2005年12月29日 19:36 [Edit]

神龍はもういない - 画評 - ドラゴンボール

だめだよ。まだブウが残ってる。

naoyaのはてなダイアリー - ドラゴンボール全巻
ドラゴンボールを全巻買いました。セルが完全体になりました。

そう。悟空の命と引き換えにセルを倒してからも(オリジナル35巻)、さらに7巻も続くのだ。

作品そのものの評に関しては、夏目房之介の「マンガの深読み、大人読み」という大傑作があるのでここで蛇足、いや神龍に蛇の尾をつけるようなことはしない。しかし「傑出した才能に対して、業界が何をしたか」という問題に関しては、今なお「ドラゴンボール」は問題をつきつけている。

なぜ、鳥山明は42巻という長きに渡ってドラゴンボールを描かされつづけたのだろう?

実のところ、ドラゴンボールは18巻ぐらいで終わってもよかったのだ。その証拠はいくつもある。マジュニアと戦った天下一武闘会で、チチの手を取って筋斗雲にのって去って行く悟空の下の左隅の駒で、亀仙人が「まだ最終回じゃないぞよ。もちっと続くんじゃ」と言っていたのをはじめ(17巻pp.35)、鳥山明本人による「連載終了予告宣言」は、強敵との戦いに決着がつく都度なされてきた。上記のセルを倒した後にもやはりなされている。しかし、主人公を死なせてさえなお、連載を終了することは許されなかった。

もしその前作「Dr. スランプ」と同じ18巻程度で連載完了していたらどうなっていただろう。そうなってはナメック星人にもスーパーサイヤ人にもセルにもブウにも出逢えなかったことにはなるが、その後も鳥山氏はアラレちゃん級のヒットを続けられたのではないか?実際鳥山氏はその後短編しか出していない。ペンギン村とは天下一武闘会だけが、彼の描きたかった世界なのだろうか?読者が見たかった世界なのだろうか

正直、悟空がサイヤ人であることが判明してからのドラゴンボールは読むのが辛かった。あれでは死ぬ事さえ許されない、「火の鳥 宇宙編」の主人公ではないか。まだ好きでそうしていたのならいい。しかし鳥山氏の「心の故郷」は天下一武闘会場ではなくペンギン村だったはずだ。

夏目氏は「無垢こそ最強」だと「マンガの深読み、大人読み」のドラゴンボール評を結んでいた。しかしそれを強いられるというのは一体どんな心境なのだろう。私にはだからベジータの存在にすごい安心感を感じた。彼とて悟空の無垢を引き立てるための脇役ではあるのだが、むしろ無垢になれないホモサピエンス代表で彼はあった(サイヤ人だけどね)。

だから、最後の戦いに決着をつけた「最終兵器」が元気玉だったというのは、「もうヒーローを開放してくれ」という鳥山氏の最後の叫びだったように思われてならない。近年ここまで酷使されまくった天才というのはそうはないのではないか?

もし「終わりなき戦い」をお話の上で続けたかったら他に方法はいくらでもあったはずだ。実際ドラゴンボールより長く続いている漫画というのはいくらでもある。しかしそれらの漫画には、ドラゴンボールに見られるような「やめさせてもらえない」感はそれほど見られない。それらの漫画では例えば「ゴルゴ13」のように負荷分散のための仕組みが制作過程で用意されていたり、物語の構成も「強さのハイパーインフレ」を起こさないような工夫がちゃんとなされている。17巻の時点で分業制にしておくべきではなかったか?実際鳥山氏はゲームのキャラクターデザインも手がけている。分業が出来なかったわけがないのだ。

リアルの世界にはドラゴンボールもなければ神龍もなく、スーパーサイヤ人もいないのだ。業界の設計はそういう前提のもとになされなければならないはずなのだ。英雄ばかり待っていると、Mr.サタンがまかり通るようになる。いや、実際そうなりつつあったのかも知れない。ドラゴンボール最終巻が出たのは1995年。麻原が超人ではなくMr.サタンだったと判明した年でもあった。

英雄を待ち望むより、少しでも大きな元気玉を提供できるようになりたいものだ。

Dan the Inflated Man


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この記事へのコメント
わかるけど、でも続けてくれて嬉しかった、というファンの気持ちもあるとおもう。辛くても続いてくれたからこそ、ファンは楽しめた。逆に、たとえば幽★遊★白書は、確かにすっきり終わったけど、なんかあっけなくて寂しさが残ったものなあ。
作家のことを考えると、確かに終わらせてあげたかった。でも、終わってほしくないというファンの気持ちもある。
ファンとしては、辛くても続けてくれた鳥山氏に、ただ感謝。
Posted by すべりしらず at 2005年12月29日 21:13
 すいません。読み返してみたら、かなり頭の悪いコメントになってしまっていますね。

 私の言いたかったのは、要するに、ファンは軽々しく「連載をやめるべきであった」とは言えないのではないか、ということです。(もちろん小飼さんがそう言っている、というわけではなく、一般的にそんな意見があるので)
Posted by すべりしらず at 2005年12月29日 21:54
ドラゴンボールはそのタイトルが示すとおり、ドラゴンボールがそろうまでで終わる話だったはず。天下一武闘会がすでに引き延ばしではないかと。
止めさせてもらえない代表といえば、高橋留美子さんでしょう。犬夜叉はどうするんでしょうね。
Posted by Shimo. at 2005年12月29日 23:42