行水

June 24, 2005

暑い時は「行水(ぎょうずい)」を!

368176ad.jpg私が幼い頃から良く言われたことは、「カラスの行水」です。
入浴にさいしては、あまり長い時間浴槽に浸ることができませんでしたから、母はよくそう言ったものです。
思い出すと私がまだ物心つかない頃には、母の実家の田舎には薪を使った五右衛門風呂がありました。
私の実家でもやっとガス風呂が付けられ、お風呂に入ることは簡単ではなく面倒な作業でした。
しかし今では、スイッチを押せば全てが全自動で、いつでも簡単に入浴できます。

一昔までは、夏の暑い時にかいた汗をながすには「行水」をしたものです。
大きなたらいに水をためて、洗面器に水を汲み、それを浴びていました。
行水後は、庭の縁側に涼み、心地よく吹く風で季節を感じていたように覚えています。
現代は「シャワーする」と、言い方も変わり、いつでも簡単に冷水から温水まで気軽にできるようになりました。

もともとの「行水」のいわれは、『長阿含経』の中に「手に自ら斟酌して食訖(じきおわ)りて行水し」から出ています。
行水は、修行食の後に、使った鉢や手を洗うことをいったのです。
それから修行時に、みずからの身体を清める、気持ちを正す意味合いとなり、いつしか冷たい水を浴びることをさして使われるようになりました。
何事も修行であると仏教は教えますが、食事に関しても修行だったのです。

最近は、食事を頂くときに「いただきます」と合掌して箸をもつ姿を見かけなくなりました。
私たちが今こうして生きていられるのも、多くの恵みがあって食事ができるからなのですが、その恵みに感謝する気持ちが薄らいでいる表れだと感じています。
正式に行水をすべきだとは言いませんが、せめて食前食後には、「いただきます」と「ご馳走様でした」くらいの言葉を、誰が見ていようがいまいが口に出して言うべきだと思います。
自然の恵みは、何もしなくてもいただけるものではありません。
普通の生活の中で、日に三度は食事をするわけですから、最低三回は天地の恵みに感謝の気持ちを捧げたいものです。
梅雨の中休みの今日、時には「シャワーしよう」ではなく、「行水しよう」と声を出してやってみてはいかがでしょうか?

■写真は夏を感じる「風鈴」