2006年01月28日 17:12 [Edit]

「戦略技術」なるものはありうるか?

「技術戦略」はあっても、果たして「戦略技術」というのは存在しうるのだろうか?

My Life Between Silicon Valley and Japan
グーグルは明らかに「戦略技術」の開発を最優先事項とする会社として登場した。ネット産業界の突然変異だった。だから最初は皆、グーグルが何をやっているのか、何を目指しているのか、全くわからなかった。しかし2002年頃からグーグルの台頭が誰の目にもはっきりとわかるようになり、それに刺激された米ネット列強は「基盤技術」だけでなく「戦略技術」を持つことの重要性をようやく認識した。しかし残念ながら、ライブドアを含む日本のネット列強はそうではなかった。そして今もそういう状況が続いている。

私としては「本質」という言葉を濫用したくないのだが、技術の本質は可搬性(portability)にあるというのは言い過ぎではないと思う。身もふたもない言い方をすると、技術というのは真似することが出来る、ということである。20世紀の「戦略技術」であった核兵器もその例外ではなかった。合州国がこの技術を独占していたのはわずか数年に過ぎなかった。

その核兵器を運ぶための「戦略技術」であるロケットでは、今度は当時のソ連が合州国を出し抜いた。しかしこれもまた数年で合州国が追いつく。さらにそのロケットを運ぶための「戦略技術」であるミサイル原潜はアメリカが先行したが、これまたソ連がそれに追いつくのにはそれほどの時間を要しなかった。

こうした「戦略技術」競争に歯止めをかけたのは、皮肉にも技術の進歩ではなく経済だった。ソ連が破れたのは技術戦争ではなく経済戦争だったのだ。

Googleの戦略も、実は技術戦争の皮を被った経済戦争なのではないだろうか?技術はすぐに真似されるが、新技術を生み出すには金も手間もかかる。誰かがGoogleの真似をしたとしても、Googleは新技術で先を行く。さらに真似されるとさらに新技術を繰り出す。そうこうしているうちに、ライバルは根を上げ、Googleはますます値を上げる、というわけだ。

実際Googleの収益源は、Google Mapsなどの新技術というよりは、Adsenseに代表される広告だ。この点において目新しいところはほとんどない。新技術に目がくらんでいるうちに、しっかりと50年代に確立されたビジネスモデルで稼ぐ。それが今のGoogleである。Class A Stockに至ってはまさに合州国の古典的メディア企業の戦略そのものである。

大西 宏のマーケティング・エッセンス:時価総額でハイテク世界二位となったgoogleはどこにいくのだろうか?
googleがどこに行こうとしているのかは興味深いところです。いまは広告収入で稼ぐというモデルが成功しており、技術的な話題はさておき、web上の情報に限らず、あらゆる情報を取り込むことを目指しているという姿勢は覗えます。googleの利用度が上がれば上がるほど、広告収入は増加します。だから、ビジネスモデルということでは、広告収入で稼げるあいだはそれでもよく、マイペースでいくつもの実験をやっていけば、明日も見えてくるからいいじゃないかという感じかも知れません。

私はむしろ梅田説よりも大西説に説得力を感じる。Googleの繰り出すきらびやかな新技術のほとんどは、実のところはかつての「スターウォーズ戦略」と同じ「ライバル騙しのための目くらまし」と言えば言い過ぎだろうか。もちろん、その中には「本当に儲かりそうなもの」も混じっている。Google Mapsはまさにそうだろう。しかし、Googleに取って最も大事なのはAdsenseであり、Adsenseが盤石である限りこれらの新技術は「当ればラッキー」程度であるということも確かだ。

それよりは、googleにとってのリスクは、日経が書いているように、むしろ人材確保やスタッフのモチベーションをあげるために発行している譲渡制限付き株式やストックオプション(自社株購入権)が、やげて利益を圧迫してくるかもしれないという見方のほうがリアリティがあるように感じます。

私はこの本業のAdsenseこそが最大のリスクだと考えている。実際最近のGoogleの検索に関する技術革新は、かつてほどのスピードが見られない。blogのインデックス化などは、むしろAsk JeevesLivedoorの方が早い。Adsense的な広告エンジンもすでにdrk7.jpさんのところやアサマシ.NETなど草の根レベルのものも登場している。もっともこれらの草の根レベルのものは一部インフラをAmazonやGoogleやYahoo!などに依存してこそいるが、Googleの外にもGoogleを実装できる人はいくらでもいる傍証にはなる。Googleとしては彼らが「敵」に回る前に「囲い込む」という戦略がありえ、また実際そうしているのだけど、全ての技術者を囲い込むことは、技術者の特性から考えて不可能だろう。

技術を知れば知るほど、戦略技術という言葉が空しく響くのは技術に対する皮肉だろうか。

Dan the Strategic Engineeer (?)


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この記事へのコメント
失礼します。TB送付に失敗しましたのでコメントさせていただきます。
fromdusktildawnさんの「企業の力の源泉は、つねにマーケティング的なものになってしまう。」に同意するので、ますます戦略技術が必要になると思っています。http://blog.chalaza.netの31日のエントリーをお読みください。すみませんが、この場をお借りして、fromdusktildawnさんに私の30日のエントリーに関してお礼申します。
Posted by 渡辺日出男 at 2006年01月31日 12:45
はじめまして。
Googleの技術は真似できて『Googleの戦略も、実は技術戦争の皮を被った経済戦争なのではないだろうか?』というのも賛成です。
Googleの強みは、そのサーバの数と処理能力ではないかと。ちょっとやそっとじゃ太刀打ちできない規模のチカラワザが彼らの最大の強みだと思います。そんなものはちょとやそっとのお金じゃそろわないぞ、と。そしておそらくGoogleの敵は電力かと。
Posted by katho at 2006年01月30日 23:55
「根を上げ」⇒「音を上げ」でしょ。
せっかくの気の利いたフレーズが???になっていますよ。
Posted by 通りすがり at 2006年01月30日 11:59
なので、企業の力の源泉を技術にする、というそのこと自体が、もともと不利(企業にとっては)。なので、企業の力の源泉は、つねにマーケティング的なものになってしまう。現代のIT産業では、という話だけど。
一方で、もちろん、技術は個人の力(権力と経済力)の源泉になるわけだから、エンジニアは、会社のためというよりもむしろ、自分のために、日々技術力を向上すべきだし、また、OJTなどで、会社が自分の技術力向上のための時間を作ってくれるとしたら、それは給料の一部だと考えるべき。
Posted by fromdusktildawn at 2006年01月28日 20:10
戦略技術などない、にはagree.
知識(技術含む)は、企業ではなく、個人に所属する。そして、奴隷契約がありえない先進国では、個人を企業が囲い込むのは、かなり困難。たしか、シャープだか東芝だかの液晶パネルのエンジニアがサムソンに引き抜かれて、サムソンはあっという間に、日本の液晶産業を脅かしはじめたのは、記憶に新しい。
一方で、企業のコンセプト、ブランド、企業文化などのマーケティング的なものは、企業が所有できるものの典型。ヒルトンだかどっかのホテルのLadies and gentlemen serving ladies and gentlemenは、もう芸術的な企業コンセプトであり、企業文化であり、ミッションステートメント。マーケットポジションから、ターゲット顧客から、従業員の行動規範から、採用基準から、広報戦略から、広告出稿媒体まで、すべてをこの一行をもとに整然と構造化されている。この構造は、企業が所有するものだ。
Posted by fromdusktildawn at 2006年01月28日 20:03

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Posted by e-アフィリ at 2006年01月28日 17:16