2013年09月

フルーツの王様と呼ばれるキウイフルーツとは


『蜂蜜の王様』といえば、ニュージーランドのマヌカハニーですが、ニュージーランドには、もう一つ“王様”と呼ばれる特産品があります。それは『フルーツの王様』、キウイフルーツです。

 


キウイフルーツの原種は、中国のシナサルナシ(オニマタタビ)というマタタビ科の植物ですが、20世紀の初めにニュージーランドに移入され、長い年月をかけて改良され、現在の栄養成分が豊富なキウイフルーツになりました。

 


『フルーツの王様』とまで呼ばれる、キウイフルーツの特徴的な栄養成分は、ビタミンA前駆体(β-カロテン)、ビタミンC、ビタミンE、葉酸、カリウム、食物繊維のペクチン、ヘミセルロースのアラビキシラン、そして、タンパク分解酵素のアクチニジンなどです。アクチニジンに関しては、以前、この『まめ知識』で説明していますので下記をご確認下さい。

 


http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/27578694.html

 


アクチニジンとともに健康増進のためのすばらしい成分が、食物繊維のペクチンとアラビキシランです。アラビキシランは、プレバイオティックとしてビフィズス菌や乳酸菌など善玉菌の増殖作用があり、ペクチンは酢酸、酪酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸に変換され、腸管内を酸性環境にして善玉菌が優位な状態にしてくれます。特に、酪酸は抗菌ペプチドのデフェンシンの発現を誘導し、デフェンシンの消化管粘膜免疫系における働きでウイルスや病原菌に対する自然抵抗力が増進することが知られています。

 


キウイ表


















 


実は、α-シクロデキストリンは食物繊維として、キウイフルーツとまったく同様の効果を有しています。αシクロデキストリンはタンパク分解酵素のアクチニジンを安定化すると同時に、腸管内では酪酸などの短鎖脂肪酸に変換され、デフェンシンの発現も助けてくれます。α-シクロデキストリンとキウイフルーツ、すばらしい組み合わせだと思いませんか?

 


http://www.cyclochem.com/cyclochembio/research/043.html

 


http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/30996703.html

αリポ酸サプリメントに含有するS体の危険性が明らかに

日本で、αリポ酸のサプリメント化が可能となり、その製品が流通するようになったのは2004年のことですが、サプリメント大国のアメリカでは、それ以前から人気のあるサプリメントとして広く利用されてきました。その理由は“アンチエイジング”、“スポーツパフォーマンスの維持”、そして、“メタボ対策”です。αリポ酸は、抗酸化物質として活性酸素の害から私たちの体を守り、そして、糖代謝促進物質としてエネルギー産生を高め、糖尿病の合併症や老化の原因となる糖化を防ぐ抗糖化作用を有する健康増進効果がありますので、近年、注目を集めるようになってきました。

 


しかしながら、実際に広く使用されているαリポ酸は、本来、私たち自身の体内で作られているR体ではなく、天然に存在しないS体を50%含んでいるラセミ体です。ラセミ体よりもR体単独の方が、より効果が大きいという幾つもの研究報告があるのですが、ラセミ体の方が安定で製造コストが安いためにラセミ体が使用されています。

 


実は、αリポ酸の研究論文は“R体単独の方が健康増進効果”が高いという報告だけには留まっていないのです。意外に知られていませんが、非天然のS体を50%含むラセミ体の毒性に関する研究報告の論文も多数あるのです。

 


人に対する、ラセミ体αリポ酸サプリメントでは、特定の遺伝子素因を持った人がインスリン自己免疫症候群を引き起こし、低血糖状態になり、冷や汗や手足の震えが起こる問題が指摘されている程度ですが、ペット用のラセミ体αリポ酸サプリメント摂取による犬猫の死亡例は多く確認されています。動物実験に関する学術論文では、ビタミンB1欠損のラットや糖尿病モデルマウスを用いた実験で、非天然体であるS体を摂取すると死亡率が急激に増加することが分かっています。一方で、天然のR体摂取の場合は反対に糖尿病モデルマウスの死亡率を有意に減少させ、生存率を飛躍的に高めることが報告されています。

 


最近、私たちの研究で、S体のαリポ酸は胃液、腸液、血液などの生体内液中に存在するアルブミンやγグロブリンなどのタンパク質が存在すると凝集体を形成するという(R体では起こらない)現象が確認されました。

 


S体リポ酸


















 


これまでの報告の中に、αリポ酸をマウスへ混餌摂取させた試験の血液生化学検査値において、尿酸やカリウムが有意に上昇したという報告があります。そして、その考察として“何らかの要因で腎臓に沈着あるいは蓄積し、糸球体の濾過機能に異常がみられる”といったαリポ酸の腎機能障害の可能性が指摘されております。このような報告に照らし合わせ、現在、私たちの研究グループでは、この腎機能障害は血中におけるS体とタンパク質の凝集体が原因であろう、と仮説を立てて、in vivo in vitro の双方で、さらに詳しい研究を行なっております。

 


天然には存在しないS体を50%含む、αリポ酸サプリメントを製造販売している健康食品会社の皆様、αリポ酸サプリメントを愛飲している消費者の皆様、特に、メタボリックシンドローム、糖尿病、動脈硬化に不安を持っている方、腎機能に問題を抱えている方、そのサプリメントがラセミ体であれば、直ちに製造販売、愛飲を控えて下さい。そして、安全で健康増進効果のあるR体のサプリメントに切り替えて頂きたいと思います。天然に存在しない機能性物質を摂取することで、過去に重篤な障害を起こしていることは経験済みです。より健康な生活のためにサプリメントは利用されなければないと考えます。

 


次の『まめ知識』のページをご参照ください。

 


http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/26871220.html

 


http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/26587141.html

 


CoQ10による筋肉保護でアスリート達のスポーツパフォーマンスは維持できる

このまめ知識では、既に『筋肉増強による基礎代謝の改善』というタイトルで筋肉の増強・維持についてお話していますが、今回は、クレアチン・クレアチニンをキーワードに健康維持というよりもスポーツパフォーマンスの維持という切り口からの内容です。

 


加齢とともに筋肉量は減少していきます。高齢者が、椅子から立ち上がる、階段を上がるなどの日常活動が困難になったり、転倒の危険が増えるのも筋肉の量と強さの減退によるものです。一般的に、筋肉と瞬発力は、3050代にかけて減少しはじめ、60代になると急激に減少していきます。この加齢による減少は、体力の減少と相関関係があります。

 


筋肉及び体力の維持のために鍵をにぎる生体機能物質は幾つかあるのですが、その中で、特に瞬発的、そして、持続的に激しいスポーツパフォーマンスに必要な物質がクレアチンです。運動に必要なエネルギー供給方式で、一般に言われているのは、以前の『まめ知識』でも出てきたのですが、解糖系(無酸素運動)とTCA回路(有酸素運動)があり、瞬発力の必要な短距離走などの運動には、無酸素の解糖系が必要と説明しました。しかし、さらに、瞬時に利用できるエネルギーが、図1の示すように筋肉が保持しているATPとクレアチンリン酸(PCr)なのです。ATPは、エネルギーに変換された後にADPとなりますが、そのADPPCrによってリン酸が供給されATPに再合成されます。つまり、クレアチンは激しい高エネルギーが求められる運動には、ATP再合成に不可欠な物質なのです。

 


図1


















 


クレアチンは、体内のさまざまな組織に存在していますが、その95%は骨格筋に含まれており、筋肉中のクレアチン総含有量の60-70%は、高エネルギー分子であるホスホクレアチンの形で貯蔵されています。そして、クレアチンは最終的にはクレアチニンに分解されて、腎臓から排出されるのです。クレアチンは、体内でグリシン、アルギニン、メチオニンの3種のアミノ酸から合成されていますが、体内合成量は1日の必要量の半分にすぎず、残りは肉や魚などの食事から供給する必要があります。この点で、厳格な菜食主義者がスポーツをするには、そして、筋肉を維持するには問題があるのです。

 


クレアチンは、活性酸素を多く出す激しい運動や喫煙によって筋肉代謝(筋肉の分解)が起こり、代謝産物としてクレアチニンに変化し、腎臓より排泄されます。つまり、尿中クレアチニン量をみることで、如何に筋肉が分解しているか、維持されているかが分かることになります。

 


そこで、活性酸素消去に有効なCoQ10のγCD包接体を喫煙者10名に6週間摂取してもらい、尿中のクレアチニン量の変化を測定しました。図2に示すように、喫煙者10名の尿中クレアチニン量の平均値は適正値よりはるかに高かったのですが、3週間後、6週間後には急激に減少していき、CoQ10摂取によって筋肉の分解は有意に抑制されることが分かりました。

 


図2



















 


さらに、筋肉収縮の際のエネルギー代謝に関与しているクレアチンホスホキナーゼ(CPK)の血中濃度も確認しております。CPKは、心臓をはじめ骨格筋、平滑筋など筋肉のなかにある酵素で、これらの細胞に異常があると、CPKが血液中に流れ出すため、高い数値を示します。図3のように、血中CPKも、CoQ10摂取後には低い値を示し、CoQ10は筋肉を有意に保護することが読み取れます。

 


図3


















 


30才を超えてもスポーツパフォーマンスを維持していきたいアスリートは、筋肉に十分なクレアチンを蓄え、筋肉を維持する為にも、CoQ10を積極的に摂取しましょう。CoQ10の有効な摂取には、生体利用能の高いγCD包接体を配合したサプリメントがオススメです。

 


Q10cystin 


 


機能性食品・化粧品開発に注目されはじめたシクロデキストリンとは

  CMC出版の月刊誌『ファインケミカル』の11月号に、「シクロデキストリンの機能性食品・化粧品への利用」という特集が組まれることになり、巻頭言の執筆依頼がありました。そこで、シクロデキストリンの製造と応用に関する歴史的な背景について、私の持っている知見を少しまとめてみました。この『まめ知識』でも紹介しておきたいと思います。



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シクロデキストリン(以下CD)は、グルコース分子がα-1,4グルコシド結合で環状に連なったオリゴ糖であり、グルコース数6個、7個、8個の環状オリゴ糖がそれぞれαCD、βCD、γCDと命名されています。歴史的な経過を辿ると、CDは天然に存在する物質として1891年に発見され、その後、CDそのものの環状の疎水性空洞内にさまざまな有機分子を取り込む包接作用があり、分子の包接安定化や徐放化など幅広い機能を発揮できることが次々と判明していきました。そして、発見されてから約90年の時を経て、1978年に、堀越らによって、先ず、βCDの工業生産が開始されました。さらに、20年経過した1999年に、G.Schmidらによって、従来、工業化は技術的に困難とされていたαCDとγCDの量産化に成功し、ここに3種すべてのCDの経済的生産が行われるようになりました。

 


このような工業生産の歴史的背景は、1980年から今日まで機能性食品・化粧品関連の産業分野におけるCDの応用研究にも劇的な変化をもたらしています。1980年から2000年までのCDの応用研究は、フレーバーや香料など揮発性物質の安定化と徐放、液体の粉末化、脂溶物質の可溶化、苦み低減といったように、ゲスト分子を物理化学的に物性変化させることが、CDの主な利用目的でした。しかし、天然型3種のCDが経済的に利用できるようになった2000年以降、CDの応用研究はさらに生化学的な分野へと大きな広がりをみせ、飛躍的に変貌を遂げることになります。

 


たとえば、最近の特筆すべき応用研究の一つに、機能性食品・化粧品分野におけるナノテクノロジーの革命ともいえる『γCDを用いた分子カプセル化法による脂溶性の薬理活性物質の可溶化と生体利用能向上』が挙げられます。このγCD分子カプセル化法は、リポソームや油脂系乳化剤を用いたマイクロカプセル化法に比べてナノ粒子の粒径は、一ケタ以上小さくでき、腸管吸収や皮膚浸透性が増大して飛躍的に生体利用能が向上する点、そして、この技術がさまざまな薬理活性物質に適用できる汎用性の高い点で、現在では、機能性食品や化粧品の開発に関わる多くの研究者に注目されております。

 


さらには、このような注目素材の機能性を高める副次的で脇役的なCDの利用だけではなく、CDそのものを機能性素材としてみる主役的なCDの利用も開発されています。一例として、αCDが、水溶性で難消化性のオリゴ糖であることに着目した研究では、αCDに血糖値上昇抑制効果、コレステロール、中性脂肪低減効果、体重減少効果などの一般的な食物繊維にみられる効果に加えて、最近では、悪玉の飽和脂肪酸の選択的排泄、整腸作用による抗アレルギー、高アンモニア血症の改善などのさまざまな効果が臨床試験によって実証されています。

 


この特集では、機能性食品・化粧品分野におけるCDの利用に関して、2000年以降に見出された注目すべき最新の研究成果を厳選して執筆をお願いしましたので、従来からCDを研究対象にされていた方々にも興味深くお読み頂けるものと考えております。

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巻頭言の中に記しているγCDを用いたナノテク革命については、Wiley-Blackwell出版社の『BIO-NANOTECHNOLOGYA REVOLUTION IN FOOD, BIOMEDICAL AND HEALTH SCIENCES』に、そして、αCDについては、ハート出版社の『新機能性食物繊維 α-シクロデキストリン』に詳細な内容が記載されています。


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