2014年05月

活性酸素の種類と活性酸素消去のための抗酸化物質について

 この【健康・化学まめ知識】では、『酸化と還元』について取り上げ、活性酸素による細胞の酸化による損傷は、不倫相手による家庭崩壊と同じようなものと、細胞を夫婦に、そして、活性酸素を不倫相手にたとえて説明しました。

http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/36273830.html


 今回は、その活性酸素にはどのような種類があり、それらの活性酸素消去のために有効な抗酸化物質にはどのようなものがあるかを紹介します。
 
 先ず、活性酸素とはどういうものか・・・・・

 “活性な酸素”という言葉が示すとおり、酸素分子よりも酸化力(酸化活性)が強い(高い)物質をいいます。活性酸素にはスーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、そして、一重項酸素が知られていますが、これらは『狭義の活性酸素』です。広義には不対電子を持った分子や原子であるフリーラジカルも含めて酸素原子がなくても、強い酸化力を持ち、生体に有害であれば(広義な意味で)活性酸素です。よって、不倫相手は広義な意味での活性酸素ということになります。


 ではそれぞれの活性酸素はどう違うのか・・・・その前に酸素分子とは・・・・


 活性酸素の種類を説明するためには、まず酸素分子を理解してもらう必要があります。一般に原子は原子核の周りに複数の電子軌道をもっていて、その軌道に電子が2個ペアで揃って入っていれば安定化しています。ペアでない1個の電子を不対電子とよびますが、この不対電子は不安定で、他の分子から電子を奪って安定化しようとしています。つまり、不対電子はいつもパートナーの電子を求めている独り者なのです。ここで、不対電子をもつ活性酸素を不倫相手にたとえた意味が分かっていただけると思います。酸素分子は酸素原子が二つ結合したもので、2個の不対電子がペアを形成しますが、残りの2個の不対電子はそのまま不対電子で残った状態で存在しています。

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 ということで、一つ目の活性酸素、スーパーオキシドとは・・・・

 
 酸素分子が他の分子から電子を1個奪っている状態です。よって、不対電子は1個だけで、酸素に比べると高い反応性をもったフリーラジカルです。スーパーオキシドは、ミトコンドリアにおけるエネルギー産生の際に大量に発生していますが、他の活性酸素に比べると酸化活性はそれほど高くありません。このスーパーオキシドは、体内に存在するスーパーオキシドディスムターゼ(SODという抗酸化酵素で還元され過酸化水素となります。



 では、その過酸化水素とは・・・・・


 不対電子が電子をもらい、ペアとなっていますので、フリーラジカルではありません。しかし、生体に障害を及ぼすほどのスーパーオキシドよりも高い酸化活性を持っています。この過酸化水素は、鉄イオン存在下で、凶暴なヒドロキシラジカルへと変換されます。過酸化水素は不対電子を持っていないため安定な物質ですので、移動も容易で生体膜を通過できます。細胞内でヒドロキシラジカルに変化して細胞を損傷させることができます。つまり、過酸化水素は人の良さそうな営業マンのふりをして他人の家に入る強盗といえます。過酸化水素もスーパーオキシドと同様に体内で発生するものですので、生体内防御のため、生体内抗酸化酵素のカタラーゼペルオキシターゼによって水と酸素に分解されます。

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 その最も凶暴なヒドロキシラジカルとは・・・・・・・


 ヒドロキシラジカルは、前述の過酸化水素から鉄や銅などの金属イオンが触媒となって変換される、あるいは、酸素分子から紫外線によって生成される酸化活性の非常に高いフリーラジカルです。このフリーラジカルの寿命は、100万分の1と短いのですが、活性酸素の中でも最も活性が高いことから生体内のタンパク質、脂質、DNAなどをいとも簡単に酸化させ、がん細胞の発生や老化、様々な生活習慣病の原因となっています。


 ヒドロキシラジカルは細胞膜のリン脂質を酸化すると、リン脂質自体がフリーラジカルとなって、次のリン脂質を酸化するという連鎖的な脂質の過酸化反応を起こします。その結果、細胞膜が壊れ、細胞が死滅したり、DNAを損傷し、変異して、がん細胞が発生することもあります。

 
 スーパーオキシドはSODという抗酸化酵素が、そして、過酸化水素はカタラーゼ、ペルオキシターゼという抗酸化酵素によって消去できますが、ヒドロキシラジカルの消去に有効な抗酸化酵素はなく、生体内で作られているグルタチオンR-αリポ酸コエンザイムQ10などの抗酸化物質によってヒドロキシラジカルは消去されます。

 
 そして、残りの(肌の老化に関わる)一重項酸素とは・・・・・

 
 一重項酸素は、ヒドロキシラジカルと同様に酸素分子から紫外線によって生成します。酸素分子の2個の不対電子がペアになった構造をしていますのでフリーラジカルではありません。しかし、不対電子が存在していた軌道に電子がないため、その空軌道は2つの電子を必要としています。よって、一重項酸素は高い酸化活性を有しており、脂質を酸化するだけでなく、真皮では、肌の張りに関与するコラーゲンタンパク質を酸化分解するため、しわの発生に関与しています。アスタキサンチンは、他の抗酸化物質と比較して非常に優れた一重項酸素消去活性を有していることが2007年のNishidaらの報告で明らかになっています。
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 また、表皮では一重項酸素を生成する有害な紫外線から肌を守るため、色素細胞(メラノサイト)がメラニンという色素を合成しています。日光を浴びて皮膚が褐色に変化するのはこの色素によるものです。通常なら、メラニンは皮膚の新陳代謝であるターンオーバーにより、約28日間で古い細胞とともに垢として剥がれ落ちますが、老化、ストレス、食生活の乱れ、疲労などによって新陳代謝が正常に行われなくなると、過剰なメラニンの沈着が起こり、シミやソバカスの原因となります。このようなメラニン合成をδトコトリエノール(δT3が抑制することが分かっており、δT3はシミやソバカスの予防・改善にきわめて有効であり、美白作用のあることも報告されています。



αリポ酸ラセミ体サプリメントに含まれているS体による死亡率上昇メカニズムを解明!~糖尿病・脂質異常症の方のαリポ酸ラセミ体摂取は危険!~

 α-リポ酸(ALA)は、コエンザイムQ10やL-カルニチンと同様に厚生労働省によって2004年に医薬品から区分変更され、食品に利用できるようになった機能性素材であり、糖代謝の促進によるエネルギー産生や抗酸化作用が注目されています。しかしながら、現在、食品機能性素材として利用されているα-リポ酸は、生体内でもともと生合成されている天然型のR体(RALA)と非天然型のS体(SALA)を50%ずつ含んでいるラセミ体と呼ばれるものです。医薬品への配合であれば臨床試験に基づく摂取制限があるため、SALAに副作用があってもなんら問題にはなりません。しかし、摂取量の制限ができない食品となると話は違ってきます・・・

 まず、これまでに知られているALAラセミ体の安全性について・・・・・

 CremerらのALAラセミ体の安全性に関する報告があります。ラット単回投与試験におけるLD50値は2000mg/kg以上、Ames試験でも変異原性は示さない、また、4週間のラット反復投与試験でも無毒性量(NOAEL)は61.9mg/kg/日であると報告されています。さらにCremerらは、ラットに大容量のALAラセミ体(20~180mg/kg)を2年間に渡り、経口投与させても毒性に基づく血中パラメーターや臓器に異常は認められなかったと報告しており、ALAラセミ体の安全性は十分に示されているようにみえます。

 しかし、一方でSALAの毒性を問題視する報告も少なくありません・・・・・

 Wesselらによると、糖尿病モデルマウスを用いた実験でRALA投与による死亡率低減とSALA投与による死亡率上昇が確認され、糖尿病に対するRALAの治癒効果が示されるとともにSALAの危険性が明らかとされています。

●αリポ酸サプリメントに含有するS体の危険性が明らかに
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/32250715.html

 では、前述のSALAを含有するALAラセミ体は安全であるというCremerらの安全性評価とSALA摂取による死亡率上昇というSALAの毒性を示すWesselらによる危険性評価は、はたして、どちらが正しいのでしょうか?・・・・・・・・

 結論から言うと、実はどちらも正しい評価であると考えられます。ただ、その違いは健常な動物を使った実験なのか、糖尿病を誘発させた動物を使った実験なのか、ただそれだけでまったく反対の結果となったわけです。


 Wesselらの検討が、もしヒト試験であったとしたら(もちろん、ヒトの死亡率評価はできませんが)、そして、同じ結果となるとしたら、恐ろしいと思いませんか??

 つまり、ALAラセミ体サプリメントの摂取は健常人にとって健康増進効果はあるものの、糖尿病患者が摂取するとマウスと同様に死亡率が高まることにはならないか・・・・・と。

 そこで、私の研究グループは、ALAに関するこれまでの学術論文、総説などの膨大な報告を調査し、ある仮説をたてました・・・・・

 天然体のRALAと非天然体のSALAは光学異性体(鏡像異性体)の関係にあります。鏡像異性体に関しては下記の『まめ知識』をご参照ください。

● 鏡像異性体の悲劇とリポ酸(その1)
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/26587141.html


● 鏡像異性体の悲劇とリポ酸(その2)
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/26871220.html

 RLAと同様に生体内に存在している様々なタンパク質も天然のアミノ酸からなる光学異性体ですので、40億年前の生命誕生から今日までの生命体を形成していく過程で、生体に悪影響を及ぼす可能性のある、生体内でのRALAとタンパク質という天然物質同士による非選択的不可逆反応は排除されていったであろうと考えられます。(非選択的不可逆反応についてはコラム①をご参照ください。)しかし、人工的に作り出した非天然体のSALAと天然のタンパク質の非選択的不可逆反応による悪影響は排除されていないのです。


 ここでは、我々の研究から導き出した結論を先に述べ、次に、その根拠となる試験を説明していきます。


 繰り返しになりますが、Wesselらは糖尿病モデルマウスにSLAを投与すると死亡率が上昇するというSALAの危険性を明らかにしていますが、マウスではなくヒト(糖尿病患者)によるインビボ(生体内)試験はできません。そこで、我々は幾つかのインビトロ(試験管内)試験を行いました。そして、その結果、『糖尿病患者のみならず、血液の粘度が高くなっているメタボリック症候群の方々、脂質異常症や高血圧患者にとっても、LAラセミ体サプリメントを摂取すると、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などを招く危険性が高くなる』と結論付けしました。


 SALAによる糖尿病モデルマウスの死亡率上昇の機構を解明するため、以下の検討を行いました。(『まめ知識』ですので、なるべく簡潔に検討内容と結果を記述します。)

① RALAとSALAの胃液と腸液の溶解度評価
我々は東京理科大と摂南大学との共同研究からALAは胃と小腸の双方から生体吸収されるものと考えています。生体吸収性と溶解度には正の相関がありますので、人工胃液と人工腸液を用いてRALAとSALAの溶解度の差を検討しました。その結果、ここでは詳しいデータは示しませんが、溶解度に有意差はありませんでした。


② RALAとSALAのCaco2細胞による膜透過量と細胞取り込み量の評価(尚、ALAの腸内輸送経路については詳しく検討された論文があります。コラム②をご参照ください。)

 ここでは、詳しいデータは示しませんが、トランスポーター仲介経路をとっているRALAとSALAはどちらも時間依存的に細胞透過量が増加し、取り込み量もほぼ同じで、RALAとSALAに有意差はありませんでした。


 これらの結果から、RALAとSALAは腸管からの生体吸収性に違いはないと考えられました。その上で、ラットへの単回経口投与による血漿中ALAの濃度変化を検討しました。


③ ラットへの単回経口投与による血漿中ALAの濃度変化
図1と図2に示しますように、同じ量のRALAとSALAを経口投与したにもかかわらず、血漿中濃度はCmax、AUCともに明らかに違いのあることが確かめられました。この検討結果を指示するGroeglerらの論文があります。健常男性15名によるALAラセミ体の単回投与による検討で、ラセミ体(RALAとSALAがそれぞれ50%ずつ)を摂取したにもかかわらず、血漿中のRALAの濃度はSALAの濃度よりも遥かに高いことが示されています。

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 上述の①と②の検討結果に対して、③とGroeglerの検討結果は、一見、矛盾があるようにみえます。しかし、非天然物のSALAと生体内タンパク質の非選択的不可逆反応によるSALAの消失があるとすれば、いずれの検討結果も正しいと判断できます。

 つまり、SALAは腸管上皮細胞から吸収されてはいるものの、血液中に送り込まれると、血液中のタンパク質との非選択的で不可逆な反応によって消失するため、血漿中SALA濃度はRALA濃度に比べ、有意に低い結果となった・・・・と。

 血中タンパクであるアルブミンをご存知でしょうか?


 アルブミンは「血清」に含まれているタンパクの主成分の一つで、血液の浸透圧の保持やビリルビンや遊離脂肪酸などの物質の保持や運搬の役割を持っています。アルブミンは血液中のタンパク質の約7割を占めています。そして、生体内のアルブミンの70%はチオール基をもつ還元型で存在しています。そして、チオール基はALAのジチアン環との共有結合性を有しています。(ここの部分、難しいと思われた方は、単に、ALAとアルブミンは反応しやすい!とだけ、理解してください。)


 RALAとSALAが生体内に吸収され、血液中に進入すると、アルブミンと出会うことになります。もともと天然体のRALAは血液中に存在するアルブミンと出会っても、生体機能の維持に不利な反応は排除されているはずですが、非天然体のSALAがアルブミンと出会うと、非選択的不可逆反応を起こし、生体機能維持に悪影響を与えないだろうか?・・・・


 この疑問に答えるため、卵由来のアルブミンとヒト由来のアルブミンを用いて、ALAの相互作用(RALAとSALAの濃度変化と不溶性物質生成量の違い)を検討しました・・・・


 透明なアルブミン水溶液にRALAとSALAを添加したところ、RALAは完全に溶解しましたが、SALAの場合は大きな不溶物を形成することが判明しました。
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そして、その不溶物を分析したところSALAはほとんど検出できませんでした。そして、RALAとSALAは同じ量を添加したにもかかわらず、SALA濃度はRALA濃度よりも有意に低いことが明らかとなりました。この結果は、SALAとアルブミンが非選択的不可逆反応を起こし、不溶性の重合物が生成することを意味しています。


 このような反応が血液中で起これば、血液の粘度は高められ、特に動脈硬化の危険性のある患者に悪影響を与えると考えられるのです。また、これまでの学術的な報告の中には、この結果を支持する報告があります。ALAラセミ体をマウスに混餌摂取させた試験の血液性化学検査値において、尿酸やカリウムが有意に上昇したという報告ですが、その考察として“何らかの要因で腎臓に不溶物質が沈着・蓄積し、糸球体の濾過機能に異常がみられる”といったALAラセミ体の腎機能障害の可能性が指摘されています。そういった背景で、我々は今後、腎機能低下モデルマウスを用いてALAラセミ体の危険性についても、さらに追求する予定にしています。


 カルニチンはALAと同じように医薬品から区分変更され食品に利用できるようになった機能性素材ですが、鏡像異性体であるD-カルニチンは、非天然物質としての副作用が指摘され、いまでは、ラセミ体のDL-カルニチンではなく、天然体の“L-カルニチン”が一般的に使用されています。同様にALAの場合にもRS-αリポ酸ではなく、天然体の“R-αリポ酸”を一般的に使用すべきだと思います。


 以上、この『まめ知識』では詳しい実験データを省き、なるべく簡潔にまとめるようにしました。現在、これらの内容は、詳しいデータとともに学術論文としてまとめています。

 私は・・・・・ヒトの健康を守るためにも営利目的の集団と戦っていきます!

 尚、天然体のRALAには、これまでにすばらしいさまざまな健康増進効果が確認されておりますので、効果効能に関しましては下記のURLをご参照ください。

●ひえ性や低体温症に効く!R-αリポ酸のAMPK活性化
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/22780796.html


● 経口摂取で内側から美白肌を手に入れる!(その2. グルタチオン& R-αリポ酸編)
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/29027719.html


● 肥満症と糖尿病患者の救世主!R-αリポ酸γCD包接体の力(その1. アディポネクチン編)
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/33548224.html


● 肥満症と糖尿病患者の救世主!R-αリポ酸γCD包接体の力(その2. 血中ヘモグロビンA1cの低減作用)
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/33851945.html


● 肥満症と糖尿病患者の救世主!R-αリポ酸γCD包接体の力(その3. ミトコンドリア脱共役タンパク質UCPの活性化)
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/34004536.html


●肥満症と糖尿病患者の救世主!R-αリポ酸によるGLUT4の膜移行促進作用
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/34175864.html


● R-αリポ酸γCD包接体による非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の予防・改善効果
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/34373316.html


● 肥満症と糖尿病患者の救世主!R-αリポ酸γCD包接体の力(その4. 核内受容体PPARγ編)
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/34596778.html


● 脳機能改善のための栄養素について(その6. R-αリポ酸)
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/36645604.html


● 精力維持と増強のための機能性素材(その1. R-αリポ酸)
~『血管の病』による認知症に有効なR-αリポ酸はEDにも効力あり!~
http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/37143127.html




コラム①(非選択的不可逆反応):非選択的反応とは、反応部位を多く含む場合にランダムに進行する反応であり、不可逆反応とは化学反応のうち、正反応のみが起こり、逆反応が起こらないため、一方向にのみ進行する反応です。たとえば、血糖値の高い糖尿病患者にみられるブドウ糖や糖変性物であるメチルグリオキサールなどによる生体内タンパク質の変質は非選択的不可逆反応である糖化反応によるものです。





コラム②(ALAの腸内輸送経路):ALAのような低分子量化合物の腸内輸送に関しては二つの経路がありうる。その一つはトランスポーターが仲介した細胞内の輸送経路であり、もう一つは細胞間結合部の細胞間隙経路である。前者はエネルギー依存活性輸送が関与し、後者は受動拡散である。グルコース、アミノ酸、ジペプチド、水溶性ビタミンなどのような栄養素の腸管吸収はトランスポーター仲介経路により、カルシウムなどのミネラルは細胞間隙経路をとることが知られている。高石らは、腸管上皮のヒト腸管Caco2単層を用いてALAの腸管吸収のメカニズムを調べ、ALAの場合は、トランスポーター仲介経路をとっていることを確かめた。





体力に劣る日本人アスリートが知るべきスポーツ栄養学(その3. グリコーゲンローディングとγ-シクロデキストリン)

 いよいよ、今回が、トップアスリートのための“スポーツ栄養学”の最終章で、グリコーゲンローディングを取り上げます。(最終章といっても私の持っている知識の範囲内での話ですので、新しい知見が出てくればまた戻ってくる可能性はありますが・・・・)本気でスポーツで勝負する/しているトップアスリートは、前回の『まめ知識』にリストアップしたURLも必ず再確認してください。そして、本気ですので楽しい読み物になっていませんがご了承ください。

 トップアスリートは持っている筋肉の種類で二つのグループに分けられます。強い瞬発力が必要なスポーツをやっているアスリートは、速筋(白筋/ファーストユニット)持っており、長い時間、力を持続しないといけない(持久力勝負)のスポーツをやっているアスリートは遅筋(赤筋/スローユニット)を持っています。そして、無酸素運動では筋線維の太い速筋が鍛えられ、ムキムキの筋肉質体型になり、有酸素運動では筋線維の細い遅筋が鍛えられ、一見、筋肉質とは思えないスレンダーな体型になるわけです。言い換えれば、どの筋肉を鍛えるかでムキムキにもスレンダーにもなるのです。

 ここで取り上げるグリコーゲンローディングは、アスリートといっても、特に、スレンダーな長距離ランナーやサッカー選手など、有酸素運動が主体のアスリートには必読の内容です。マラソン選手は勝負のポイントが35km過ぎといわれていますが、実際には、その時の筋肉内に蓄えられているグリコーゲン量で決まるのです。よって、アスリートには42.195kmを走り抜けるだけのグリコーゲンローディングが必要となってきます。


 そもそも、グリコーゲンとは?

 
 ご存知のように最も簡単に使えるエネルギー源は糖質の原形であるブドウ糖(グルコース)です。そのブドウ糖が連なったものがグリコーゲンです。エネルギーが必要になった時に、グリコーゲンから必要なだけのブドウ糖が切り離されて、体はこのブドウ糖をエネルギー源として使っているわけです。


 では、アスリートが筋肉内に十分なグリコーゲンを蓄えておくための効果的なグリコーゲンローディングのタイミングとは?


 Levenhagen DKらの2001年の報告があります。
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彼らは運動直後と運動終了3時間後にタンパク質と糖分を健常人に摂取させ、脚筋肉のグルコース取り込み量(グリコーゲンローディング)を比較しています。その結果、これまでの筋肉増強に関する報告と同様に、直後の摂取が好ましいことが明らかとなっています。

 では、試合に向けての1週間グリコーゲンローディング法とは?


 筋肉のグリコーゲンが枯渇するとスタミナ切れで、たとえば、マラソン選手の場合、リタイアとなります。夕方の激しいトレーニングで消耗したグリコーゲンは時間をおいて夕食を摂ると十分に回復しないのですが、トレーニング直後に食事をとると効率よくグリコーゲン貯蔵が回復することが知られています。高血糖・インスリン反応性の高い炭水化物(ブドウ糖がベスト、消化性デキストリン)を摂ることでグリコーゲン回復は高まり、そういった高炭水化物食にクエン酸を組み合わせるとグリコーゲン回復(グリコーゲンローディング)は一層高まるのです。


 グリコーゲンローディングとともにブドウ糖(グルコース)の徐放が可能な糖質がありますので、この糖質を組み合わせれば、さらなる持久力の向上が可能となります。


 では、その糖質とは・・・・


 幾つかのグルコースが環状に繋がった物質を環状オリゴ糖、シクロデキストリン(CD)といいますが、その中で、αCD、βCD、γCD(それぞれ6、7、8個)は工業的に生産され、広く食品に使用されています。αCD、βCDが人の消化酵素によって分解されにくい難消化性であるのに対してγCDは消化性を示すのです。その一方で、同じグルコース量相当のショ糖を摂取した場合に比べて、そのグルコースへの変換速度は遅くグルコース徐放特性のあることが知られているのです。
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この特徴を活かすと、持久力を向上することができます。マウス限界遊泳時間測定によるγCDの持久力向上作用について検討した結果があるのでご参照ください。

http://www.cyclochem.com/cyclochembio/research/030.html


 これらの図1と図2の結果を組み合わせるのです。つまり、図1のタンパク質とショ糖の代わりに、タンパク質とγCDをトレーニング中、あるいは、直後に摂取することを提案します。しかしながら、このタイミングで焼肉(タンパク質摂取のため)を食べることには無理がありますね。そこで、焼肉のかわりに、筋肉タンパク質の重要原料であるBCAA(前回のまめ知識をご参照ください。)とγCDを組み合わせた飲料をこのタイミングに摂取すればいいことになります。

 以上、トップアスリートのためのスポーツ栄養学について紹介しました。

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