kuko純平は8階でエレベーターを降り、805号室のドアをノックした。ドアがガチャリと開いた瞬間、美和がにっこりと笑顔で迎えた。広々とした部屋に入ると落ち着いた雰囲気の照明が一流ホテルらしさを醸し出していた。やや興奮気味に白いソファーに腰を掛けると、社長の美和が小さな箱を取り出してテーブルに置いた。

「純平君、これ、私からのプレゼント、無理やりキャディマスターを押し付けたけど、あなたが頑張ってくれているので支配人もとても喜んでいるようよ」

「あっ、はい、たいしたことが出来なくて恐縮しています」

「謙遜すること無いわよ。他の社員からもあなたの評判はいいのよ。それよりそのプレゼントの箱の中、開けて見て!」

「はい、プレゼントですか?なんか照れくさいです」と言いながら、純平は小さい割にはずしりと重い箱の中身に胸がときめいた。リボンを外し、黒い木箱の蓋を開けてびっくりした。

文字盤が黒いロレックスのターノグラフがその中に入っていた。

「社長、こんな高価なプレゼントをいただいてもよろしいんですか?」

「お気に召して、あなたのスポーティな腕ならとても似合いそうよ」

「お気に召すにもなにもこのような時計は、ボクには不釣合いです。もったいないですよ、社長?」

「純平君、いいのよ、ほんの私からの気持ちよ。それにあなた明後日誕生日でしょう」

「どうして、ボクの誕生日をご存知なんですか?」

「幹部社員の誕生日ぐらい分からなければ、人は使えないわよ」と社長の美和は笑いながら言った。そして、人を使うには気遣い心配りが大切だと言うようなことを純平に教えているようだった。

それにしても100万円以上もするロレックスの時計がプレゼントなんて、あまりにビック過ぎて気持ちが動揺した。

 

「とにかく、これからもその時計を見て、私のことを応援してね。どうしてもこのゴルフ場を成功させないと伯父の藤堂会長に対して申し訳がたたないの。それと支配人の白鳥さんには、6月から私の本社の営業統括本部長で戻って来てもらうことになるのよ。流通業界もカタログ販売からインターネットやTV広告に進出しないと経費が嵩んで利益がなくなってしまうわ。白鳥さんは、広告宣伝のプロだからその手の企画は一流よ。だから純平君には、4月から副支配人をやっていただくわ」

「えっ、ボクがゴルフ場の副支配人ですか?」

「大丈夫よ。運営面に関する経理的なことは、私と統括部長の黒岩がカバーするわ。あなたは、ゴルフ場全体の従業員を統括して、お客様から評価を得るようなゴルフ場にしてくれればいいのよ。支配人としての帝王学は、今の支配人の白鳥さんから6月までに教われば十分出来るわよ」と、洗脳の神様として幹部社員に定評のある女社長の美和にさらりと納得させられてしまった。 さすがの純平もいきなりの副支配人職に戸惑いを持った。

「それでね、純平君、6月以降は、あなたが支配人をやるのよ。副支配人から支配人になる期間は2ヶ月間だけよ。いいこと、不安を持つ前に、与えられた命題にポジテブに自分を啓蒙することが大事よ。出来ないじゃなくって、やり遂げるという強い意志が必要なのよ。高いハードルを飛べないと思って諦めた人は、一生経っても飛ぶ意思がないから飛べないわよ。大事なことは、一生掛かっても必ず飛んで見せると言う強固な意思が必要なの。凡人と偉人の違いは、まさにそこにあるの。いいこと、私は、あなたにその力量があるから見込んでトレードしたのよ。最初にキャディマスターにしたのは、ほんのあなたへの力量テストだったのよ。キャディマスターと言う大所帯の従業員がいる部署で、特に口煩い女のキャディをどう統括して、リーダー職を全う出来るかが問題だった訳なの。そのテストにあなたはパスしたの。支配人の白鳥さんの太鼓判があなたに押されたってことよ」と社長の美和は、満足そうな笑みを浮かべて純平に視線を合わせた。

正直、純平には自信はなかった。しかし、社長の美和の堂々とした説得に、純平は自分の可能性にトコトン挑戦する気持ちになっていた。

「ところで純平君に質問していいかしら?」

「何でしょうか?」

「社長としてではなく、女として聞きたいの」

「はぁ~? 女性として、ですか・・・?」

「私は、40歳になるまで男性と言うものを受け入れなかったわ。婚約相手に乱暴されて男と言うものが信用できなくなったのも事実よ。男の人は、愛が無くてもSEXの出来る動物だとは理解はしていたけど、まさか、来月結婚する相手にまで男のエゴで陵辱されることが許されなかったの。私は、男の玩具やアイテムではないわ。女として、人間としての尊厳を結婚相手には理解して貰って結婚したかったの。それを無視して男の欲望のために私の体をオモチャにする男の嫌らしさが許せなかった。だから結婚も直前で破談にしたの。でも、あなただけには、なぜか私の女としての大事なものをあげていいと思ったの。なぜだか分かる?」

 純平は、美和の唐突な話に呆然としながら答えた。

「いっ、いえっ・・・・分かりません」

「あなたの従順さに惹かれたのよ。この人は嘘をつかない。私に対しては従順に仕えてくれると信用できたからなのよ」

「すいません。私も煩悩の塊です。そんな偉そうなことは言えません」

「オッ、ホ・ホッ・・・正直なのね」と美和が笑った。

「ところでもうひとつあなたに質問したいの。あなたに初めてバージンを捧げて、結婚も諦め、女としてもけじめをつけたつもりが、最近どうしても夢を見てしまうの。自分の口から言うのはとても恥ずかしいけど、あなたのあんなに大きく腫上がった物が私の体の中に入り込むこと自体が信じられないの。最初は痛いだけで、そんなに小説で読むほどいいものではなかったわ。

でも、私も女なのかしら・・?

あのクリスマスのイブのことが忘れないの。夢の中で、あなたの大きな物が私の体の中で暴れ回るの。最近、そんな夢ばかり見るのよ。実は、私は淫乱な女だったりして・・・・恥ずかしくて、悲しくって、切なくなってたまらないのよ。お願い、明日、イタリアに発つ前に、もう一度あなたにあのイブの夜のことを思い出させていただけないかしら?」

高貴でプライドの強い美和にしてみれば、こんな恥ずかしいことを口に出せるはずがない、しかし、純平だけには裸のままの素直な自分が包み隠さず出てしまう。これが恋心なのかと思う反面、今まで閉ざされた女の性に火が点いてしまったように、美和は制御不能な自分の火照る体に嘘が付けなくなっていた。

一方の純平は、正直悩んだ。佳奈とはすでに婚約もしている。

これは不倫なのか、仕事なのか?それとも神様の悪戯か?

美人女社長の体を自由にすることの快感が試行錯誤する中で、帰りを待つ佳奈の顔も浮かんだ。表裏する思いの中で葛藤してみたものの、それに反した純平の愚棒はすでに勃起を始めていた。

<続く>

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