日曜日の朝7時、『ゲンキの時間』という番組で「すい臓」の話がありました。お酒好きの人が注意しなければならない臓器は「肝臓」と思いがちですが、「肝臓」だけでなく「すい臓」も気を付けなければならない臓器であり、お酒を飲みすぎるとすい炎やすい臓がんといった怖い病気を発症する可能性があることを番組では伝えていました。一方で、私の会社の研究室では、ダイコンの辛み成分の保持の研究をしており、その関係で「ダイコンの辛み成分がすい臓がんの予防に有効」という、2013年の論文に注目していました。この番組の内容を合わせると、「アルコールを飲む機会の多い人にはダイコンを食べるといい」ということになります。アルコールの飲み過ぎが体に良くないのはもちろんなのですが。


昨年から中川家の剛さん、次長課長の河本さん、チュートリアルの福田さんと「急性すい炎」による芸人の休業のニュースがありました。中でも、復帰後の福田さんの痩せ方は尋常ではない感じであったのを覚えている方も多いはずです。福田さんは病気で痩せたのではなく、医師から極度の食事制限をされたためと推察されます。食事をすると、すい臓では食べ物中のタンパク質を分解するために消化酵素を作っています。「急性すい臓炎」は、その酵素によって、タンパクで構成されている、すい臓自らを溶かす病気です。よって、食事制限で酵素を作らせないようにしたために痩せたのです。


「急性すい炎」になると、上腹部に差し込むような痛みや吐き気、発熱があり、重症になると周りの臓器まで壊し、致死率が10%を超えることもあるようです。「急性すい炎」を繰り返すと、「慢性すい炎」となり、やがて「すい臓癌」に移行するリスクがあります。「すい臓がん」の発症率は、胃がんや大腸がんに比べ、1/35程度にもかかわらず、難治癌のため国内におけるがんによる死亡原因の第5位を示しているのです。この「すい臓がん」の5年生存率は、他の臓器のがんが20%であるのと比較して、僅か7%と極めて低い危険ながんです。この「すい臓がん」の危険因子の第一がアルコールと喫煙、そして、糖尿病や家族歴(遺伝)などが挙げられます。


なぜ、その「すい臓がん」のもととなる「急性すい炎」は起こるのか?番組では、「すい臓」の役割に注目していました。「すい臓」では、インスリンなどのホルモンと消化酵素が作られています。この消化酵素は、食べ物中に含まれるタンパクを分解して消化するものですが、その消化酵素を含む「すい液」の出口が、アルコールや喫煙によって、せまくなります。その結果、「すい液」がすい臓の中の滞ってしまうと、すい臓はもともとタンパクですので、自らを分解していき、「急性すい炎」が引き起こされ、挙句の果て、すい臓がんを発症する可能性があるのです。


ここで、すい臓がん予防効果を持つダイコンの辛み成分に関する2013年の論文を紹介します。この論文は、国立医薬品食品衛生研究所の岡村氏らによるJournal of Agricultural and Food Chemistryに投稿された論文です。ダイコンおろしには、メチルチオブテニルイソチオシアネート(MTBI)という辛味成分が含まれており、このMTBIがすい臓癌に効果があることを示したものです。ハムスターを使った動物試験ですので、アルコールでガンを発症させたわけではなく、BOPという発癌物質を皮下注射してすい臓がんを発症させたものですが、エサにMTBIを添加して食べさせたところ、発がん率が有意に減少したとのことで、特に発癌物質を注射する前からMTBIを添加したエサを与えると顕著にすい臓がんを予防できるといった報告です。ダイコンの中には、MTBIの前駆体が入っていてすりおろした際に発生します。つまり、お酒の好きな人にはすい臓がん予防のためにもダイコンおろしがオススメなのです。


秋の味覚の秋刀魚の塩焼きはお酒によく合いますが、秋刀魚を焼いた際に発生するコゲも発癌物質と言われています。昔から、秋刀魚の塩焼きには、大根おろしが付き物の理由が分かりますよね。ビタミンC(アスコルビン酸)豊富なスダチを添えれば、発ガン予防効果はさらに高まることになります。

さんま