ストレスの緩和

M. K. Kaushik et al., Scientific Reports7, 8892 (2017).

 

二つ目の理由は、吸収性の低いポリコサノールに対して、日本油脂はマウスに経口投与して、無添加とγオリゴ糖、リポソーム、乳化剤、油脂による各種製剤を比較し、ポリコサノールの血中への移行が最も高い方法はγ-オリゴ糖であることを確認しているのですが、α-オリゴ糖とβ-オリゴ糖の比較はしておりませんでした。

 

そこで、シクロケムバイオは各種環状オリゴ糖の吸収性の比較をするために人工腸液中のポリコサノールの溶解度の変化を検討し、その結果を2021年のシクロデキストリンシンポジウムで報告しています。(第37CDシンポジウム講演要旨集, 171-172(2021)

 

人工腸液におけるポリコサノールの溶解度は、ポリコサノール単独では検出限界以下でしたが、ポリコサノールの各種環状オリゴ糖包接体では溶解度の向上が確認されました。中でも、ポリコサノール-α-オリゴ糖包接体で最も高いポリコサノールの溶解度が示されています。したがって、前述のマウス試験と人工腸液による試験の結果から、α-オリゴ糖を用いることでポリコサノールの溶解度は顕著に改善するものと考えられ、経口吸収性が向上することが示唆されています。

 

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NHKの健康番組『あしたが変わるトリセツショー』に関するコメントと追加情報 (その❸.の補足②:α-オリゴ糖による飽和脂肪酸排泄と小型LDL生成抑制)

2024523日、NHKの健康番組で初めて、その小型LDLコレステロールが超悪玉“コレステロールとして取り上げられましたので、その番組に関してコメントと追加情報を3回にわたってお伝えしました。3回で完結したのですが、さらに、医療従事者に、スーパー食物繊維であるα-オリゴ糖を理解してもらいたく、その❸の補足をしており、前回は、超悪玉コレステロールを減少させるためのα-オリゴ糖による血清中性脂肪の低減作用を説明させていただきました。今回は、飽和脂肪酸選択的排泄によるインスリン抵抗性改善と小型LDLコレステロールの生成抑制について説明させていただきます。

 

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肥満などが原因でインスリン抵抗性を引き起こされることは知られていましたが、その仕組みは良く分かっていませんでした。そこで、2018年に理化学研究所(理研)の研究グループは高脂肪食に含まれる長鎖飽和脂肪酸であるパルミチン酸が及ぼす細胞脂質代謝の変動を調べ、パルミチン酸が引き起こすインスリン抵抗性のメカニズムを以下の論文で明らかとしています。

 

"GPRC5B-mediated sphingomyelin synthase 2 phosphorylation plays a critical role in insulin resistance", Yeon-Jeong Kim, Peter Greimel, Yoshio Hirabayashi, iScience 2018

 

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α-オリゴ糖にはインスリン抵抗性や動脈硬化の原因となる長鎖飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を選択的に包接して排泄する作用のあることが複数のビボ試験とビトロ試験で明らかとなっています。

 

たとえば、αオリゴ糖は飽和脂肪酸、トランス脂肪酸などの悪玉脂肪酸を選択的に排出し、DHAやオレイン酸などの善玉脂肪酸は積極的に生体内に取り入れるといった高脂肪食を給餌したラット実験による報告があります。

 

Alpha-Cyclodextrin Selectively Increases Fecal Excretion of Saturated Fats

Daniel D. Gallaher1, Cynthia M. Gallaher1, and David W. Plank2

1Department of Food Science and Nutrition, University of Minnesota, St. Paul, MN 55108

2Ingredient Technology, General Mills, Inc., Minneapolis, MN 55414

Experimental Biology Conference in Washington2007.5.

 

 この検討では、披検動物としては生後10週間となるメス20匹のノックアウトマウス(LDLr-KO)を用い、コントロール群には、脂質分として乳脂肪を加えた改良飼料(脂質21%(質量%)、セルロース21g/kg0.2% コレステロール、4.5 kcal/gHarlan Teklad ‘Western diet’ TD. 88137)を与え、α-オリゴ糖投与群には、コントロールの飼料に含まれるセルロースの換わりに、αCD 21 g/kgを混合した試験飼料(脂質の10%)を与えています。尚、この乳脂肪は、飽和脂肪酸が65%、モノ不飽和脂肪酸が31%、多価不飽和脂肪酸が4%含まれています。

 

飼料を与える前と14週間後の血漿中の脂肪酸構成をガスクロマトグラフ法で定量したところ、飽和脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸)の減少、不飽和脂肪酸(オレイン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸)の増加、トランス脂肪酸の減少が確認されています。

 

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α-オリゴ糖による飽和脂肪酸の選択性に関するもう一つのビボ試験(ラット試験)があります。(D. D. Gallaher et al., Faseb. J., 21, A730, 2007

 

飽和脂肪酸中性脂肪としてトリパルミチンと不飽和脂肪酸中性脂肪としてトリオレインを11で含有した食餌を与えた食物繊維無添加群、その食餌に食物繊維としてキトサンを添加したキトサン添加群、そして、α-オリゴ糖を添加したα-オリゴ糖群に分けて、各群の糞便に含まれる油脂を分析したところ、食物繊維無添加、キトサン添加の場合にはトリパルミチンとトリオレインの混合比は添加した際と全く同じの11でしたが、α-オリゴ糖を添加することでトリオレインの約16倍ものトリパルミチンが糞便に含まれており、飽和脂肪酸が選択的に排泄されることが明らかとなっています。

 

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このようにα-オリゴ糖による血漿中と糞便中の各種脂肪酸量の変化を調査した結果、α-オリゴ糖には明らかな飽和脂肪酸選択的排泄作用のあることが確認されています。

 

このα-オリゴ糖の選択的脂肪酸排泄作用は各種脂肪酸のαCD包接体の溶解度の違いによるものと考えられます。そこで、シクロケムバイオはα-オリゴ糖の濃度変化による各種脂肪酸溶解度変化を検討しています。

 

まず、検討そのとして、飽和脂肪酸の炭素数の違いを調べたところ、α-オリゴ糖の濃度上昇にともない長鎖脂肪酸(C18C16)の溶解度は減少しました。一方で、中鎖脂肪酸(C14 )は濃度変化に関係なく溶解度は維持されていました。

 

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次に、検討そのとして、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いを調べたところ、α-オリゴ糖濃度の増加に伴い飽和脂肪酸の溶解度は顕著に低下しました。

 

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さらに、検討その❸として、トランス脂肪酸とシス脂肪酸の違いを調べたところ、α-オリゴ糖濃度の増加にともないトランス脂肪酸の溶解度は顕著に減少しました。

 

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これらのビボ試験とビトロ試験の結果から、α-オリゴ糖は糖尿病や動脈硬化の原因となる悪玉の長鎖飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を選択的に排泄する作用のあることが確認されています。

 

最後に、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の選択的排泄に関する考察として、直鎖状の脂肪酸であることからα-オリゴ糖に包接しやすく、不溶性包接体を容易に形成し、脂肪分解酵素による分解を受け辛いと考えられます。一方で、シス体の不飽和脂肪酸は湾曲状の脂肪酸で包接しにくいために、脂肪消化酵素によって分解され吸収されると考えられます。

 

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