2005年05月16日 00:38 [Edit]

こうもりの言い分

Matzさんのところには実は元記事へのTBを飛ばしたのだが、最近またTBが跳ねられる。そのMatzさんが幸いにも私の記事を見つけてくれた。

Matzにっき(2005-05-14)
うーむ。まあ「コードを書かない人間に」という表現だと直接コードを書かない人間すべてを排除しちゃうんで表現としてはイマイチで、実際は「コード書きの気持ちがわからない人間に」くらいが正解ではないだろうか。

いいえ、これは「コードを書かない人間に」で正解。残念ながら私は心が黒いのか、「気持がわかる」が「わからない」。人、いや私に出来るのはせいぜい「わかったつもりになること」までで、自分の気持ですらわかったという自信はない。

むしろ理解を競うのであれば、「コード」そのものほどわかりやすいものはない。環境さえ再現すれば動作も再現するのだから。「コード」ほどの明快性と整合性を「気持」に対して適用する性善説を取る事は私にはできない。

小飼さんはTim O'ReillyやLawrence Lessigのことをあげているが、彼らは自分ではコードを書かないかもしれないが(ただし、Timはコードを書く人のはず)、コード書きの気持ちはかなりわかってると思う。

私は実はどちらも coder として理解している。そう、Lessigの方も。法律も立派な code なのだから。

> コーダー<としても>OSSに関わってる実感から行けば、コード書きなんて一割いかねえよ、必要な作業の。
という言葉も、「必要」が「ビジネスに利用するに十分なクオリティを確保するため」のものであると考えれば納得できる。個人的にはそれでも1割よりもうちょっと多いとは思うけど。

もっと簡潔に「自分以外の誰かに使ってもらうために」必要だということ。また、これらの作業は「コーダー」が兼任しているケースが多く、それがコーダーにとって少なからぬ負担となり、そのコードの「滅亡」につながっているというケースがものすごく多いのも見逃せない。

こういうった「雑務」をコーダー以外にお願いするというのは傲慢になってしまうのだろうか?「フリーソフトウエアの世界を確かに広げた実感」は、コーダーでなければ共有できないのだろうか?

嘘がなく、納得できる内容のはずの言葉なのだが、どうにも私の心に響くのだ、ネガティブに。
おそらく、以下の点について言及が無いからなのだろう。

言及は、TBがついた後でいいと考えた。あのEntryは「John Orwantが投げつけたマグカップ」と同じだ。必要だったのは結論ではなく疑問の提示だ。だから例えばMatzさんが食いついてこなければとんだ道化になるところで、大いに感謝する次第。

* オープンソース・エコシステムによって再生産的に開発されているオープンソースソフトウェアはまだほとんどない*1。

この下りには正直驚いている。gcc なしで perl は誕生したのか? perl なしで python 、そして不遜ながら ruby は誕生したのか?クローズドなものの「再発明」も含めた「再生産」はオープンソースの原点ではなかったのか?もちろん

割合は少なくてもコードが無ければエコシステムが持続できない。エコシステムにとってコードがクリティカルな存在であることはこれからも急激には変わらない。

この部分には異論はないのだけれども。

* オープンソース・エコシステムによって食べていけているプログラマは増えている。 私もそうだ。それは良いことであり、ありがたいことだが、 エコシステムがなくなってオープンソースソフトウェアがビジネスに使われなくなったら 致命的かというとそうでもない。プログラマにとってエコシステムはクリティカルではない。

もしこれが正しければ、世のソフトウェアは「俺ウェア」だけでいいということになりはしないか?ただネットにソースを転がしておくだけでも費用は発生しているのである。たとえコーダーがそれを負担していなかったとしても。私がsourceforgeの「成功」を素直に喜べないのはそこに理由がある。

* フリーソフトウェア・プログラマが幸せに開発を行うためには、 コンピュータ、インターネット、小さくてもよいコミュニティ、 自由な時間とわずかな食い扶持とがあれば良い。 オープンソース・エコシステムが亡んでも フリーソフトウェア・プログラマが不幸になるとは限らない。

それが出来るほど「脳内領域」が大きく、「俺プログラム萌え」だけで癒される人は極希少だというのは指摘させて頂く。Matzさんがその数少ない例外である可能性が大であることを含めて。天才の尺度を凡才に押し付けるのは天災である。

* エコシステムの存在はプログラマを楽にしているとは限らない。 給料を払ってもらえてる人はもちろん楽させてもらっているけど、 その他のことをエコシステムが肩代わりしてくれているわけでは実はない。 むしろ、エコシステムの一部である圧倒的な「勘違いしたお客さん」が プログラマの負担を増やし続けている。

この部分は禿同であり、あのEntryだけでこの話題をおひらきにするつもりない。これに関しては別のEntries(複数形)が必要だと考えている。「スーツを皮を被ったたかりども」に対するDan the 「ルサンチマン」の咆哮は今しばらく待って欲しい。

「あなたはコーディングに専念してください」とか 「ドキュメント整備、広報、伝道など引き受けますから」なんて話はついぞ聞いたことない。 助けてくれる人もたくさんいるけど、 それはほとんどの場合ビジネス臭の強い「オープンソース・エコシステム」からではなく、 手弁当の有志である。わずかな例外を除くとね。

この点も悲しいかな同意せざるを得ず。とはいうものの、手弁当を用意できるのも食い扶持があるからというのも事実。少なくとも手弁当を用意できるだけの食い扶持を払っている人たちに、社交辞令でもいいから「いつもお世話になってます」ぐらい言えないのか?

こういう事実もあるところで、
> コーダー<としても>OSSに関わってる実感から行けば[snip]
と言われると、はなはだしく萎えるのだ。嘘じゃなくても。私、上司からこういう言葉をいただいたら、その日のうちに転職を考えます。

しかし上司であれば、「コード書いてないんだから口をはさむな」と部下に言われたら、その場で首をいいわたすしかない。それがどんなに優秀な部下であっても。おかげでかつて、どれだけ優秀なコーダー達を採用試験で落として来た事か。泣いて馬謖を斬りまくりである。

もちろん心の中でコーダーがどう思おうとそれは自由である。部下は上司を心中で陵辱し惨殺する権利があるし、上司にはそれを甘んじて受ける義務がある。しかし部下がそれを行動に移したら、即座に斬首するのもまた上司の義務である。

そういう意味で、こういう発言をしてしまった小飼さんは、ご自分が想像する以上に「コード書きの気持ちがわからない人間」になってしまっていると見える。少なくとも私からはそう見える。たとえご自身がコードを書くことがあっても、本人そのつもりが無くても、他のプログラマに「わかってもらえてる」という信頼を得られない言葉を吐く時点でかなりヤバい。

「気持」に関しては上述。すでに「コーダーのためのガード下の焼き鳥屋」はヴァーチャルにもリアルにも存在する現在,必要なのは「あたたかい理解」ではなく、「冷たい現実の認識」ではないのか?

これらに小飼さんが気づいてないはずはないと思うのだが、怒りのあまりうっかりしたか、私が思っている以上に小飼さんの心がスーツ化しているということか。あるいは(元々の三浦さんのエントリがそうであるように)単なる表現上の問題か。

....ここまではある意味「想定の範囲内」ではあった。実にMatzさんらしい、真摯かつ暖かい回答であった。私みたいな腹黒無神論IT成金野郎には「想定内」でも「望外」の待遇だ。これ以上求めるのは図々しいにもほどがある。だけど

だいたいなんでオリがこんなこと言わなきゃならないんだYo?

を「わかってもらえ」なかったことだけが悲しい。

Dan the Man in Limbo


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に対して、 小飼さんから反応をいただく。 読んでまず、私の表現の不備に気がついたので訂正しておく。 オープンソース・エコシステムによって再生産的に開発されているオープンソースソフトウェアはまだほとんどない この表現は自明ではないし、実際に小飼さんにも私の
[OSS] Re: こうもりの言い分 【Matzにっき】at 2005年05月16日 10:07
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