2006年01月23日 12:49 [Edit]

たんぱく質に淡白 - 書評 - 新しい高校生物の教科書

というわけで、早速書評。点滴中に読みました。

5号館のつぶやき : 新しい高校生物の教科書
あとはこの本を一人でもたくさんの方に読んでいただけると、とてもハッピーです(^^;)。もちろん、ご批判・ご意見を歓迎いたします。

高校で教える「理科」のうち、ここ半世紀の間で最も進歩が著しいのが生物であろう。特に分子生物学は日進月歩。当然教科書もそれに追随しなければならないが、新しいものが増えたといっても古いものを削り落とすわけには行かない。そのバランスが難しいところだ。なにしろ生物学は、それこそ役所で言えば厚生労働省。環境から遺伝子工学まで、その首尾範囲はえらく広い。

その点では、同書は「高校生物」とはなってはいるが、高校生以外の生物に詳しくない一般人が、生物学を鳥瞰するにはもってこいのサイズになっている。「メンデルの法則からDNAまで」(同書の項目より)一目で眺めようという場合、本書は最適だろう。また「生物」に関しては一応全網羅してあるので、「なんとなく生物な疑問だけど、何に分類されるんだっけ」といった、「家庭の医学」的な使い方にも向いている。

それだけに、各項目の「薄さ」が気になる。400ページというのは新書にしては厚いが、扱う話題を考えるとあまりに少ないのではないだろうか?ブルーバックスには例えば「現代物理学小事典」のようにこの倍以上の厚さを誇るものもある。無理に薄くしなくてもよかったのではないだろうか?値段は1200円。これも新書にしては高いが、CD-ROM添付で1500円を超えるものもあるブルーバックスである。ターゲットの値段を1500円とし、厚さを2割増にすればさらに有用度が上がったのにと少し残念である。1500円という値段は、現在ではAmazonのおかげで非常に意味のある価格となっており、1500円なら送料無料の「一冊買い」が出来る。もう少し販売戦略を考えてもよかったのではないか?

各項目に関していささか薄過ぎたのではというのは、タンパク質に関する項目である。ほとんどがDNAがらみで、本当に面白く、そしてこれから盛んになるタンパク質の科学が弱すぎるように思える。びっくりしたのは、索引に「タンパク質」ないこと。この手の本としては重大な欠陥にも思われるのだが。

とはいえ、片手で生物を眺め読みできる本というのは他にあまりない。その意味ではおすすめ。ただし生物に関して少し素養がある人は、岩波ジュニア新書の「生物の小事典」方がお薦め。図版もこちらの方がきれいだ。理想的なのは、「新しい高校生物の教科書」を一項目よみ、関連項目を「生物の小事典」で追うという読み方だろうか。

Dan the Biological Being


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督促も来たので:-)、まずは物理から。 新しい高校物理の教科書 山本 明利 ・ 左巻 健男 404 Blog Not Found:いっそ合冊に出来なかったかな?-すべりしらずさんのコメントなれなれしくて申し訳ありませんが、「地学」と「物理」のレビューはありますでしょうか....
急がば微積【404 Blog Not Found】at 2006年03月17日 02:02
 思えば高校の時の生物の教師は最低であった。メンデルの遺伝の法則は確かに習った覚えはあるのだけど、授業は雑談ばっかりだった。試験は毎年同じ問題で、選択肢の記号まで同じだから、ただの暗記物(と言うのも恥ずかしいかも)。確かに楽だったけど、何にも残っちゃいな...
新しい高校生物の教科書/栃内 新・左巻健男【Non-Fiction】at 2006年01月27日 23:08
今回「現代人のための高校理科」シリーズとして出ている方のもう一冊の方の書評。「物理」と「地学」も2月には出るそうだ。 新しい高校化学の教科書 左巻 健男 404 Blog Not Found:たんぱく質に淡白 それだけに、各項目の「薄さ」が気になる。400ページとい....
いっそ合冊に出来なかったかな?【404 Blog Not Found】at 2006年01月24日 15:21
この記事へのコメント
 タンパク質関連の原稿は、担当された方が出版に熱心なのでいつかどこかで出てくるような気がします。
 ブルーバックスでも、そういうおもしろい企画を探しているようですから、こういう本が欲しいと要望なされてみるのも良いのではないでしょうか。
Posted by 5号館のつぶやき at 2006年01月24日 14:10
>5号館のつぶやきさん、
御丁寧な解説ありがとうございました。
そのタンパク質関連の没原稿、他で「お蔵出し」って出来ないのでしょうかねえ。
なんだかとっても勿体ないので。
しかしこういったfollowupがすぐに出来るのは素晴らしい事ですよね。
今後ともよろしくお願いします。
Dan the Brand-New Fan of Yours
Posted by at 2006年01月23日 21:10
(最後に)

 この本とは関係ないのですが、現在我が学科が総出でアメリカの生物学教科書の翻訳作業をしております。こちらが完成すると内容には満足していただけるものになると思うのですが、値段が一桁上になってしまいそうで、、、、。
Posted by 5号館のつぶやき at 2006年01月23日 21:04
(続き)
 ポストゲノム時代と呼ばれる今の教科書であるにもかかわらず、生体機能を担う主役分子としてのタンパク質の扱いが手薄になってしまったのは、その分野にあまり明るくない私が責任を負うべきところです。事実、第一稿の段階では著者の方がスーパーマン分子としてのタンパク質のことをもっと詳しく記述されておりましたが、稿を重ねる過程で現在のようになってしまいました。
 それでも、索引に「タンパク質」があれば逆引きすることで、タンパク質がいかにいろいろなところで働いているかを検索することができます。落ちているのはまさしく欠陥ではありますが、不本意なミスでした。初版をお買いになられた方々にも大変に申し訳ありませんが、重版の時に修正いたします。ご指摘に深く感謝いたします。
 でもまあ、居直るわけではないですが、ひとつ作ってみるとどうすればもっと良いものを作れるかというのが見えてくるものですね。
Posted by 5号館のつぶやき at 2006年01月23日 21:04
 この本は新書にしては厚いものの、これだけの内容を盛り込むにしてはあまりにも少ない、と一番気になっていたところを突かれてしまいました(^^;)。しかし、中学生でもがんばれば最後まで読めるということと、教科書と銘打つ以上、盛り込むべき最低限は押さえておく、という講談社の編集方針にも一理あると思いました。結果として各項目がお粥のような薄さになってしまったことは素直に認めます。また、そう言いながらもあちこちに触れずにすましてしまった「穴」もあります。著者の方々の怒りを買いながらも、泣く泣く切り捨てた部分もあります。
(続く)
Posted by 5号館のつぶやき at 2006年01月23日 21:02
 5号館です。点滴を打ちながら読んでいただいたとのこと、あまりお身体に良いものではなかったかもしれず、冷や汗をかいております。先ほど、コメントを書き込んだつもりだったのですが、送られていなかったようです。
 また、後ほど書かせていただきますが、とりあえずこんなに早く全体を読み通していただいて感謝・感激です。
Posted by 5号館のつぶやき at 2006年01月23日 17:47