経済学はじめの一冊 - 書評 - 経済学的思考のセンス
ちょっと書評しにくい本かも知れない。
しかし、「経済学はじめの一冊」と言われたら、本Entry現在ではこの本を勧める。
「この一冊」ではなく、「はじめの一冊」である。この本を起点に、他の本も漁るというのがこの本に向いた読み方だと思う。
この本は、経済学の視点からは物事はどう見えるのかというのを紹介した本であり、特定の問題に対して経済学的に答えを出すという本ではない。それだけに、実に多くの一見経済学に見えない設問が用意されている。各章と各項のタイトルから、"?"で終わっているものを以下に抜き出してみた。
- お金がない人を助けるには?
- 女性はなぜ、背の高い男性を好むのか?
- イイ男は結婚しているのか?
- 美男美女は本当に得か?
- 自然災害に備えるには?
- 人は節税のために長生きするか?
- 大学教授を働かせるには?
- 年功賃金は「ねずみ講」だったのか?
- 年功賃金はなぜ好まれるのか?
- 賃金カットか人員整理か?
なんだか「人力検索はてな」みたいだ。ただし、筆者が用意しているのは、解答ではなくIMHOならぬIHHEO、"In his humble economical opinion"という形を取っている。しかもそのOpinionも、「この視点からはこう、あの視点からはこう」という複数回答をしている。
「犯人はおまえだ!」的な断定的な結論を期待している人には物足りないかも知れないが、これが専門家としての良心というものだと私は思う。「数学的思考法」を気に入った読者なら、本書も「経済学的思考法」として気に入る事請け合いである。
著者はエピローグでこう述べている。
pp.223
「経済学的思考のセンスがある人」とは、インセンティブの観点から社会を視る力と因果関係を見つけ出す力を持っている人だと筆者は考えている。
「因果関係を見つけ出す力」というのは、経済学のみならぬ科学的センスといっていいだろう。だから、経済学を特徴付ける視点とは、インセンティブの目であるといってもいいかも知れない。本書の副題である「お金がない人を助けるには?」という設問は、著者が小学5年生から受けた質問であるが、筆者の答えが一筋縄ではないのは、インセンティブの視点がこの設問一つとっても複数存在するからだ。そこにあるのはお金を出す人と受け取る人だけではない。お金を出せない人や受け取らない人の視点まで考えてはじめて「お金がない人を助ける」ことになる。
pp.xiv
この本の目的は、お金がない人を助ける具体的な方法を提示することではなく、お金がない人を助けることの経済学的な意味を考えて行く事である。
その中には、「あえて助けない」という選択肢もあり得る。その場合はどうなるのか、そして助ける場合にもどうしたらどうなるのかまでは著者も述べている。しかし「どうすべきか」の手前で筆者は止めている。たしかにそれは形而上学ならぬ経済上学とでもいうべきものだろう。見事な身のほどの弁え方だ。
最後の一行
あなたはもう「経済学中毒」にかかってしまっているかも知れない。
もしかして、「経済学中毒」は「経済中毒」の最高の処方箋かも知れない。毒をもって毒を制する、というのとはちょっと違う。どう違うかは本書を読んでのお楽しみ。
Dan the Economic(al)? Animal
追伸: 著者の大竹氏もblogをお持ちのようだ。
大竹文雄のブログ: 重版決定「経済学的思考のセンス」が発売後1週間で重版することになりました。
それはよかった。「経済学」「思考法」という二つの「近頃の売れ線キーワード」を持っているとはいえ、双方ともエセやガセが多い分野でもある。「思考法」に関して言えば、前述の「数学的思考法」と同じく安心してお勧めできる一冊である。
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Posted by dankogai at 13:39│
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404 Blog Not Found:経済学はじめの一冊pp.223
「経済学的思考のセンスがある人」とは、インセンティブの観点から社会を視る力と因果関係を見つけ出す力を持って....
どれも経済学だ!【404 Blog Not Found】at 2006年08月28日 12:04
本blogでも「ダメな議論」系の書評はかなりしてきたが、そのものズバリのタイトルの本が本書である。
ダメな議論
飯田 泰之
タイトルどおり、本書は「ダメな議論」のダメ出しを、新書の紙幅の揺る限り徹底的にした本である。
ダメな議論【404 Blog Not Found】at 2006年11月09日 21:44
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タイトルどおり、本書は「ダメな議論」のダメ出しを、新書の紙幅の揺る限り徹底的にした本である。
ダメな議論【404 Blog Not Found】at 2006年11月09日 21:46
ダイヤモンド社より献本御礼。
スタバではグランデを買え!
吉本佳生
結論:スタバではグランデを買え!経済学本では「スタバではグランデを買え!」を買え!
それも今すぐココで(笑)!
書評 - スタバではグランデを買え!【404 Blog Not Found】at 2007年09月17日 05:20
年賀状と一緒に郵便受けに入っていたのがこちら。筑摩書房の石島様より献本御礼。
こんなに使える経済学
大竹文雄編
大竹文雄のブログ: ちくま新書
「週刊エコノミスト」に阪大社研のメンバーを中心にして連載した「効く経済学」が、
『こんなに使える経済学−....
アンソロジーは目次が命 - 書評 - こんなに使える経済学【404 Blog Not Found】at 2008年01月04日 22:51
著者より献本御礼。
格差と希望
誰が損をしているか?
大竹文雄
まずはグッドニュース。日本の格差問題に関する、決定的な診断書である。
続いてバッドニュース。この「病気」、進行ガンなみにやっかいだ。
診断は成った。問題は治療法だ - 書評 - 格差と希望 誰が損をしているか?【404 Blog Not Found】at 2008年07月07日 18:05
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すばらしい書評ありがとうございました。