夜、寝る前に必ずすることといえば、学校に持っていくぶんの鉛筆を削っておくこと。スタンドライトをつけた机の前で、持ち運びの容易なアルミ製の鉛筆削りの円錐型の穴に、一日ですっかり芯の丸まった鉛筆を差し込む。林檎の皮を剥くでもないし大根の皮を剥くでもない独特な耳触りの音を立てて、鉛筆の先端は尖っていく。灰皿に扇状の木屑がこんもりと溜まっていく。
 昨年禁煙を始めた叔父さんから、「小物入れに使えるよ」という理由で半ば押し付けられるかたちでもらった、クリスタルガラスの灰皿。学生が灰皿なんて、と最初は若干の抵抗があったけれど、いざ使ってみるとすごく便利。本来なら煙草を置いておく場所である灰皿の縁のくぼみは、今では勉強の休憩時に鉛筆を置いておく場所としてうまく機能している。

 バルキリーちゃんは学校の様々なひとたちから不良呼ばわりされているけれど、私は彼女が素行不良だと思ったことはないし、彼女が素行不良な振る舞いをしたところだって見たことはない。確かに彼女は優良な生徒とは決して言えないし、登校してきても気まぐれに帰ってしまう。担任はきっと彼女のことを苦々しく思っている。でも、だから不良かと問われるなら首を傾げずにはいられない。だいたい、クラスの全員が彼女をイメージだけで語っているふしが、多かれ少なかれあるような気がする。バルキリーちゃんのことをゲームのユニットになぞらえて呼んでいる私が言える義理では、もちろんないのだけれど。
 すっかり先端の尖った鉛筆たちに、それぞれプラスチックのキャップをはめて筆箱にしまい込むと、私はスタンドライトの明かりを消して眠りについた。

 いつもより少し遅い時間に目が覚めた。カーテンを開けた。雨が降っていた。空は朝とは思えないほど暗く沈んでいた。スマートフォンを手にとった。そしてクラッシュオブクランを起動した。朝の一度目の資源稼ぎだ。
 最近TH8に上がったばかりで、ユニットレベルもまだほとんどTH7の状態のまま。もちろん闇の兵舎のアップグレードもまだなので、バルキリーを使うことなんてできない。そう、そうなのだ。クラスで一番、イメージでものを語っているのはおそらくこの私なのだ、かなしいことに。