またまた唯、帆乃香、千歳に三連打を浴びて窮地を迎えたが、後続を断つことに成功。
7回を終えて被安打14、失点0と出来過ぎな試合運びを見せてきた。
ラッキーセブンで幸運にも2点先制できたので、唯が崩れてくれたまま続投すれば追加点が望めるし、控えの筑紫芙雪に変わってくれれば追加点を望めなくても、大黒柱を失った雷霆女子なら余裕で逃げ切ることが出来る。
そう思っていた時期が烈にもあった。
この回、不動山高校は前半戦同様3者凡退で攻撃を終えた。
違うのは唯の投球内容である。
明らかに唯と帆乃香の間でサインのやり取りがなされていたし、ショートゴロ、サードフライ、セカンドゴロと打たせてとるピッチングに切り替えてきた。
「奥さんもう修正欠けてきたみたいやな」
「基本的に根が単純なのよね、彼女」
成穂華の闘志に思うところがあったのか。
プライドと能力の高さから未だ見下してはいるだろうが、ないがしろにすることはやめたらしい。
しかしそれだけでも唯にとっては驚異的な変化ともいえる。
その謙虚さ、3ヶ月くらい保ってほしい。
「っていうか奥さんって否定せんのな」
「今更否定しないさ、ただ……」
「ただ?」
「名実ともにそうなるにはまだ早いぜ」
どうやら目的の1つは達成したようだが、もう一つの目的であるこの試合の勝利はまだ未達成である。
困難になったとはいえ、あきらめるつもりはない。
「よっしゃ円陣くもうや」
社の呼びかけで不動山高校ベンチ全員集まり円陣を組むと、勝利に向かって雄叫びを上げた。