2005年09月28日 21:11 [Edit]
Everybody is Nobody Sometimes
八田さんの主張だけだと、現代のエゴマックスな人々を呼び込むには不十分かも知れないのでEntry.
ZDNet Japan Blog - 八田真行のオープンソース考現学ここにスーパーハッカーと凡人がいたとしよう。
と来て、
種を明かせば、これがいわゆる比較優位の原理だ。
というのは、実は経済学では有名な話で、なぜ100円ショップの商品を中国から調達して、高品質の鉄を中国に売るのかということの説明にもなっている。しかし、これだけだと
Rauru Blog 》 Blog Archive 》 オープンソースと雑用欠けているのは「人手が足りていない分野に対して自動的にインセンティブを傾斜配分するためのメカニズム」である。
を得るには足りない。ハッカーと凡人が分業した方が「効率がいい」というのは、ビジネスの世界では充分なインセンティブでも、オープンソースの世界では残念ながら不十分だ。効率よく分業した結果、より多くの成果物がより迅速にリリースできたというのは、複素経済学上の実軸に対する効用があっても、虚軸に対する効用が不明瞭であり、虚軸を主な報酬とするオープンソースの世界では効用が薄いのだ。
では何なら報酬となりうるか?
それは、各参加者の「成長」なのではないか。
どんなハッカーでもはじめからハッカーだったのではなく、またどんなハッカーも雑務から完全に開放されることはない。Larry Wallだってゴミ出しはするのである。むしろ、こちらを強調した方がよいのではないか?
実際のところ、昨今のオープンソースでは、「ハック」と「雑用」は明白に分ける方向ではなくむしろ統合する方向に向いている。その大きなきっかけが、ユニットテストとドキュメンテーションだ。これらはプログラム本体とは別に開発やリリースされるのではなく、ひとまとめのDistribution(配布物)としてメンテされるようになってきている。特にドキュメントに関しては、PerlのPOD以来、javadocやRubyのRDのように、ソースに直接書くのがむしろ主流になってきている。
そこでは分業は行程毎ではなく、機能毎になされている。垂直分業ではなく水平分業がオープンソースのデファクトスタンダードなのだ。垂直分業では単能、すなわちハックはハック、雑用は雑用と分けるのが分業だが、水平分業では、基本的にその「モジュール」に関する作業は、ハックから雑用まですべてモジュールオーナーの仕事だ。
一見経済合理性から外れそうなこちらの方がオープンソースの世界で主流となったのは、その方が「虚報酬」が大きかったからだと思われる。その方が「達成感」が大きいのだ。もちろん世の中には垂直分業でも充分達成感を得られる人々もいるが、売り上げという指標なしに単品、たとえばネジばかり作っている人が達成感を得るのは難しい。達成感を得る最も手っ取り早い方法は、曲がりなりにも完成品を出す事だからだ。
実際、オープンソースの世界では、ハックバリューが上がると完成品ではなくむしろ部品の製造管理の方に回ることが多いようにも思われる。CGIを書きなぐるのとCPANにアップロードするのとどちらがより高度な技能を要するかは言うまでもない。
だから、むしろ「凡人」の人は、「派手」、すなわち目に見える完成品から出して行くことをむしろ進める。その方がわかりやすいしつきあいやすい。「部品」を手がけるのは、名を売って力量を充実させてからの方がむしろいいだろう。
その観点から行くと、ドキュメンテーションというのは「凡人」というより「初心者」に最もお薦めの入口である。なにしろ一番「目立つ」。そして利用者はとにかくハッカーからは「とてもよろこばれる」。こうして利用者の気持ちもハッカーの気持ちもわかるようになって初めて「部品系」の地味で、しかしバグ寛容性が低い仕事にとりかかれるのだから。
Dan the (Perl5 Porter|Complex Economist)