純平が佳奈の待つアパートに帰った時は、時計の針が午前3時を指していた。
社長の美和の話が出来るはずも無く、戸口の足音に気づいて起きて来た佳奈に「遅くなっちゃったよ、佳奈。寝ていて良かったのに・・・」と純平はその場を繕った。
佳奈は、何の疑いもせずに「こんなに遅くなるまで純ちゃんもたいへんね」と同情すらしていた。
後ろめたい純平は、「佳奈、今日は疲れたから風呂に入らないでこのまま寝るよ」と言った。
純平の着替えのパジャマを手にした佳奈は、着替える純平の衣服を片付け洗濯場に置いた。
いくら従順な佳奈でも純平の衣服についた女のコロンの匂いは分かる。
どうしてこんな夜更けに帰って来て、女のコロンの香りがするのか佳奈は少し疑心暗鬼になった。
「純ちゃん、何かいい匂いがするけど、最近オーディコロンつけているの?」
「ああ、今日のお客さんが化粧品会社の社長でいろんな化粧品のサンプルを試されたんだよ。支配人なんか女性のコロンをいっぱいつけられて奥さんに疑われたかもね?ひょっとして、佳奈もボクのこと疑っているのか・・? やきもち焼いて・・・本当にお前って可愛い奴だな」と純平は白々しい嘘でまたもその場を繕おうとした。
佳奈の手にした洗濯物には女性の髪が2本も付いていた。
佳奈は、純平が浮気しているなんて信じたくなかったが、明らかに長い髪の毛の2本は女性のものだった。
「純ちゃん、長い髪の毛が2本も付いているけど、これは女性の髪の毛だよね?」「えっ・・?、そうだ・・・頭皮マッサージした時に付いたのかな・・・。今日の化粧品会社の社長は、エステもやるんだよ。ボクが実験台にされちゃったんだけどさ。結構気持ちよかったよ。佳奈、そんなつまらない心配するなよ。ボクが愛しているのは佳奈だけだよ。つまらない心配して二人の仲に亀裂が入って喜ぶのは、佳奈の元カレだけだろう」と言って純平は、佳奈を抱きしめキスをした。
そして「もう遅いから寝よう」と言って、純平はベッドの中で佳奈のネグリジェを全部脱がし、素裸にして激しく抱いた。美和とは違った感触が股間に感じてくる。
佳奈の性感帯はすべて熟知しているので10分も立たないうちに佳奈の体は悦楽の境地に果てた。
純平は、放出しなければ疑われるのでわざと佳奈の腹部に白い液体をばら撒いた。
愛する女には「お前が一番大好きだ」と思わせることが肝心で、どんな最悪の場面で浮気がばれたとしても、それを誤魔化す答えの二つや三つは持っていた。るのが順平だった。
騙していることには違いない。しかし、愛されている女に他にも女がいること悟られたら女を深く傷つけることになる。嘘でもいいから愛していると思わせた方が、余程も女は幸せであることは分かっていた。
ロレックスの時計のプレゼントは、車のダッシュボードに隠して置いて良かった。これが見つかった場合は、言い訳をするのに返す言葉を失ったかも知れない。女にも男にも夢を見させてあげるのが純平の特技の真骨頂だった。
ホストをやれば十分に女を喰って生きていくことも純平には容易にできただろう。しかし、純平は女を食い物にすることだけはポリシーが許さなかった。好きな女にはどんなに貢いでやることも厭わない。仕事で稼いで自分の周りに何人かのいい女を侍らすことが、純平のパワーの源と真骨頂でもあった。
不倫も浮気もすべて計算済みでする。女性から見れば最低の男のように思われるだろう。しかし、夢を見たい女がいる限り純平の周りから女性関係は消えることは無かった。
親から貰ったイケメンといつしか身に着けたヨイショの特技は、誰にも真似の出来ない域までに達していた。
思考に関しては最高にポジテブでマイナス思考という文字は、彼の頭の辞書には無かった。
運を引き寄せる技と女をナンパするテクニックは持って生まれた純平の天性でもあった。
<続く>

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