ハイパーインフレは起きようがない

政府債務だけを指摘し、日本国が破綻するという論調はA面である。B面には日本国民から資金を絞り取りたい誰かがいるということになるのだが、B面の黒幕は誰かを追及するうえでも、国の借金とは何か、ということを今一度検証してみる。

国家破綻は10年前(引用者注:本書が発行されたのは2010年)からいわれていたことで、その間日本は約2倍の国債を発行しても、いまだデフレであり、金利は低水準のまま変化もなく、為替市場では円売りにもあっていない。

これだけ国債を増発すれば、やがては暴落しハイパーインフレに襲われると恐怖感を煽るが、戦後日本のハイパーインフレは卵や米といった基本的な食料品など、実際にモノが不足した状態によって引き起こされたものであり、現在のようにモノが溢れている状況ではかつてのようなインフレは起きようがない。 

それでも戦争などに巻き込まれれば、あるいはかつてのABCD包囲網のように石油の輸出がとまるなどすれば可能性はある。

もしくはギリシャのように、海外勢の日本国債占有率が劇的に拡大すれば、ヘッジファンドのターゲットとなって破綻に追い込まれる可能性はあるが、そのような状況になるまではまだまだ時間がかかる。

サブプライム以降、それこそ海外からの借金で賄っている米国が大量の国債を発行し、すわ米国債は暴落かと騒がれても、今のところはその気配がないように、なかなか国債の増発だけではインフレにはなりにくいものなのである。

そもそも長期的な視野に立ってみれば、公的債務の残高が増大していない国はない。世界全体の経済規模は年々拡大しているのであるから、それにつれて負債残高のほうも増えていくのは当然である。

30年前の政府の歳入は少ないので、歳出も少ない。極端な話、その30年前と比べれば本年の歳出は莫大となる。経済成長をしていれば年を追うごとに政府の債務残高は「過去最大」となるのは自然であるにもかかわらず、単純に金額だけを取り上げそれ以前の年との比較をして、いかに過大であるかを指摘する。それを報道するメディアは「木を見て森を見ず」では片付けられまい。恣意的な何かが背後で働いていると思われてよかろう。

国の借金を考えるうえで重要なポイントは、誰かの債務は、必ず誰かの債権である、という点である。経済全体で考えれば、借り手と貸してが必ず存在し、プラス・マイナスゼロなのだ。

日本国内の状況を考えれば、現在の日本では日本国民が日本国債の94%を買っているのであるから、国民から政府へ資金が流れている、ということになる。そして、政府が国債を発行し、政府支出を増やしているということは、利払いを通じて、あるいは社会保障や公共投資を通じて、借金をしている政府からその資金の貸し手の国民へと資金が還元される、というのが基本的な考え方である。いうなれば、政府と国民間での資金のキャッチ・ボールをしているだけなのであり、政府の借金=国民の資産なのだ。

政府が借金をすればするほど、国民は利払いだけでなく、水道や道路といった将来にわたるインフラを利用でき、公共事業の発注で企業の雇用が増え国民の収入が安定するなど、社会保障を含めてメリットを享受できるのである。日本国民の資産は政府支出によってさまざまな形で増え続けるのだ。であるから、国の借金=国民の資産、国内で消化される国債は子供や孫にまで将来に続く試算である、ということを念頭に置いておく必要がある。