マヌカハニー

マヌカハニーに含まれるフェニル乳酸について

 マヌカハニーの特別な効能は抗菌成分のメチルグリオキサール(MGO)と抗酸化・抗炎症成分のシリング酸メチル(SAM)であることはこれまでに幾度となくこの『健康まめ知識』でも取り上げてきました。一例を挙げておきます。

 

城先生と寺尾先生の知って得するかも? 健康・化学まめ知識 健康編 : マヌカハニーの抗炎症作用と抗菌作用で完璧なオーラルケア (livedoor.jp)

 

MGOSAMは、種々の蜂蜜がある中でもマヌカハニーにのみ高濃度で含有する特有成分なのですが、実は、MGOSAMとともにマヌカハニーの効能に関与している特別の成分としてフェニル乳酸(PLA)もあることはご存知でしょうか?

 

PLAはアミノ酸のフェニルアラニンから変換される物質であり、ニュージーランド第一次産業省が提案したマヌカハニーを証明するための科学的定義の1つに該当しています。他の蜂蜜と異なって、モノフローラルのマヌカハニーには特別にPLA400/㎏以上の濃度で含まれています。したがって、マヌカハニーはMGOSAM、レプトスペリン(SAMの配糖体)、PLAの含有量によってモノフローラルであることが証明できるのです。

 

PLAはマヌカハニーを証明するための含有成分だけではありません。2023年のトーマス・ヘンレ教授らの研究報告でPLASAMはマヌカハニーのMGOの抗菌活性を高めることが明らかとなりました。

 

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 マヌカハニーの健康増進効果とは主に
MGOの抗菌作用によって食物の消化吸収に関与するすべての臓器(口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)を病原性細菌や毒性物質から守り健全な状態にするものです。これらのマヌカハニーの健康増進効果はMGO単独の抗菌活性によるものと考えられていましたが、PLASAMといったマヌカハニーに含まれる抗酸化物質やポリフェノール類との相乗効果によるものであることが確認されています。

 

2に示すように、人工ハチミツにMGO濃度が250/㎏以上の場合にPLAを添加するとPLAの濃度依存的にBacillus subtilis W168(枯草菌)の増殖は遅延すること、つまり、MGOの抗菌活性が増加することを確認しています。

 

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また、人工ハチミツとともにマヌカハニーでも同様の結果が得られました。

 

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   論文の考察では、
PLAによってMGOを安定化したためにMGOの抗菌活性が増加したのではないか、と考えられています。また、PLAとともにポリフェノールのモデル物質としての没食子酸を用いた場合も同様の結果が得られており、SAMPLA、没食子酸、その他のマヌカハニーに含まれるポリフェノール類もMGOの抗菌活性の効果を高める可能性があると考察しています。

マヌカハニーと難消化性αオリゴ糖の組合せでコロナ感染予防と重症化防止対策を提案

コロナウイルス感染の終息の兆しは全く見せず、人工呼吸器や集中治療室などで治療を受けている重症者も増えており、医療崩壊の危機が迫っています。一方で、効果的なワクチンの開発は世界で少なくとも30以上もの企業と研究機関が精力的に進めていまして、このところ、米国やロシアでの開発のニュースをよく耳にします。しかし、安全性を考慮するとワクチン開発には優れた科学だけではなく時間と費用が掛かります。少しでも早く安全で効果的なワクチンが完成することを期待したいところです。

このような状況下で機能性食品に関する複数の研究報告の調査から、私はマヌカハニーと難消化性αオリゴ糖を組み合わせて摂取することが感染予防と重症化防止対策となる可能性が高いと思っています。その理由を以下に説明していきます。

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)はCOVID-19として知られる現在のコロナウイルス疾患の原因となっていますが、202011月にコロナウイルスに対する防御力を高めるために難消化性αオリゴ糖(αオリゴ糖)とオリーブの葉や果実から抽出される抗酸化物質であるヒドロキシチロソール(HTS)を活性成分とするサプリメントによる効果の検証がイタリアの研究グループによって報告されました。

 

A pilot study on the preventative potential of alpha-cyclodextrin and hydroxytyrosol against SARS-CoV-2 transmission(α-シクロデキストリンとヒドロキシチロソールのSARS-CoV-2感染予防効果のパイロット研究)Acta Biomed 2020; Vol. 91, Supplement 13: e2020022

 

 このコロナウイルスは、ヒトの細胞膜上に存在している膜貫通性セリンプロテアーゼ2TMPRSS2)の助けを借りて、コロナウイルスが持っているスパイクタンパク質をアンジオテンシンI変換酵素2ACE2)に結合させることで、気道上皮の細胞を攻撃し、細胞内に侵入することが知られています。そこで、このTMPRSS2ACE2の二つのタンパク質の働きを阻害するとコロナウイルスはヒトの細胞内に侵入できないことになります。


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 タンパク質のACE2TMPRSS2は細胞膜の脂質ラフトに局在しているのですが、αオリゴ糖はこの脂質ラフトからスフィンゴ脂質を減少させ、細胞内に侵入するために必要なリン脂質も減少させる作用が知られています。αオリゴ糖が持つこれらの作用はACE2TMPRSS2の働きを阻害してコロナウイルスの侵入を抑制できるものと考えられます。

 

また、この報告でHTSをコロナウイルス感染の防御のための活性成分として選択した理由はHTSが幅広い抗ウイルス活性を有していて、特に、インフルエンザウイルス、HIV,コロナウイルスのようなエンベロープを持つウイルスに対して感染性を低下させるためです。

 

HTSのインフルエンザウイルスに対する効果については下記参考文献を挙げています。


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 この文献では、各インフルエンザウイルスを室温で24hHTS1000μg/ml)で処理し、その処理したウイルスを10倍希釈で連続的に希釈した上で、MDCK細胞に接種してウイルス力価を評価しています。黒いバーは、HTSを処理していない対照ウイルスの力価を示していまして、HTSに抗インフルエンザウイルス作用のあることが確認されています。


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 また、COVID-19の重症化にはTNF-αなど炎症性サイトカインの急速な増加が原因となりますが、HTSはこのような炎症性サイトカインのレベルを低下させ、重症化を抑えることも知られています。

 

では、この報告の方法です。HTSとαオリゴ糖を配合した表1に示す内容のスプレーを作成しています。


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 被験者は北キプロス出身のSARS-CoV-2感染リスクの高い健康なボランティア50名とSARS-CoV-2陽性者6名です。

 

登録された50名の被験者は感染が最も活発な時期に仕事柄コロナ感染リスクが高い人をセレクトしています。また、それ以前にウイルス感染していないことをELISA抗体検査により確認されています。試験期間は2020816日から2020103日です。50名に14回(1回の投与につき4噴霧=0.5 mL)のスプレーを15日間使用して試験期間中にコロナ感染の無かったことで予防効果を確認しています。

 

陽性者6名のうち症状のある2名は、7日間の推奨された治療を行ってもSARS-CoV-2の陰性化は認められなかったため、スプレーを使用しています。このスプレーを使用した2名の患者は5日後にSARS-CoV-2検査で陰性となりました。一方、残りの陽性者4人は無症状のためスプレーを使用せず、10日後に陰性となり、陽性者のスプレーの効果を確認したとのことです。

 

まだコロナ感染予防のためのHTSとαオリゴ糖の組合せによる効果の十分な検証とは言えなく、可能性があることを示唆している段階に過ぎません。今後、健常者およびウイルス陽性者に対して、対象群の設置をし、サンプル数を増加させる予定だとのことです。

 

ここでは、HTSとαオリゴ糖の組合せによる効果を検討しております。HTSはヨーロッパ諸国や米国においてにおいて食品として利用できますが、日本においてHTSは、未だに食品としての利用は認可されておりません。

 

そこで、私はHTSの代わりにエンベロープを持つインフルエンザウイルスに対して抗ウイルス作用を持ち、しかも、重症化を防ぐために炎症性サイトカインを減少させる抗炎症作用を持つマヌカハニーとαオリゴ糖の組合せによるコロナ感染予防と重症化防止対策をここに提案したいのです。


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マヌカハニーの病原体感染予防に対する有効成分はMGOだけではない

マヌカハニーはハチミツの中でも特にメチルグリオキサール(MGO)という抗菌物質が含まれていて様々な健康増進効果を有していることで“蜂蜜の王様”と呼ばれていますが、実は、この病原体の感染予防に関する有効成分はMGOだけではなく、マヌカハニーに含まれるオリゴ糖にもよるものであることが判ってきました。MGOが病原性細菌やウイルスに対する抗菌・抗ウイルス作用を示すと同時に、マヌカハニーオリゴ糖も病原性細菌の腸管細胞への付着を抑えて、感染を防いでいるようです。

 

ここでは、アイルランドのLaneらのグループの2019年の報告を紹介します。ヒト結腸腺癌由来細胞を用いて、その細胞に病原性細菌が感染する際にマヌカハニーのオリゴ糖を加えると、細菌の細胞への付着が抑制されたというものです。

 

Oligosaccharides Isolated from MGOTM Manuka Honey Inhibit the Adhesion of Pseudomonas aeruginosa, Escherichia Coli O157:H7 and Staphylococcus Aureus to Human HT-29 Cells

J. A. Lane et al., Foods 2019, 8. 446; doi:10.3390/foods8100446

 

ハチミツに含まれるオリゴ糖はプレバイオティックスの可能性が示されています(Sanz et al., 2005)ビフィズス菌や乳酸菌を選択的に増殖し、腸管上皮細胞から侵入する病原体を遮断することで感染症の発症を抑えることができるとしています。

 

これまでのこの分野の研究では主にウシとヒトのミルクオリゴ糖の抗付着(抗感染)作用に焦点が当てられてきました。そこで、まず、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)による病原性細菌の感染予防機構について説明しておきます。ほとんどの病原体は腸管上皮細胞の細胞表面の複合糖質であるグリカンに結合できるグリカン結合タンパク質であるレクチンを持つが、①そのレクチンは表面のグリカンに付着して、②上皮細胞内に侵入することが判っています。(図1の左側の図)しかし、HMOは構造的に細胞表面のグリカンに似ていますので、レクチン結合類似体として働き、病原体の付着を防ぐことができます。(図1の中央の図)また、HMOは腸管上皮細胞表面のグリカンのグリコシル化の機構を変更させ、糖質を変えることもあり、その結果、病原体のレクチンはグリカンに結合できず、病原体の付着、増殖、コロニー形成に影響を与えています。(図1の右側の図)


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 では、マヌカハニーのオリゴ糖(MHO)による病原体の腸管上皮細胞への付着防止作用に関する報告を紹介します。

 

マヌカハニーは80%以上が単糖を含む糖類ですが、この内、最大25%がオリゴ糖で構成されています。そこで、この研究では、活性炭を用いて単糖のブドウ糖や果糖を除去してMHOを抽出しています。(ここでは、その抽出の詳細は省きます。)

 

次に、病原体としてこの検討に使用した細菌と感染症について表1に示しておきます。これらの細菌は食中毒や髄膜炎、敗血症などを引き起こすことが知られています。


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 まず、病原体である細菌をヒト結腸腺癌由来細胞(HT-29 細胞)に接種して培養(細菌の種類によって1時間、あるいは、2時間、 37
5%CO2)し、PBSで洗浄後、付着した細菌を回収してその生菌数を求めています。その結果、試験に用いた細菌はすべて細胞へ付着することを確認しました。


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 細菌をMHO1時間、プレ培養しHT-29 細胞に接種して1時間、あるいは、2時間、培養してPBSで洗浄後、生菌数を求めたところ、特に、黄色ブドウ球菌と緑膿菌において付着を抑制できること、つまり、感染を予防できることが明かとなりました。


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 黄色ブドウ球菌の場合は、プレ培養なしで付着抑制が増大することが判りました。このことはオリゴ糖が腸管上皮細胞へ相互作用することで黄色ブドウ球菌の付着が抑制できるので、マヌカハニーのオリゴ糖(MHO)で黄色ブドウ球菌の感染は防ぐことができる可能性が高いと考えられます。


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 このようにMHOは、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌のヒト結腸上皮細胞への付着を有意に抑制することが示されています。特に、黄色ブドウ球菌については、食品に含まれるオリゴ糖との相互作用についてこれまでほとんど報告されていないようです。なので、マヌカハニーを摂取すると黄色ブドウ球菌が関連する関連胃腸炎を予防できる可能性もあると考えられます。

 

尚、今回の『健康まめ知識』の内容はシクロケムバイオの雑誌会でCUさんがまとめてくれたものです。CUさん、ご苦労様でした。

 

偽装マヌカハニーについて

先月のテレビ番組『林修の今でしょ講座』でマヌカハニーがウイルス感染対策に有効だと紹介されてからマヌカハニーを買い求める方が増えています。しかしながら、マヌカハニーをネットで購入される際には本物かどうか、見極めることが大事です。なぜなら、半分以上は偽者なのです。産経新聞の経済情報サイトのサンケイビズでも20189月にそのマヌカハニーの偽装問題は取り上げられています。その記事のタイトルは「『液体の金』偽装で甘い蜜、NZ産マヌカハニー、生産量以上に流通」です。

 

ニュージーランド第一次産業省(日本の農林水産省に当たる)はマヌカハニーの生産量と販売量があっていないことを認めています。販売量1万トン余りに対して、生産量は1700トンなのです。ということは世界的には80%以上が偽装されていることになります。2019年の日本への輸入量は503トンですので世界の約3分の1のマヌカハニーが日本に輸入されているとは考えにくいのです。

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 そして、マヌカハニーの抗菌成分はMGOなので、MGO含有量を分析すればマヌカハニーであるかどうかを判断できるのですが、日本でマヌカハニーを取り扱っているほとんどの業者は輸入してもMGO分析をしていません。

 

なので……おかしいと思ったら、必ず、日本マヌカハニー協会にお問い合わせください。

 

http://j-manukahoney.jp/

 

また、本物のマヌカハニーであってもMGO1100㎎以上/㎏含まれるとMGO高濃度の高級品と謳いながらMGO濃度が表示より極端に低く実際には200㎎くらいしか含まれていないものを高価な値段で販売している業者、100%マヌカハニー固形ドロップといって加熱加工によって発がん物質HMFの含有量が規制値40㎎未満/㎏のところを2,000㎎以上/㎏含まれる製品を平気で販売している業者など、様々な悪徳業者が横行しています。

 

マヌカハニーは薬ではないので感染者が治癒効果を求めるものではありません。しかし、これまでの研究結果からマヌカハニーのウイルス感染予防効果は明らかにあると思います。それだけに、善良な方々をだます悪徳業者を私は許せないのです。


アルコール消毒の後にはマヌカハニーハンドクリームを塗るのがお薦め

インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス感染対策に手のアルコール消毒や石鹸でこまめに洗うことは今や常識となってきています。

 

アルコール消毒液は抗菌抗ウイルス活性が強く、水洗いが不要、消毒時間が短くて済むなどのたくさんの利点があります。しかしながら、アルコール消毒液は抗菌石鹸と比較して、皮膚への刺激性はないものの皮膚を乾燥させ、場合によっては、激しい敏感肌を引き起こすこともあります。なので、冬場に乾燥しやすい肌の方々、特に、高齢者のそのような肌の方々がウイルス対策のためにアルコール消毒液を利用した場合には、乾燥肌が酷く手荒れを引き起こし、角質層が剥離し、皮膚バリアが崩れ、逆に、肌から病原細菌が侵入しやすくなるのです。

 

そのような理由で、私はアルコール消毒液をなるべく使いたくないのですが、このところ、アルコール消毒を求めてくる場所があり、しかたなくアルコール消毒しています。しかし、その後は必ず、マヌカハニーとαオリゴ糖を配合したハンドクリームを塗るようにしています。油分で皮膚を保護し、保水して肌を柔軟にし、手荒れを防ぐことができます。さらに、マヌカハニーとαオリゴ糖の抗菌抗ウイルス効果も期待できます。

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 手をアルコール消毒することや石鹸で洗うことがインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスの感染対策に有効なことはウイルスの構造から明らかです。

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 これらのウイルスはエンベロープという脂肪膜で覆われていて自分の遺伝子を保護しているのですが石鹸に含まれる界面活性剤やアルコールは脂肪膜除去に有効ですので、抗ウイルス効果は期待できます。ということは、脂肪膜の脂肪を包接して病原菌の溶菌作用(菌を溶かして殺す作用)のあるαオリゴ糖も細胞膜除去に効果が期待できると考えられます。

 

また、前々回のこの『健康まめ知識』で紹介していますが、310日火曜日のテレビ番組『林修の今でしょ!講座』で新型コロナウイルスの感染対策にマヌカハニーが効くかもしれないと講師の先生が言っていたとネットでも話題になっています。その講師の先生はインフルエンザウイルスに対するマヌカハニーの抗ウイルス作用について長崎大学の論文を紹介していて、同様に、構造的に同じ新型コロナウイルスにも有効な可能性があるとのことでした。もし、そうであるなら、メチルグリオキサール(MGO)が関与している抗ウイルス作用はスパイクというタンパク質の変性によるものと考えられます。

 

したがって、ウイルス対策のためにもマヌカハニーとαオリゴ糖を配合したハンドクリームを常備しましょう。

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