入試マニアの独り言~2014年京大数学(理系)~新コーナー:記事主自作数学問題!

2014年03月23日

(7)知っていれば一瞬で解ける!?2014年入試出題の典型問題

 私は、このブログで一貫して高校数学はまず思考力云々以前に、必須知識がいくつかありそれを習得することがまず第一で、それが出来て初めて思考力が大事になるといい続けてきたつもりだが、 実際の入試では巷で難関大学といわれるような大学でも知識さえあれば一瞬で完答できてしまう(解法が浮かんでしまう)問題は少なくない。そこで、今回は、以前(2)の記事で強調した『数学に大事なのは知識である』ということの具体例をあげるために、今年の難関大入試問題から、あえてそのような問題だけを集めて紹介してみようと思う。その問題を研究してみて、改めて数学における知識の大事さを感じ取っていただければ幸いである。

 それでは、以下に紹介する問題を見て解く、あるいは、さらっと模範解答を読んでみよう!
(問題・解答解説はこちらの河合塾のサイトを参照してください。なお、選んだ問題で数Ⅲの範囲となるものは※をつけてあります)

①早大(理工)第1問

②阪大(理系)第3問※

③京大(理系)第2問

④京大(文系)第2問

⑤東工大 第1問



 どうだったろうか?これらの問題はすべて本当に今年の入試で出題されたものであるが、勉強がある程度進んだ人なら、見たことあるタイプの問題だとか、問題のからくりがすぐに見えて、すぐさま特に思考することもなく解答出来る!と思った人も多いに違いない。それは、入試問題を解く上での知識がちゃんと身に付いている証拠であり、いかに数学の問題を解くうえで知識を持っていることが大事であるかの証拠でもある。


 早稲田のこの問題に出てくる、αは1の虚数の立方根である。よく、教科書でωとして出てきて、ω^3=1とかω^2+ω+1=0という関係式が有名であるが、数学の勉強をある程度している人ならば、αの値を見た瞬間にそれに気付いたはずである。たとえ、それに気付けなかったとしても、虚数αが与えられて、公比αの等比数列の和を求められているいる時点で、αの高次の式を扱わなければいけないから、まともに計算していたら話にならず、αの次数下げを出来るような関係式をはじめに導いておかなければならないということに気がつかなければこの問題は解けない。しかし、こういった次数下げをするというのは、常套手段であるから、恐らくどんな数学の参考書でも載っている話である。つまり、その項目を読んだ経験により知識を持っていれば、すんなり解けてしまう問題であり、思考力以前の知識だけで解けてしまう問題だといえるだろう。


 この問題は、このタイプの問題を知ってる人は30秒で方針がたち、知らない人はよっぽど頭をフル回転させない限り(そもそも緊張感の高まる試験場でそんなことはほぼ不可能だが…)解法を捻りださなかっただろう、有名知識問題といってよい。一般項の表せない数列f(n)の和(特にf(n)=1/n^r型が多い。この問題ではr=1/2)を、解答を見てもらえば分かるが、視覚化してf(x)のグラフを利用して、f(x)とx軸との間の面積(すなわち積分で表される!)と∑f(n)との大小関係に着目して不等式で∑f(n)を積分で挟むという面積比較という必須手法である。この問題では、数列の和の評価をしているが、不等式で挟めるということから、はさみうちの原理を利用して極限を求めるときなどにもよく使う。これも数Ⅲの参考書には必ずと言っていいほど載っている話で、今回の出題では、ドストレートにこの手法を使いなさいと言っているも同然の問題文なので、受験生はこの問題に思考している暇はなく、“面積比較という手法の知識”ですぐさま処理できなければいけない。なお、完全に余談だが、私が暇つぶしに作った『入試基礎レベル数学問題(by暇人京大生)』ではこの手法を用いて、ネイピア数eを評価している。興味があったら、解いてみてほしい。


 nがらみの確率で1からn-1回目までの試行がどのようになるか複雑な場合でも、n-1回目での試行における確率p(n-1)がわかっていると仮定したら、その確率で求めたいn回目の試行の確率p(n)を表せるということがよくある。すると、その関係式は数列{p(n)}の漸化式になっており、その漸化式を解いたら求める確率p(n)の確率が出てしまう。このように、確率を漸化式で表して数列の一般項を求めてしまおう、というのはこれまたどんな参考書にでも載っている必須手法である。この京大の問題の場合、漸化式を立てるという手法を知っていたら、n-1回目の試行→n回目の試行の動向が極めて単純なので、漸化式を立てるのもまた非常に簡単であり、やはり解答に思考するまでもない。そういう意味で、この問題は確率を求めるのに“漸化式を用いるという知識”を知っていますか、という問題でしかないのである。なお、このように漸化式を用いる問題は、今年の東大でも理科と文科の第2問でも出題されている頻出の手法である。なお、確率を漸化式で求める場合、必ずしも関係式がp(n)とp(n-1)というふうにとなりあったりするわけではない。そのような問題に関して興味がある方は、私がまたまた暇つぶしで作った『2014年京大理系数学模擬問題』で扱っているので、よかったら参照していただきたい。ただし、ここで扱った問題は単純に確率を漸化式で求めるという手法を知っているだけでは解けず、やや思考力を要する問題である。


 ある点Pから関数のグラフに接線が何本引けるかを議論するとき、点Pではなく、まずグラフのx=sにおける接線である直線が点Pを通ると考える。すると、その条件から、sに関する方程式が表れ、その実数解sの個数は大抵の場合、点Pから対象のグラフとそれに引いた接線との接点の個数に一致するので、その個数を求めることで接線が何本引けるかが分かる。これは、高校の定期テストにもよく出題されるほどの超基礎知識である。おそらく、京大を受けた学生なら、その程度の知識はないはずがないので、実際の受験生は解答の方針を考えるまでもなく、すぐに解答に取りかかったはずである。これも、思考力云々言う前に、知識さえあればすんなり出来てしまう問題といえるだろう。なお、大抵の場合といったのは、例外もあるからで、どういう場合が例外であるかは皆さんはわかるだろうか?


 連続する3個の整数の積は6の倍数である。なぜなら、連続する3個の整数には2の倍数と3の倍数が必ず存在するから、その積は2×3=6で割り切れるからである。また、隣り合った偶数の積は8の倍数である。なぜなら、2つの偶数のうち片方は必ず4の倍数であるから、それらの積は2×4=8で割り切れるからである。これは当たり前のことであるが、なかなかいきなり試験場でそれに気づけといわれても気づかないかもしれない。しかし、やはり数学の勉強をたくさんしていけば、必ずこのような事実を用いた問題にぶち当たる。その経験が知識となって残っていれば、この問題はそれだけでまず(1)はクリアできてしまう。次に(2)はanの∑を計算してやるのは、(別に巧妙な手法もあるが、それを知らなくても)教科書にある公式で簡単に計算できるし、結局an-bnもnの式で表せられる。また、nが3以上の奇数であるからn=2m-1(mは2以上の整数)と表される(これは当たり前の知識!)ことから、さらにan-bnをmの式で表せる。すると、an-bn=2/3×m^2(m-1)(m-2)と表せ、連続する3つの整数の積は6の倍数であったから、結局、an-bnは4の倍数であることがわかり証明終了となる。結局、この問題は、一見難しそうな整数問題に見えて、実は連続する3つの整数の積は6の倍数、隣り合った偶数の積は8の倍数ということを知っていれば出来てしまう思考力云々以前の話の問題なのである。


 どうだったであろうか?これはほんの一部であるが、実際の入試では少なからず知識が非常にものをいうことがわかっていただけたと思う。もちろん、難関大学を志望する学生さんたちは、そういう問題は皆解けるのは当たり前でなくてはならず、実際の試験で差が付くのはもっと難しい思考力を要する問題であるわけではあるが、逆を言えばそういう知識だけで解ける問題は数学が苦手な皆さんは今すぐに出来るように対策をしなければ、合格は出来ないということである。だからこそ、数学の勉強でまず一番はじめにしなくてはならないのは、必須手法の知識をしっかりと頭に叩き込むこと(=(2)の記事で紹介した勉強)なのである!新受験生の皆さんは、まずそのことを肝に銘じて、数学の本格的な受験勉強を始めて行ってほしいと思う。ファイト!

daisaku309 at 17:25│Comments(4)

この記事へのコメント

1. Posted by あ   2014年05月21日 08:34
わんこら式数学の勉強法についてどう思われますか?
2. Posted by 記事主です   2014年05月21日 20:22
すいません、なんですか?そのわんこら式というのは。
3. Posted by あ   2014年05月21日 21:12
わんこら式数学でググると出てきます。説明不足ですみません
京大理卒の人が提言してる数学勉強法で問題を読んで解答を写経するというのを7回繰り返すというものです
写経してるうちに解法が自然と身につくとか。サイト主は実際にこの方法で京大数理研の筆記に合格したらしいです
4. Posted by 記事主です   2014年05月21日 22:44
よく知らないので、なんとも言えませんが、聞く限りでは、そんな勉強楽しくなさそうだし続けられるの?というのが私の率直な感想ですね。写経のように丸暗記するというのは、想像以上に苦労のあるものですよ。

まあ、といっても、私はとても数理研へ行くレベルには到底及ばないので、効果がないなんて否定は決してしませんが。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
入試マニアの独り言~2014年京大数学(理系)~新コーナー:記事主自作数学問題!