渡り廊下を渡って階段を下りた先に、がらんとした地下の広間があった。そこには季節外れの暖炉があり、加工の不完全な大きなテーブルがあり、その周りに丸太を切っただけの椅子がいくつか並んであり、頼りなげなランプがテーブルの真上に垂れ下がっていた。空気はやや土臭く、湿っぽかった。

 椅子には三人の小男が座っていた。さきほど私に話しかけてきて、ここまで連れてきてくれた小男はどれだろう。みんな同じ格好で同じ顔をしていた。おまけに綺麗な歯の並び方までそっくり一緒だった。誰が誰なのか判別するのは不可能に見えた。三人の小男にそれぞれ挨拶をされた。

「おう久しぶりだなあチーフ!」

「変わりないようで安心したよチーフ!」

「まあとりあえず座んなよチーフ!」

 二秒後にはどの言葉をどの小男が口にしたのかわからなくなっていた。私はとりあえず三人に会釈をしてから、手近な丸太椅子に腰を下ろした。

 階段とは別の通路から、さらにもう一人、小男がやってきた。彼らは四人いたのだ。あるいはこの小男こそがさきほど最初に声をかけてくれた小男かもしれなかった。彼の背後には村人が付いてきていた。彼女も、先ほどひまわりに水をあげていた村人と何もかもがそっくりそのままな、別人なのかもしれない。

「一週間ならね、俺たちだけでもやっていけるよ」と私から見て右の小男が言った。「一週間ならね。なんとか」と真ん中の小男が言った。「それ以上となると、塩梅は悪くなるね」と左の小男が言った。私は彼らが同時に喋りだしてしまわないか気が気でなかった。そうなってしまえばどの言葉が誰から発せられたものであるか、いよいよ私にはわからなくなってしまう。全く同一の四つ子。あるいは五つ子。

『いや、五人目はいない。だって私の村だもの。』

「もうじき嵐がやってきます」椅子に座った村人は言った。「恐らく夜じゅうには」

「資源はたんまりだからね。大きな嵐が来るかもしれないね」そう言った小男も座った。これで小男は四人、横並びになった。

「嵐?」と私はたずねた。

「ぎりぎりのタイミングでのご帰還でしたね、チーフ」と村人は言った。「さあ、おつとめの時間です」

 私はその広間で、四人の「大工」と施設のアップグレードについて話をした。大工は三人が稼動中で、一人は手持ち無沙汰だった。私はその一人に、村周辺の雑木の伐採をお願いした。それから私は村人に導かれるまま、チーフのおつとめとやらを続けた。金山とエリクサーポンプに溜まった資源を収穫し、タンクに収めた。大工が辺り一帯の雑木の伐採を終えたので、小屋で待機を命じた。私は指先一つでそれらを指示すればそれでよかった。物事は私以外の者の手か、あるいは自動的な処理に基づいて実行された。

「どうして私なんかの指示が必要なんだろう?」と私はたずねた。村人は、ざくざくに貯まり積もった金庫の壁面の取っ手に腰を下ろしていた。

「チーフが指示を出さなければ私たちは動けません。大工たちだって働きません」と村人は言った。彼女は、説明不足だと感じている私をなだめてすかすみたいに、ゆっくりと言葉を紡いでいった。「例えば、チーフの指示なしに、村がある程度運営されていくとして。私がチーフの代わりに指示を出し、大工たちは各々の取り掛かりたいもの――金色の大砲だとか、より多量に放電する隠しテスラだとか――そういうものを作り始める。村は正常に運営されていくように見える」彼女はそこで言葉を区切る。「でもチーフのいない村には方向性なんて何もないんですよ。物事の方向性が定まっていないと、我々がいずれどうなるのか、想像ができますか、チーフ?」

「我々?」と私はたずねた。「あなたや大工さんたちや、アーミーキャンプにいるバーバリアンたちのこと?」

「そうです。それが我々です」村人はそう答えた。そして唐突に、「物語」とだけ言った。

「物語なんです。チーフの息の根がかからないところでは、我々はただの情報の数列にしか過ぎないんですよ、チーフ。情報の数列はそれを繰る者がいなければ、ばらばらになって意味を失うでしょう。これは本当のことなんです。チーフがいて、我々がいて、ここがあるんです」

「私と、あなたたちと、ここ?」

「どうかこのことを忘れないでくださいね、チーフ」

 村人の言ったことの意味は、よくわからなかった。でも、私は彼女の言うとおり、忘れないでいようと思った。このときこの瞬間を頭の中にしたためておこうと。丸ごと。村人が私の手を握った。彼女の手は四本指で丸みを帯びていてつるっとしていた。彼女の手はあたたかかった。少なくとも私にはあたたかく感じられた。

 

 私は村を守るために、夕刻のあいだじゅうひたすら村の配置を考え、レイアウトを変更していた。有効な防衛施設の距離間隔。効果的なトラップの位置。不均等ではあっても適切だと思われる壁の並び。細々としたことにまで気を配った。ここまで考え抜いて、それでどうしようもなかったときは、もう本当にどうしようもないのだ。そして一週間ぶりにやってきた「嵐」は、どちらかといえば「本当にどうしようもない」類の「嵐」だった。全くもって、という感じ。

 タウンホールの屋根ののぞき窓から「嵐」の予感を察した村人が、村全体に避難警報を出した。どこからともなく村の住人たちが姿を表し、タウンホールの中になだれ込んできた。