浜名湖ボート転覆:中1死亡、事故調査報告書 県教委の責任指弾 えい航、職員に訓練なし /静岡
毎日新聞 2012年1月28日(土)10時28分配信

 10年6月に浜松市の浜名湖で愛知県豊橋市立章南中の西野花菜さん(当時12歳)が死亡した手こぎボートの転覆事故で、国土交通省運輸安全委員会は27日、事故調査報告書を発表した。訓練を実施した「小学館集英社プロダクション」(東京都)と県教育委員会に安全体制の整備などを勧告した安全委は、「安全対策を把握していなかった」と県教委の責任を厳しく指摘した。【平塚雄太、仲田力行】
 報告書は、(1)乗船していた生徒らの体重の違いで左に傾いていた船に、雨水や波しぶきがたまり(2)風上に対し斜め方向にえい航されたためさらに湖水が流入して船が左に傾き(3)右舷側に座っていた生徒がバランスを崩し左舷側に移動した−−と転覆の原因を分析。悪天時の航行と、訓練中止後の「県立三ケ日青年の家」所長による無理なえい航が事故につながったと判断した。
 事故当日、浜名湖を含む遠州南地域には大雨や強風などの注意報が出ていた。転覆約30分前に風速8〜10メートルが確認されている。報告書では、警報発令時のみ訓練中止を定めた同青年の家の指導マニュアルを、「適切な内容となっていない」とし、天候悪化に対し「早期に把握して慎重に判断していれば、事故の発生を回避できた可能性がある」と述べた。
 また、「救助体制等を危機管理マニュアルに定めておらず、青年の家の職員に対してカッターボート(手こぎボート)のえい航訓練も行っていなかった」と指摘。転覆船をプレジャーボートでえい航した同青年の家所長が「えい航に関する経験がなく知識が乏しかった」ため、船内にたまった水を排水させず、風上に向かってえい航を続け事故を起こしたと分析した。
 報告書を受け、小学館集英社プロダクション広報課は、「再発防止に向け県と協力しマニュアルを作成していく」と話した。また、県教委は今回の調査結果を踏まえ、利用者と同青年の家が事前に打ち合わせることなどを盛り込んだ安全対策マニュアルを現在策定中だという。安倍徹教育長は、「内容を真摯(しんし)に受け止め、安全確保に万全を期していきたい」とコメントした。
 事故を巡っては、県警が業務上過失致死容疑で同青年の家所長ら訓練に関わった関係者を調べている。

1月28日朝刊

浜名湖でボート転覆、1人死亡=注意報の中、中学生体験訓練―19人は救出・静岡
2010年6月19日0時34分配信 時事通信