前回に引き続き、第7番目の栄養素フィトケミカルの中の強力な抗酸化物質、ポリフェノール類についての学術論文に基づく報告です。よって、前回のクルクミンとフェルラ酸の話も参考にしてお読み頂ければ幸いです。
ポリフェノールの中でも特に若返り・美容素材として知られているのが、クルクミン(肝機能向上、美容)、レスベラトロール(長寿、美容)、フェルラ酸(脳機能改善、美容)です。前回は、健康維持にインドのカレーとフランスのワインの組み合わせを提案しましたが、ここでは、その組み合わせに加えて、さらに、日本のお米(ライス)の組み合わせを提案します。とは言っても白米ではなく、玄米です。白米とは玄米から糠(ヌカ)を取り除いたものですが、この糠の中に、脳機能改善と紫外線吸収作用のあるフェルラ酸というポリフェノールが含まれているのです。
ただ、これらのポリフェノール(クルクミン、レスベラトロール、フェルラ酸)に共通している問題があります。それは、酸化されやすい(変質し易い)、水に溶けにくい、そのために、生体に吸収され辛いといった問題です。それを、3成分ともに一気に解決する方法が開発されました。それが、新食物繊維であるα型の環状オリゴ糖(以下、αシクロデキストリン)による包接化(シクロカプセレーション)です。尚、αシクロデキストリンの食物繊維としての効果効能は以下をご参照ください。
【飽和脂肪酸選択的排泄】
http://www.cyclochem.com/cyclochembio/research/005.html
【脂質低減作用】
http://www.cyclochem.com/cyclochembio/research/006.html
【血糖値上昇抑制作用】
http://www.cyclochem.com/cyclochembio/research/042.html
【コレステロールの低減】
http://www.cyclochem.com/cyclochembio/research/044.html
【抗菌作用】
http://www.cyclochem.com/cyclochembio/research/045.html
【抗アレルギー作用】
http://www.cyclochem.com/cyclochembio/research/050.html
各種シクロデキストリンと、食品分野で使用できる糖鎖をつけて水溶性を高めた分岐型シクロデキストリンの包接化によるこれらの難水溶性ポリフェノールの水溶化の検討をしました。(βCDは水溶性が低いため検討から外しています。)その結果、分岐型シクロデキストリンでなくてもαシクロデキストリンを用いれば、図1に示していますように3種のポリフェノールともに可溶化できることが判明しました。
次に、可溶化と吸収性に相関があるかどうか、の検討です。これは、インドの大学とシクロケムの共同研究で行われ、Journal of Inclusion Phenomenaという学術論文に2013年に発表されました。水中、胃液中、食後腸液中での各種シクロデキストリン包接体の溶解度が調べられています。図2に示しますように、何れの包接体でも食後腸液中での溶解度が最も高く、図1と同様に、αシクロデキストリンが最も溶解度向上能を持っていることが判りました。そして、大変興味深いことに、水への溶解度と生体への吸収性に相関がみられることが判明しました。よって、クルクミン、レスベラトロール、フェルラ酸ともにαシクロデキストリンを組み合わせれば、健康・美容に大変有効な機能性食品を開発できることになります。
つまり、昔から食されてきたインドのカレー、フランスのワイン、そして、日本の玄米の食の融合・コラボですね。