2006年01月28日

東亜医学協会発行『漢方の臨床』誌1月号で「新年のことば」特集

主として漢方を専門とする医師・薬剤師の会員がほとんどを占める専門誌『漢方の臨床』の新年号が発行され、恒例の「新年のことば」特集が組まれている。

総勢150名近い医師・薬剤師等が「あいうえお」順に掲載されている。

各先生方がやや気楽に書ける雰囲気のもと、全体を概観すれば日本漢方の様々な問題点のほとんどが指摘されている。

目に付いたことを執筆者名を敢えて省略させて頂き、ホンの要点だけをピックアップする。

●まずは最初の方でアメリカ在住?らしいA先生が、アメリカの「伝統薬会議」において中国薬局方は採用されても、日本薬局方が採用されないことで、「漢方の国際化」とは何なのか、といたく嘆いておられる。

つまり今後も世界から中医学は重要視されても、日本漢方(漢方医学)はローカルのまま世界に置き去りにされるであろう将来を占うような事態かもしれない。

●次に、日本漢方出身の先生が、桂枝湯や麻黄湯などは、温めていながら表熱証と表現するのはおかしいじゃないか、と盛んに漢方医学における論理の矛盾に疑問を呈しておられる。

百尺竿頭一歩を進めば、すなわち中医学の世界に到達するのだが、きっとやがて目覚められることだろうと思われる。

●一方、中国国内の状況として、中国では中医学の再評価の動きが高まり「中西医結合」は中医学の発展にあまり芳しくないことから、今後の発展方向に議論が高まっているというS先生の記事は大変興味深い。
SARSが流行したときも「中西医結合」で育った若い世代よりも、中医学に長じた老中医が活躍したことなど、示唆に富むお話である。



●専門誌だけに医師が多数を占める中、地方の漢方専門薬局の薬剤師が、風邪やインフルエンザに対して病院で処方される医療用の葛根湯がいかに有効に使用されていないか、あるいは、いかに無効であるかを述べて、銀翹散製剤こそ有効である旨を述べている。

急性疾患に傷寒論医学を主体にする日本漢方(漢方医学)では、インフルエンザ一つすら理論的にも現実的にも、治すことは出来ないので、そろそろ根本的な基礎理論あたりから、中医学に学ぶべきときが来ているように思われるのである。

●Y先生は、エビデンスによる医療(EBM)に対する大いなる疑問を投げかけておられた。

病名治療に等しいエビデンスなるものは、普遍性を重視する西洋医学のみに有効な手法であり、個別性を重視する漢方医学や中医学に採用するには、根本的に問題があり過ぎると本ブログの筆者は思うものである。

●昨今、日本国内では漢方の原理・原則を無視した大建中湯の乱用が目立つ、第二の小柴胡湯事件が勃発しなければよいがと強い危惧の念を表明されるR先生。

「新年のことば」特集全体を眺めていて、きっと誰もが感じることは、漢方医学の講義を各大学医学部で正式なカリュキュラムとして採用するところがかなり増えているということから、N先生のお言葉にもあるように「首尾一貫した総論を備えた教科書」はあるのだろうか?
基礎理論における不安はないのだろうか、という大きな疑問が湧いて来ざるを得ない印象を持つことだろう。

以上、本ブログの筆者の主観を交えながらの解説となっているので、月刊『漢方の臨床』誌に興味がおありであれば、

東亜医学協会のホームページまで!


Posted by cyosyu1 at 21:22