2021年02月

高吸収クルクミン製剤の新型コロナ感染患者への効果

クルクミンはウコンに含まれるポリフェノールの一種であり、古代インド医学(アユールヴェーダ)で使用されたアジアの国々の伝統的な治療薬としても知られています。その効能効果は飲酒前に悪酔いや二日酔いを防止する目的で飲む肝機能向上作用のみならず、美肌効果やスポーツパフォーマンス向上作用など多くの効能を有することから、これまでにこの『健康まめ知識』でも何度となく取り上げてきました。


2021022501

 




















 今回は高吸収クルクミン製剤(シナクルクミン)を摂取すると新型コロナ感染の重症患者の臨床試験を行い、死亡率が大きく低下するという結果が得られたという
驚くべき“イランで行われた検討結果を紹介します。この驚くべき”というのは、死亡率が低下した結果もそうですが、クルクミンを摂取した重症患者群とプラセボ群に分けて、その死亡率を比較する試験そのものに対する“驚くべき”ことでもあります。

 

この研究報告ではシナクルクミンという高吸収クルクミン製剤が用いられたのですが、クルクミンは本来、脂溶性物質であることから体内吸収率が低いことが問題の成分でもあります。そこで、クルクミンの生体利用率を高めるために、様々な高吸収クルクミン製剤が開発されています。そこで、まず、世界的にも良く知られている5つの製剤の吸収性について学術論文3報から比較しておきます。なぜ、この比較ができたかというと、幸いにも、いずれの学術論文にも高吸収クルクミン製剤であるメリーバが比較対象に用いられているからです。

 

それぞれ5つの高吸収性クルクミン製剤の特徴を示しておきます。まず、メリーバはクルクミンと大豆レシチンを12の重量比に調整し、流動性向上のためにMCCを添加したものです。製剤のクルクミン含量は20%です。次に、BCM-95はクルクミノイド類とターメリックから抽出した揮発性精油を一定の割合で配合したもので、精油成分にはar-tumeroneα-tumeroneβ-tumeroneといったものが含まれています。メリーバBCM-95も一般の製剤と吸収性をAUCで比較すると、約10倍高いことが分かっています。尚、AUCとはArea Under the Curveの略で、今回のAUCはクルクミンを摂取した後の血漿中クルクミンレベルをグラフ化し、グラフの曲線より下の部分の面積のことをいいます。


2021022502

 




















 残りの3つの高吸収クルクミン製剤であるセラクルミンシナクルクミンカバクルミンはそれぞれ学術論文があり、メリーバを比較対象としていますので、同じ条件で比較したものではないので正確性には少し欠けますが、3つの製剤の比較が可能となっています。

 

セラクルミンは、クルクミンにデキストリン55%、マルトース30%、ガティガム3.2%、クエン酸0.3%を加え製剤化したものです。クルクミンの含有量は13%です。通常のクルクミンに比べ、水分散性が高く、耐光性、耐熱性に優れているのが特徴です。尚、ガティガムは粘度の高い多糖で乳化剤として利用されているものです。

 

シナクルクミンは平均粒子径10nmのナノミセル化されたクルクミンのソフトゲルです。胃の酸性条件下では完全に溶解し、ナノミセルが放出され、この条件下では6時間までは安定であり、ナノミセルは腸に運ばれ、腸内で胆汁酸により吸収されるのが特徴です。

 

カバクルミンはγオリゴ糖包接体であり、これまでに何度となく紹介しておりますので、その詳細は省きます。

 

3つの学術論文は何れもメリーバと比較していますので、AUCからこれら3種の製剤を摂取した後の血漿中クルクミンレベルについてそのイメージを作成しました。


2021022503

 




















 さらに、分かりやすくするために棒グラフで示しました。

2021022504

 



















 このように三つのクルクミンの吸収性に関する学術論文からγオリゴ糖包接体のカバクルミンが最も高い吸収性を有する製剤であることが分かりました。

 

では、今回の論文の紹介です。2020年にJ. Cell. Physiol.2020p1-14に報告された論文です。

 

2021022508







 ヘルパーT細胞の Th17細胞は、炎症性サイトカインの分泌を介して炎症性疾患や自己免疫疾患の発症に関与する重要な免疫細胞と考えられています。軽度と重度の新型コロナウイルス感染者が高吸収クルクミン製剤であるシナクルクミンを摂取した際のこのTh17細胞に対する効果、さらには死亡率の低下について検討し、シナクルクミンの有効性を確認しています。尚、この結果より、シナクルクミンよりも吸収性の高いセラクルミンカバクルミンにも同様な効果は期待できると考えられます。

 

まず、なぜクルクミンが新型コロナウイルス(COVID-19)感染対策に有効であるか、の仮説があります。クルクミンはコロナウイルスがヒトの細胞に侵入することを防御するだけではなく、侵入した際の増殖を抑制する作用もあることが示唆されているようです。


2021022505

 




















 では、試験デザインです。被験者は感染症病棟に入院した軽度のCOVID-19患者が40名と、人工呼吸器を必要とせずに集中治療室(ICU)に入院した重度のCOVID-19患者が40名でした。それぞれ40名を、シナクルミン20名とプラセボ群20名に分け、シナクルクミン投与群は80 mg カプセルを、12回(12時間ごと)、3週間服用しました。一方、プラセボ群はプラセボカプセルを、12回(12時間ごと)、3週間投与しました。そして、各カプセルの投与前後で採血し、PCR, ELISA, ヘルパーT細胞17Th17)およびその関連因子の測定を行っています。

 

ここでは、論文に示されている結果の中でも最も注目したいTh17細胞の変化と死亡率と退院率に関して紹介します。

 

炎症性疾患や自己免疫疾患の発症に関与するTh17細胞は、シナクルクミン投与群で、軽度、重度共に服用後に顕著に低下することが明かとなりました。また、シナクルクミン投与群とプラセボ投与群を比較しても、軽度、重度共に、 シナクルクミン投与群の方が顕著に低下することが分かりました。その一方で、プラセボ投与群では、服用前後で有意差はありませんでした。


2021022506

 




















 また、死亡率において、プラセボ投与群は、 シナクルクミン投与群と比較して軽症、重症患者ともに、死亡率が顕著に高いことが示されました(p0.0001)。さらに、退院率においてもシナクルクミン投与群は、プラセボ投与群と比較して軽症、重症患者ともに、退院率が顕著に高いことが示されています(p0.0001)。


2021022507

 




















 このように高吸収クルクミン製剤であるナクルクミンを用いて、クルクミンは、Th17細胞応答をダウンレギュレートして、炎症を改善、COVID-19患者の治療を促すのに有用な免疫調節剤であることが示唆されました。また、日本ではなくイランだからできたのか、ヒト臨床試験において、コロナ感染患者の死亡率と退院率はクルクミンを摂取することによって低下させることが出来るという驚くべき結果も得られています。

 

高吸収クルクミン製剤は、患者の治療に効果的に貢献し、世界的なウイルスパンデミックをコントロールできる可能性があります。

 

この内容はシクロケムバイオの雑誌会でMKさんがまとめてくれたものです。MKさん、ご苦労様でした。

 

腸内腐敗産物増加による運動能力・自己免疫力低下とαオリゴ糖およびポリフェノール類によるそれらの予防効果について

近年、スポーツパフォーマンス向上のため、健康維持のためと、筋肉の増強や維持を目的としてプロテインを摂取する人や美容のためにコラーゲンを摂取する人が増えています。確かに、タンパク質であるプロテインやコラーゲンを積極的に摂取することは正しいのですが、気を付けてほしいのが、炭水化物など他の栄養素を摂らずにこれらのタンパク質のみを過剰に摂ることです。なぜなら、タンパク分解酵素が足りずに、プロテインやコラーゲンが小腸で体内に吸収できる形のアミノ酸やペプチドに分解されず、大腸に入ってしまうと腸内の悪玉菌の餌になり、アンモニアやフェノール類などの腐敗産物を作ってしまいます。炭水化物を一緒に摂っていれば善玉菌の餌になって短鎖脂肪酸などの発酵産物を作り、アンモニアなどの腐敗産物と相殺されるのですが、プロテインのみを過剰に摂取すると腸内には腐敗産物が多くなります。

 

p-クレゾールやフェノールなどの腐敗産物は腸管バリア機能を破壊し、やがて腸管はリーキーガットとなります。リーキーガットになると、有害物質である病原細菌、ウイルス、アレルゲンなどの侵入が促され、それらの侵入によって、マクロファージ等の自然免疫細胞が応答して炎症性サイトカインを分泌し、体中で炎症反応が進むことになります。また、腐敗産物は腎障害にも関与しており、激しいスポーツをするアスリートのスポーツパフォーマンスを低下させてしまうのです。健康維持やスポーツパフォーマンス向上を目的として筋肉増強・維持のために摂取しているプロテインによってこのような逆の効果が現れるのです。


2021022201

 




















 なので、プロテイン摂取の際には腸内における腐敗産物の発生量を低下させる難消化性αオリゴ糖を同時に摂取することをお勧めいたします。その効果については下記のURLをご確認ください。

 

http://www.cyclochem.com/cyclochembio/research/095.html

 

無繊維食を摂った際にお腹に良いオリゴ糖“で有名な乳果オリゴ糖を同時に摂取した場合に比べてαオリゴ糖(α-CD)の方が圧倒的に腐敗産物の生産量を抑えていることが分かります。


2021022202

 




















 ここでは、腐敗産物の一つであるp-クレゾールの腸管細胞への影響を調べた研究報告を紹介しておきます。その文献のタイトルは『p-クレゾールのヒト大腸上皮細胞障害性と、果実由来プロアントシアニジン含有ポリフェノール抽出物およびプロアントシアニジン菌体代謝物の阻害効果について』です。

2021022205
 

 












 プロテインやコラーゲンなどのタンパク質を摂取するとタンパク質の構成するアミノ酸であるフェニルアラニン、チロシン、および、トリプトファンは腸内細菌の餌となり、フェノール代謝物を形成します。チロシンからの代謝産物であるp-クレゾールは通常は上皮結腸細胞によって吸収され、血流に移され、肝臓で代謝され、尿中に排泄されます。しかし、腐敗産物は腎障害に関係しているだけでなく、最近では、p-クレゾールがヒト結腸上皮細胞に悪影響を与えることを報告されているのです。そこで、この論文では、リンゴ、クランベリー、ブドウ、アボカドなどに含まれるポリフェノールが、ヒト結腸細胞株におけるp-クレゾールの有害な影響から結腸上皮細胞を保護できるかどうかを評価しています。

 

まず、腸管上皮細胞の膜抵抗性と透過性に対するp-クレゾールの影響ですが、ヒト結腸癌由来細胞であるCaco-2細胞膜を用いて蛍光色素フルオレセインイソシアネートデキストリンで評価しています。その結果、p-クレゾールを3.2mM以上添加すると、膜の抵抗値を下げて、透過性が高まることを確認しています。


2021022203

 




















 次に、p-クレゾールを膜透過性、つまり、腸管膜毒性が示された3.2mMを添加した条件下で各種プロアントシアニジン抽出物の膜毒性に対する改善効果を調べています。その結果、膜抵抗性と膜透過性に対して、ポリフェノール類であるクランベリーのプロアントシアニジン抽出物、アボカドのプロアントシアニジン抽出物、ブドウのプロアントシアニジン抽出物、リンゴのプロアントシアニジン抽出物の何れも、p-クレゾールの膜毒性に対しての抑制作用が確認されています。ここでは、クランベリーのプロアントシアニジン抽出物の効果のみを示しておきます。


2021022204

 




















 このように、悪玉菌によってタンパク質から生成した腐敗産物であるp-クレゾールは腸管バリア機能を低下させるのですが、ポリフェノール類はその機能低下を抑制できることが明かとなっています。

『コロナに殺されないたった一つの方法』という本の紹介

前回の『健康まめ知識』は『キウイを食べると腸が健康になる』(現代書林)という松尾医師の本を紹介しました。この本は水溶性食物繊維を多く含むキウイを食べると腸内で酪酸が増え、潰瘍性大腸炎が改善し、Tレグ細胞増殖によってアレルギー疾患や自己免疫疾患を抑制し、肥満細胞の増加を抑制して肥満を防ぎ、さらには、インクレチンに作用して血糖値をコントロールして糖尿病を予防するといった効果がある、といった内容でした。

 

つまり、腸内の酪酸が増えると健康になるとのことでしたが、この本は新型コロナ感染で騒がれる前の20196月に発売されていますのでコロナ感染対策の内容には含まれていませんでした。一方、腸内の酪酸に同様に注目している202011月に発売された『コロナに殺されないたった一つの方法』(自由国民社)という東京大学名誉教授の小柳津氏が書かれた本があります。そこで、前回と同じように、私の独断と偏見でキーポイントを勝手に選び、箇条書きにして、私の見解(赤い太字)を交えて、紹介させていただきます。

 

l  小柳津氏はゴボウやキクイモに含まれるフラクトオリゴ糖(FOS)がアレルギー治療に効果的であることを発見している。そして、今回紹介する本を出版する前に『花粉症は1日で治る!』(自由国民社)を出版している。その内容は「花粉症は炎症なので、炎症を抑えれば花粉症は治る。FOSが大腸で酪酸菌を増やすから」というものであった。腸内の酪酸菌が増えれば、コロナウイルスの重症化も肺の炎症なのでコロナ感染症は軽症化できるのでそのことを多くの人に早く知ってもらいたい、そして、このコロナ禍で多くの人を助けて社会貢献したいとの思いで、今回の本の緊急出版に踏み切ったとのこと。

 

⇒ 私もしっかりとした知見があればこの思いに同感です。

 

l  『はじめに』でワクチンについて「人類は医学の力でワクチンを開発するから心配はいらない」との意見に対して「ウイルスが原因の死者数が多かった感染症で根絶できたのは天然痘だけで、インフルエンザウイルスは毎日変化しているので有効なワクチンはできていない。コロナウイルスも毎日変化するウイルス」と反論している。

 

⇒ 私も多くの方々がワクチンに期待する気持ちは判りますが、根絶できたのは天然痘だけで第一次世界大戦の頃のスペイン風邪(インフルエンザ)を未だにワクチンで根絶出来ていないことは事実なので、新型コロナウイルスが今後どのように変異するものかが分からない以上、「ワクチンがあるから心配いらない」とは言えないと思います。

 

l  ノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥先生は欧米人に比べて日本人の新型コロナ感染症死亡率の低い原因がはっきりとしていないとしてこの原因を『ファクターXと呼んでいる。この本では肥満率がファクターXの一部だと提唱している。肥満になると脂肪をたくさん含む脂肪細胞は炎症性サイトカインを放出する。炎症が起こると癌細胞、ウイルス感染細胞を殺すNK細胞の活性が低くなり、新型コロナウイルスは増殖する。しかし、日本人は肥満者が少ないから、感染しにくい。

 

⇒ 肥満患者は太った脂肪細胞から炎症性サイトカインを出しやすく、サイトカインストームの一つの原因であることは確かで、この点、私も同意見です。

 

l  炎症、疾患が起こる原因に抗生物質による腸内環境の悪化を挙げている。抗生物質は細菌感染症の特効薬ですが、抗生物質の使用が、腸内環境に影響を与え、うつ病、発達障害など精神の病気、花粉症、喘息などのアレルギー疾患、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎など自己免疫疾患を増加させた。しかし、食物繊維を摂取して大腸内に酪酸菌を増やし、酪酸など短鎖脂肪酸が増えると炎症は抑えられ、これらの疾患は改善する。

 

⇒ この点についても、私は同意見です。

 

l  コロナで亡くなる本当の理由は多量の炎症性サイトカインが放出されて炎症を起こす免役の暴走(サイトカインストーム)。新型コロナウイルスは口、鼻、咽喉、腸などの臓器に感染しますが、感染を重傷化するのは肺への感染です。肺に入ったコロナウイルスは増殖してサイトカインストームを誘発する。肺胞を壊して酸素を取り込めない間質性肺炎を引き起こし、死に至るというもので、これが新型コロナ感染症の死亡プロセスである。

 

l  大腸で増えた酪酸はNK細胞など自然免疫の活性を上げる。活性が高ければ、上気道に感染しても感染細胞を攻撃し、感染初期にウイルスを除去できる。酪酸で増えたTレグ細胞は感染を受けた組織を修復する。つまりは、大腸の酪酸が多い人ほど感染を防ぐことが出来る能力は高い。

 

⇒ この点についても、私も同意見です。

 

l  NK活性は腸内フローラの影響を受けて変化する。腸内に酪酸菌が増えるとNK活性は上昇するが、ビフィズス菌ではNK活性は上がらない。

 

l  アナフィラキシーは自分の命を奪う免疫の暴走そのもの。ヒトは普段食べているものにはアレルギーを起こさない『免疫寛容』の仕組みがあり、この『免疫寛容』が作動しない食物アレルギーの方の大腸は酪酸菌が少ない。

 

⇒ この点は、食物アレルギーの方々の治療方法を考える点で大変重要だと考えます。

 

l  赤ちゃんが母乳を飲み始めるとミルクオリゴ糖でビフィズス菌が増え、飲み始めて数日で腸内の細菌はビフィズス菌が90%を占める。ビフィズス菌は乳酸と酢酸を作り、腸を酸性に保ち病原菌の侵入を防いでいる。しかし、離乳するとビフィズス菌はしだいに減り、一方で、酪酸菌が増える。酪酸菌の作る酪酸は赤ちゃんの免疫を発達させ、全身に炎症が起こらないようにコントロールしている。なので、本当はビフィズス菌より酪酸菌の方が私たちの体には大事。

 

l  抗生物質が大腸内に入ると酪酸菌もビフィズス菌も死滅する。抗生物質の処方で大腸の酪酸菌が減少すると、花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、便秘と下痢、痔、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、膠原病、パーキンソン病、うつ病、パニック障害、自律神経失調症、睡眠障害、発達障害が起こる。

 

l  免疫学が専門の奥村博博士の『大丈夫!何とかなります 免疫力は上げられる』(主婦の友社)では生活習慣で免疫力は上げられるとしている。矢崎雄一郎医師の『免疫力をあなどるな!』(サンマーク出版)では食で免疫力は上げられるとし、藤田紘一郎博士は免疫力のあげ方を腸内細菌から説明している。宮坂昌之博士は『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ』(講談社)で免疫力の上げ方を説明している。しかしながら、これらの先生が説く『腸内フローラの免疫力』を上げる方法は何が良いのかさっぱり分からないと、この本では一刀両断に切り捨てている。『納豆が良くて、ヨーグルトが良くて、キノコが良くて、玄米が良くて、ブロッコリーが良くて、砂糖はダメ、白米はダメ?』これらには科学的理由がない。そして、腸内フローラを良くするには酪酸を増やす食物繊維(フラクトオリゴ糖)を食べることであり、そうすれば免疫力が上がるとし、軽い運動も、温めのお風呂も必要ない。

 

⇒ この点、私は意見が少々異なります。これらの先生の本も確認していますが、これらの先生方の免疫力向上方法にはそれぞれ効果があり、科学的根拠もあります。ただ、腸内酪酸による免疫力の向上が最も説得力もあるし、最も効果的であると考えます。

 

l  リンゴペクチンは酪酸菌を増やさない、ミルクオリゴ糖も酪酸菌を増やさない、小麦ふすまや米ぬかに含まれるアラビノキシランは酪酸菌を増やさない、キノコのβグルカンも酪酸菌を増やさない、コンニャクのグルコマンナンも酪酸菌は増やさない。ゴボウ、キクイモ、ヤーコン、ねぎ、玉ねぎ、にんにくには酪酸菌を増やすフラクトオリゴ糖が含まれていて、これらの野菜を食べれば大腸で酪酸菌が増え、コロナ感染しない体質となる。現在、フラクトオリゴ糖を摂って酪酸菌を増やしている人は数万人いて、これらの人の中には一人もコロナ感染者はいない、なぜなら、大腸の酪酸菌が増えれば自然免疫が上がり、新型コロナには感染しないから。

 

⇒ この点は、私は意見が大きく異なります。ゴボウやキクイモに含まれるフラクトオリゴ糖だけでなく、ペクチンや難消化性αオリゴ糖など多くの水溶性食物繊維も腸内の酪酸菌を増やし、酪酸を増やすことが知られています。

 

では、最後に、私の提案です。腸内の酪酸を増やすにはフラクトオリゴ糖のような水溶性食物繊維を摂る方法もありますが、ベストの方法はプロバイオティクスである酪酸菌とプロバイオティクスのエサとなるプレバイオティクスとして酪酸産生に有効なスーパー難消化性デキストリンとして知られている難消化性αオリゴ糖を組み合わせたシンバイオティクスを摂取することです。コロナに殺されないためにもこのシンバイオティクスの存在を知っていただきたいと思います。


2021021501

 

『キウイを食べると腸が健康になる』という本の紹介

これまでにこの『健康まめ知識』ではフルーツの王様と呼ばれているキウイフルーツの健康増進効果について数度にわたって紹介してきました。まず、そのタイトルとURLを下記に紹介しておきます。

 

「フルーツの王様と呼ばれるキウイフルーツとは」2013926

http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/32495494.html

 

「難消化性α-オリゴ糖を用いるフレッシュパウダーの候補(その2.キウイフルーツ)」201989

http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/53686819.html

 

「キウイフルーツプロティアーゼによる口腔ケア・口臭予防」2020421

http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/54542966.html

 

「キウイフルーツで睡眠障害を改善し便秘(過敏性腸症候群)を治す」2020722

http://blog.livedoor.jp/cyclochem02/archives/54851808.html

 

その中で201989日の『健康まめ知識』で紹介しました難消化性αオリゴ糖を用いたキウイフルーツのパウダー(KAP)は酪酸産生による腸内環境改善に関するものでした。

 

前々回の『健康まめ知識』ではコロナ感染対策に難消化性オリゴ糖が有効であることを説明しています。その理由は難消化性オリゴ糖を摂取すると腸内で短鎖脂肪酸、特に、酪酸が増加し、その酪酸によって自律神経が刺激され、唾液中の免疫物質であるIgAが増えるという神奈川歯科大学のグループの研究報告を紹介しました。唾液IgAが増えれば、新型コロナウイルスの上気道感染の対策にもなるというものです。

 

この研究報告で使用された難消化性オリゴ糖はフラクトオリゴ糖で菊芋やゴボウに含まれる食物繊維のイヌリンの主要成分なのですが、酪酸産生には菊芋やゴボウを上回る理想の食物繊維を含有する植物がフルーツの王様、キウイフルーツなのです。

 

そういった理由から、今回は『キウイを食べると腸が健康になる!』(現代書林)というタイトルの松生氏の本の内容について、私がキーポイントを勝手に選んで紹介させていただきます。

 

1.     様々な食物繊維を含む植物の中でもキウイフルーツは食物繊維を最も豊富に含んでいます。

 
2021020501


















 

2.     食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けることができます。通常の食物繊維を含む食材は不溶性と水溶性の割合が4対1ですが、キウイフルーツの場合、21で水溶性食物繊維が非常に多いのです。

 

17種類の栄養素の栄養素充足率スコアでキウイフルーツはトップクラスであり、カリウムやアクチニジンを含んでいます。特に、グリーンキウイにはアクチニジン、ゴールドキウイにはビタミンCが豊富に含まれています。ビタミンCといえば、レモンを思い浮かべる人が多いと思いますが、キウイフルーツの方がレモンの2倍のビタミンCが含まれているのです。

2021020502

















 

3.     キウイフルーツに含まれている水溶性食物繊維のペクチンは酪酸を増やすことが知られています。(この本の著者の松生氏は難消化性糖質であるポリデキストロースを用いて酪酸産生による腸内環境改善の研究を紹介しています)

 

4.    キウイフルーツには、酪酸産生による潰瘍性大腸炎の改善、Tレグ細胞増殖によるアレルギー疾患や自己免疫疾患の抑制作用、肥満細胞の増加抑制で肥満を防ぐ、インクレチンに作用して血糖値をコントロールする作用(短鎖脂肪酸として)があります。

 

5.     短鎖脂肪酸は腸内の酸性度を高め悪玉菌が棲みにくくなり、乳酸菌やビフィズス菌など善玉菌を増加させます。

 

6.     短鎖脂肪酸の中でも酪酸が最も多く大腸上皮細胞のエネルギー源となります。

 

7.     潰瘍性大腸炎の人の腸には酪酸が足りていません。大腸炎の治療にはミヤBM(酪酸菌製剤)が処方されていまして、炎症を起こし傷ついている大腸粘膜の修復を目的としています。

 

8.    2018114日のNHKスペシャル『シリーズ人体 神秘の巨大ネットワーク第4集 万病撃退!腸が免疫の鍵だった!』の放送で、Tレグ細胞がトピックスとなりました。阪大の特任教授 坂口志文氏の発見した細胞です。過剰な免疫反応にブレーキをかける働きがあります。クロストリジウム菌の仲間の働きでTレグ細胞は作られています。つまり、酪酸はアレルギー性疾患や自己免疫疾患を抑制し、コントロールするキーポイントになりうるのです。

 

9.     脂肪細胞の肥大化を抑制しているのが短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸は身体に脂肪がたまるのを防いでいます。肥満の人は短鎖脂肪酸を作る能力が低下しているのです。

 

10. ルイジアナ州立大学のグリーンウェイ教授はイヌリン(ゴボウに含まれる)を配合した糖尿病薬(GIMM)を作っています。原理は、食物繊維から短鎖脂肪酸が作られ、その短鎖脂肪酸によってインクレチンが腸の細胞から分泌されます。その結果、インスリンが分泌して糖尿病が改善というものです。

 

11.  キウイフルーツにはカリウムが豊富に含まれています。高血圧対策に有用です。可食部100g当たりゴールドキウイ300㎎、グリーンキウイ290㎎、ミカン150㎎、リンゴ100㎎、ブドウ130㎎と、キウイフルーツは食物繊維、タンパク分解酵素、ビタミンCのみならず、ミネラルのカリウムにおいてもフルーツの王様なのです。

 
2021020503


















 

『キウイを食べると腸が健康になる!』(現代書林)の紹介と言っておきながら、私の本である『一生モノの美肌になる!最高の食べ方図鑑』(宝島社)の紹介にもなってしまいました。申し訳ありません。

 



月別アーカイブ
プロフィール

cyclochem02

カテゴリ別アーカイブ
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ