鴎外記念館_正面文京区の施設として去年の11月に新しくできた、森鴎外記念館に行ってみました。国立国会図書館の関西館を設計された、陶器二三雄さんの事務所の作品です。
全体として良くまとまった、細部に至るまでクオリティの高い現代建築、だと思います。

素材の特性を良く理解している故に可能な、ヴォリュームの力強さ。計画性の高さ故に成り立つ、ミニマルな細部。スイスの建築家Peter Zumthorを思わせるような質の高い建築ですね。
写真映りはインパクトが強いのに、実際に見に行くと??と思う現代建築も多い中、こういうしっかりとした仕事を見ると嬉しくなります。文京区は大変良い買い物をしましたね。
カメラを新調してたくさん撮りましたので、調子に乗ってたくさん載せてみますね。

鴎外記念館_アプローチこれが団子坂からのアプローチです。よく見ると三角形に上のヴォリュームがずれて前に出てきます。
厚みのある「レンガ」という素材だから出来る、シャープでシームレスな造形ですが、上のヴォリュームを突き出させることで、レンガが「積まれる素材」であることから少し逸脱しています。思いっきり逸脱することもできますが、大きくは逸脱しない。この程度が本当に巧いと思います。



鴎外記念館_エントランス大きなステンレス両面貼の自動ドアを入って正面。この正面の壁はおそらく意図的にコンクリートの下地調整を甘めにしてあって、上から降り注ぐ光に対して微妙なゆらぎが生じるようになっています。見せ場だけに迷うところですが、森鴎外の生涯を語る「正面」としては、確かに揺らぎのないパキッとした面で見せるよりも良かったのではないか、と思いました。



鴎外記念館_受付その壁の横にある受付です。この場所はミュージアムショップも兼ねていて、鴎外の著作などが売られています。このスペースは一見コンクリートの壁の中に木材が嵌めこまれたような不思議なスペースに見えます。見てみますと床はもちろんフローリングですが、床以外は木調の塩ビ系シート(ダイノックシート同等品)を使っています。この素材の選び方がこうした枠を消したような見え方をつくるときのポイントになっています。



鴎外記念館_枠横の枠は人の目に近いということでスチールか何かで細い枠を作ってシートを巻き込み、コンクリートの壁にぶつけていますが、天井は最後のコンクリートの厚さ分だけシートをコンクリートの上に直貼りして納めています。こうすると、ほとんど出隅で異素材が入れ替わるような、一見不思議で、現代的な表現になります。塩ビ系シートですので、巾木がなくてもなんとか納まりますし、ますますエレメンタルな表現になります。


「枠のない建築」ですね。
現代建築はこうして結構一生懸命「枠」を消そうとするものですが、枠を消すにもきちんとした作法というものがあるのだな、と考えさせられます。
細かいですが、右の方にチラッと見えている、使わないときは壁面に収納できる「傘立て」も個人的に結構ツボでした。ただ、雨が降る可能性もないような今日みたいな日には仕舞って下さい。。。(笑)

鴎外記念館_旧玄関側これは実際に森鴎外が出入りした南側の玄関です。南側は地形的に尾根道のようになっていて、下に区立文京八中や区立汐見小学校が面する陽当たりの良い綺麗な道となっていますので、当時でも団子坂ではなく、こちらから出入りしたくなるのは良く分かります。門の前の石や大きな銀杏の木が森鴎外が実際に住んでいた「観潮楼」の時のまま残されています。



鴎外記念館_車椅子駐車場この玄関横の車椅子駐車場のマークが結構凝っています。石の舗装の中に埋め込まれているのは、御影石の水磨きでしょうか。こういうところに気がつくと自分でも呆れますが、この敷地に余裕が無い中、周囲に馴染むようにこのマークを入れるというのは結構重要な配慮だと思います。



なんだか、いろいろ絶賛してしまいましたが、他の細かい点も含めて本当に良い建築だと思いました。
絶賛し過ぎもバランスが悪いので細かいことを言うと、壁と床の取り合いが徹底して壁勝ち、時には床の方にスリットが切られていて(空調の吹出しか何かかと思いますが)、巾木がないデザインとなっていますので現状は掃除するのが大変かもしれません。
ただ巾木かあるいは雑巾摺かみたいな議論で良く思うのですが、施設の掃除の仕方も人力で掃除機をかけるのではなく、将来的にロボット掃除機ルンバみたいになっていくのだとしたら、また蹴飛ばした時にできる黒ずみがなんとか掃除可能であるなら、別にこれでも構わないのではないかと思います。

中にある「モリキネカフェ」も庭が見えて大変落ち着くスペースです。本格的な調理はできないカフェとして設計されているらしく、あまりメニューに種類はないのですが、飲み物の他には「文人銘菓」が食べられます。僕は「吾輩は猫である」クッキーみたいのをいただきました。猫の形で可愛かったのですが、温めるだけでもせめてもう少し品数を増やせる気もしますね。
文京区さん!カフェの充実にもう少しだけがんばってください!

建物のことばかりで言い忘れましたが、もちろん森鴎外の展示も映像など充実していて面白いです。建築を志す方は見に行っても損のない建築だと思います。