2006年04月19日 13:39 [Edit]

専門家破壊も進行中

このバラグラフの主張、実は私も結構うなずくところはあるのだが、しかし池田氏も阿部氏も最も重要な点を見落としている。

池田信夫 blog:ハイエク
しかし、専門家の評価は低い。阿部重夫編集長ブログによると、『国家の品格』の国粋主義と『ウェブ進化論』の米国礼賛は、「対極にいるように見えるが、前回書いたように『無知』をブラックボックス化してしまう点で双方ともハイエクの手のひらを一歩も出ていないのだ」という。

専門家の価値そのものが、破壊の対象となっている事実である。


ここでいう専門家は、(もう手垢だらけなのにまだあえて使うが)、「専門家1.0」のことである。すでに専門家として地位が確立した者の薫陶を受け、すでに地位が確立した業界で業績を積み上げ、すでに地位を確立した者からの評価を上げ、ついには地位の確立された出版社から本を出し....という。梅田氏の言葉を借りれば「こちら側での声価(reputation)向上プロセス」が実を結ぶには、かつてないほど手間暇もかかるようになった。

その手間と暇は、その専門分野の専門性が高ければ高いほどそうである。今や免許取り立ての医師や弁護士を先生扱いする人はほとんどいない(社交辞令は抜きにして)。一人前に扱ってもらうには、免許だけでは不十分で、経歴も要求される。医師の友人に話を聞いても、弁護士の友人に話を聞いても、彼らの教育投資がブレークイーブンとなるには30代では難しいそうである。

ところが、この「こちら側の声価向上プロセス」が、今「あちら側の声価向上プロセス」の挑戦を受けているのだ。そこでは現実世界における努力ではなく、Webの世界における評判が、その人の価値判断に用いられる。「どうせ仮想現実の絵空事」と思うなかれ。少なくとも執筆やプログラミングといった、成果そのものをオンラインにできる分野では、そこでの声価は現実の能力に直結している。一年前は青二才だった駆け出しが、今や業界をリードする第一人者になるなどということがざらにあるのだ。

それほどWebによるフィードバックループというのは高速かつ強力で、「専門家2.0」はこのことを頭ではなく肌で知っている。昔だったら自分の未熟さがばれるような初歩的な質問は、業界の中にいればこそ出しづらかったが、今やわからぬことをわからぬときちんとblogのentryなどで表明し、しかし受けたフィードバックをすぐに次のentryに反映させるものこそ強い。ネットから切り離された個人は未熟で非力でも、ネットを見方にした彼らはある意味全ての専門家を味方にしているのも同様だからだ。

もちろん、医師や弁護士は、これらの「専門家2.0」ほどにはWebの「声価高速道路」の恩恵を受けにくくはある。文章やコードは思い立ったらすぐにアップロードできるのに対し、患者の容態とか依頼人の心証とかというのは簡単にデジタイズできないからだ。しかしこれらの分野でさえ、Webによる高速化の恩恵、いや影響は受けているのだ。いわゆるアルファブロガーはこれらの「専門家1.0」の分野からも数多く出ていることがそれを示している。

何故「電波利権」が「グーグル」や「ウェブ進化論」ほど注目を受けないかといえば、その点に関する危機感の欠如が読者にも透けて見えるからではないか。

もちろん、問題意識を持っている人たちは確かにいる。ここではハコフグマンさんの例をあげてみよう。

ハコフグマン: ポッドキャスティング?マスメディアの終わりの始まり?を聞いて
今ではもうこんな殿様商売は通用しないだろう。自らが汗を流して作り上げたわけではないブランド、信頼にあぐらをかいていた時代。こういう牧歌的な時代が終わりを告げようとしているのである。情報を囲い込むのが技術の進展によって難しくなっている以上、マスメディアの人間は発想を転換させる必要に迫られている。

しかし彼らの多くが、問題がそこにあることそのものは認めつつも、何が問題なのかを感じ取れる者は少なく、さらに適切な行動を取れるものは少ない。ましてや収益が現在のところ上がっているのであれば。しかしかつては繊維が日本の代表産業だった時代もあったのだ。繊維業界におこることはどの業界にだって起こりえる。ソフトウェアコンテントの制作がその例外だと誰が決めたわけでもないのだ。

(検討|見当|健闘)を祈る。

Dan the Professional 1.5α

追記:

結城浩のはてな日記
s/見方/味方/g

誤字脱字さえ社交の友。ただしきちんと礼をいうこと。いつもありがとうございます>Dan's Typobusters


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 最近、たまに時事通信の湯川鶴章さんのポッドキャスティングを聞きながら、自転車で
ポッドキャスティング??マスメディアの終わりの始まり??を聞いて【ハコフグマン】at 2006年04月20日 19:12
大西氏の恐るべしケータイ をご紹介。大西さん ソフィストケーとされた情報の提供 いつもありがとうございます。 そうなんです。携帯文化って 今すごいのです。 私よりもう少し若い世代のお母さんたちは PCはちょっと敬遠してしまうけどって人々でも 携帯なら 上手に...
PC文化と携帯文化の狭間にて。【貞子ちゃんの連れ連れ日記】at 2006年04月20日 01:36
佐々木俊尚さんの書かれた新書「グーグル」を買ってさっきパラパラとめくってみた、今
専門家と呼ばれる方の不見識&新書「グーグル」読書前^^批評【時事を考える】at 2006年04月19日 19:15
404 Blog Not Found:専門家破壊も進行中 http://blog
職人2.0。【Junnama Online】at 2006年04月19日 14:55
この記事へのコメント
TBどうも。danさんにリンクされれば、グーグル八分も回避できるかな?
最近2chのまとめサイトなんか見ると、情報の集積がすごいですね。
明らかにメディアの構造が変わりはじめています。
Posted by hakohugu at 2006年04月20日 19:18