先日の『まめ知識』では「ハチミツを食べると体内のコレステロールが増えるか?減るか?」というタイトルで、マヌカハニーのコレステロールへの影響について、これまでの科学的根拠となる論文を調査し、「ハチミツの中でもマヌカハニーの摂取は、過剰な量でなければという条件付きで、高脂血症やその予備軍の方にはオススメです。マヌカハニーは特別なハチミツと言えます。」と結論付けました。

 


この結論付けを示しておかなければならないと考えたのは、ごく一部のお医者さんですが、マヌカハニーについて誤解されている方がおられるようですので、その誤解を解くのが目的です。この誤解が生じたのは、あるお医者さんの勉強会でした。その勉強会でハチミツに含まれる果糖が血液の中性脂肪やコレステロール値を高くした、というマウス実験の論文が紹介されました。しかし、この実験では体重と同じ量の果糖を毎日与えていました。現実的にはあり得ない食餌量です。その勉強会に参加したお医者さんのグループによって、このような条件下の実験であることも知らずに、果糖が脂肪値を上げるという情報だけが一人歩きしていきました。前回の『まめ知識』でその誤解は解けたものと信じています。

 


今回のテーマ『マヌカハニーで糖尿病リスクは高まるか、それとも予防になるのか』でも同様のことがいえます。科学的根拠となる論文をもとに2回にわたり、私の見解を述べます。

 


マヌカハニーの主成分は、糖質のブドウ糖と果糖で80%を占めることは既に述べました。よって、主食のごとく過剰摂取すると明らかに糖尿病リスクは高まるでしょう。しかし、結論から言って、ヨーグルトにスプーン一杯を混ぜるとか、食パンに塗って食べる程度であれば、マヌカハニー摂取による糖尿病リスクはないと考えます。

 


この私の考えを説明する為には、先ず、『インスリン』、『インスリン抵抗性』、そして、『GI値』という学術ワードが必要になります。そこで、最初に、そのワードを出来るだけ分かりやすく説明しておきます。

 


『インスリン』は膵臓から分泌されるホルモンで血糖値を低下させる働きがあります。『インスリン』によって体内に取り込まれたブドウ糖はグリコーゲンに変換されます。エネルギーとして利用するまでに一時的に蓄える目的です。『インスリン抵抗性』とは、この『インスリン』が働きにくくなっている状態をいいます。『インスリン抵抗性』が悪化した状態になると血糖値が上がるだけでなく、糖・脂質が体内に滞って糖尿病や動脈硬化を引き起こすことにもなります。『インスリン抵抗性』が起きる原因は糖質(炭水化物や砂糖)の取り過ぎです。血糖値が高い状態が続くと、血糖値を下げようと『インスリン』分泌が過剰になり、その結果、『インスリン抵抗性』が引き起こされます。さらに、『インスリン』過剰分泌の状態が続くと、膵臓は疲れ、『インスリン』分泌量は低下し、挙句の果て、糖尿病へと進行するのです。

 


糖尿病発症の前段階にある『インスリン抵抗性』を予防するために『GI値(グリセミック・インデックス)』という指標があります。『GI値』とは血糖値の上がり易さを示す指標です。つまり、『GI値』が高い食品ほど、血糖値を上げやすい食品であることになります。そして、GI55以下の食品を『低GI食品』、5669の食品を『中GI食品』、70以上の食品を『高GI食品』と分類されています。ちなみに、白米はGI72の高GI食品です。糖尿病の予防にはなるべく低いGI値の食品を選びましょう。

 


GI
 




















ハチミツの場合には、蜜源植物の種類によってGI値が異なります。一般のハチミツのGI値は80を超えて『高GI食品』なのですが、マヌカハニーのGI値は最近詳しく調べられており、産地によって異なりますが、果糖の割合の多いため、4867の『低-GI食品』であることが確かめられています。

 


比較表

















一方、砂糖(ショ糖)のGI値は68であり、一般のハチミツの方が高いのですが、マヌカハニーのGI値は砂糖より低いことが分かっています。しかも、スイーツなど甘い食品の好きな人にとって、砂糖に比べて1.5倍の甘味度を持つマヌカハニーは、同じ甘さを追及する上で使用量を3分の2に減らすこともできる特別なハチミツといえるのです。