桜宮高、脱体罰へ模索…生徒自殺23日で1年
2013年12月19日 読売新聞

 大阪市立桜宮(さくらのみや)高校(大阪市都島区)で、バスケットボール部顧問から体罰を受けた男子生徒(当時17歳)が自殺してから、間もなく1年を迎えるのを前に、同高で19日、追悼集会が開かれた。痛ましい事件を教訓に、市教委と学校では、体罰に頼らない指導法の確立に向け、模索が続いている。

 「ボールを持つな、パスを回せ!」。今月13日、同高体育館にバスケ部キャプテンの声が響いた。この日、顧問は不在で、代わりにキャプテンが部員を集め細かく指示。部員らも気づいた点を指摘し合い、基礎トレーニングやシュートの練習に汗を流した。

 「プレーヤーズ・ファースト(選手第一主義)」。事件後、同高はこの理念をあらゆる部活指導の根底に置く。外部講師を招いて、生徒とのコミュニケーションの取り方などについて教諭らに研修を実施。各部の顧問には、練習目的を選手に丁寧に説明するなど、選手の立場や考え方を尊重した指導法の徹底を図ってきた。角芳美教頭は「選手らが練習の意味をしっかり理解するようになり、自ら考え、互いにアドバイスし合う場面も見られるようになってきた」と手応えを語る。

 部顧問が長期間“実権”をふるい、周囲が口を挟みにくくなっていたことが体罰の温床になった、との指摘を受け、組織にもメスが入った。前全日本女子バレーボール監督の柳本晶一さんを同高の改革担当顧問に迎える一方、今春の人事異動で全教諭の3分の1にあたる13人が転出した。転出者のうち、10人が在籍10年以上、6人が「主顧問」として運動部の指導にあたってきた教諭だった。

 11月には、同高の運動設備を開放、五輪メダリストを招き、地域住民らとともに汗を流した。学校を地域に開かれたスポーツ拠点に生まれ変わらせようという試みも進む。事件を受けて募集停止となった体育系2学科も、来年度から統合され「人間スポーツ科学科」として再出発する。

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 この日の追悼集会には、生徒と教職員、保護者ら計約900人が参加。男子生徒の冥福を祈って黙とうし、再発防止を誓う大継(おおつぐ)章嘉校長の話に静かに聞き入った。この後、中明香(さやか)・PTA会長が「保護者、学校、地域が協力し、二度とこのような悲しい出来事が起こらないよう、努力していく決意です」と追悼の言葉を述べた。

 桜宮高体罰事件 バスケ部キャプテンの2年男子生徒が、顧問の男性教諭(懲戒免職)から体罰を受けた翌日の昨年12月23日に自殺。教諭は今年9月に大阪地裁で傷害、暴行両罪で懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受け、判決が確定している。遺族は自殺の原因は体罰だったとして、大阪市を相手取り損害賠償訴訟を起こしている。