【監督】深作欣二
【出演】佐藤浩市
高岡早紀
蟹江敬三

浅野内匠頭が吉良上野介への外傷事件を起こし切腹。この浅野の友人で切腹を見届けた民谷伊右衛門は、大石内蔵助への敵討ちを提案するも、大石自身は反対。完全に反対した訳ではなく、今はその時期ではないという事なのだが、人斬りをした事がある者が民谷と同僚の堀部安兵衛ぐらいしか居ないと言うのもある。

大石は女誑しなので討入したい部下達とは違って女遊びばかり。でもしっかり話を聞く時は聞いてくれるので、何だかんだでしっかり者。『町人は無責任な野次馬で、己の手も汚さず血も流さない癖に煽るばかり』、『遊興の金は使い果たせばお互い忘れるが、生活の金は貸した方も借りた方も一生縛られ何時しか裏切る』と中々に理の適った事ばかり言うのも大石なので、いざっと言う時にはしっかりしている。

浪人の民谷はある時お梅と言う女性を絡んだ酔っ払いから助けるのだが、これに拠ってお梅が民谷に惚れ、丁度同じ時期にお岩が妊娠。吉良への討ち入りは忠義だが、果たせば打首と言う事も理解していたが、民谷の同期が離盟した事もあって、民谷自身もやる気が削がれて、これを機に赤穂浪士47士からも離れている。

そして父親になりたくなかった民谷は、お梅と挙式を挙げる事になり、その間お岩は客引きの宅悦に騙されて毒を盛られ、狂乱後に死亡。これを機に民谷も狂乱を始めてお梅も斬ってしまう事になり、怨霊的にお岩も現れる。

とは言ってもお岩が霊として現れて妖術的なもので、赤穂浪士たちを助けて討ち入りを成功されているのが逆に面白いが、民谷自身は狂乱で大石を斬ろうとして浪士に斬られ、彼も討ち入りの際には幽霊化。お岩と違って妖術などは使えないけど、浪士達には既に見えていない。

吉良上野介側⋯言わば悪党側が全員白塗りなのが非常に分かりやすく、お梅が吉良側近の孫娘という事もあって、民谷自身も中盤以降は白塗りなので、恋煩いでの闇堕ちっぽい感じに。逆に言えば吉良側は皆白塗りな為素顔が分かりづらい。赤穂浪士達の史実なその後の処断は一切描かれず、お互い霊となった民谷とお岩が何処かに去っていく感じで終わる。

お岩が赤穂浪士を助けるという展開であるが故に、お岩としての怖さが殆どない⋯と言うよりお岩が毒殺された後も表現が綺麗すぎたので、お岩が現れる際にはダークな感じにするなどの恐怖演出は欲しかったかも。白塗り吉良側が、赤穂浪士討ち入り以外にも民谷の錯乱でも殺されて一掃されちゃうけど。