2006年04月24日 12:00 [Edit]

はてなに入りたくても入れないみなさんへ#4

本シリーズの最後は、数字のちょっとした訂正から入ります。

jkondoの日記 - はてなに入った技術者の皆さんへ
例えば最近 Audrey Tang という開発者が Haskell を使って誰も手をつけていなかった Perl6 の処理系を作り上げ、その仕事で高い評価を受けています。彼女が Haskell を勉強したのは恐らく随分以前だったでしょう。彼女が Haskell をマスターして方法論を身につけたあとは、ただひたすら Perl6 が動くようになるためにコードを書き続けているわけです。毎日毎日コードを書き続けるのです。それを何年間も継続したからこそ、世界の技術者が認める仕事になったのです。

AudreyがHaskellに触れたのは、実は2004年の終わり頃です。それからPugsの開発に入るまでは四半期もたっていないのです。とはいえ、ここでjkondoを事実誤認の一言で片付けるのは酷でしょう。

なぜなら、彼女(当時は「彼」だったけど)にとっての1ヶ月というのは、普通の人間にとっての1年に相当するのですから。そう。彼女はクロック数が高いのです。だから「何年も続けていた」というのはある意味むしろ正しい指摘でもあります。

しかも、その間Pugsとばかりつきあっていたわけではありません。YAML::SyckなどのPerl5 Moduleの開発も続けていましたし、何と言っても彼女の言うところの"Typecast"、性転換までしています。すごいですよね。ついてけませんよね。

でも、クロック数を落としてみてみれば、彼女は実に普通の努力家でもあるのです。彼女も普通の人がやりそうなポカをいくつもします。私自身何度も彼女のBugをFixしてます。

彼女はまた何でも器用にこなす、万能の天才でもありません。彼女と来たらいつまでたっても箸を鉛筆持ちするんです。LarryもIngyもDaveもJesseも皆きちんと箸を使う中で、ある意味異彩を放っていて、みんな彼女の食事風景を笑いながら見ていたものです。

少しAudreyが親しく感じられるようになりましたか?

でも、誰もがAudreyになれるわけではありません。Audreyのようなgift(才能)を誰もが持って生まれてくるわけではないのです。その努力も含めて。私も含めて、このEntryを読む人は、Audrey本人を除いて誰もAudreyにはなれないのです。

それで、「どうせ自分には才能がないから」と思っているあなた、ちょっと待ってください。

AudreyがAudreyでいられるのは、そんなあなたのおかげなのです。

彼女が今まで飢え死にせずに済んで来たのは、文字通り彼女を食わせて来た人たちがいるからです。彼女のご両親、Perl Community、そして彼女の訪問先にいる普通の人々が、彼女をかわいがってくれたから、今の彼女があるのです。

今回のYAPC::Asiaと、それに続くHackerthonで、最大の功労者として海外組が口を揃えて最大の功労者と言ったのは誰だと思います?わが妻、直美です。一片のコードも書かない、ふつうの彼女です。アレルギー持ちのLarryや、VeganのDaveといった人たちが、ある意味普通に生きて行くことがキツい人たちが、それを気にせず好きなことに1週間没頭できたのは、彼女がそう手配したからです。

これは、文字通り有り難いことです。

AudreyをはじめとするAlpha Geeksたちの最大のgiftは、才能ではなく、そんな彼らを陰でささえているふつうの人々なのです。giftedな人たちは五体不満足ならぬ五感不満足な人々なのです。人のたすけがなければ一日として生きて行けない、そんな人たちなのです。

好きな事をとことんやるのは、有り難いことです。だけど好きな人に好きな事をとことんやらせるのは、もっと有り難い。

その点で、「才能がない自分」は才能を超える事ができるのです。

パーティーで一番えらいのは、主催者でも主賓でもなく、実はゴミを片付ける人なのです。

もしあなたが、たまたま才能を得て、自分の好きなことに没頭する環境をえたら、その環境を整えたひとにたまにはお礼をいいましょう。彼/女らはあなたと違って毎回顔をあわせるたびに評価を期待しているわけではありませんから、アメリカの恋愛マニュアルみたいに顔をあわせるたび「愛してる」だの「ありがとう」だの言う必要はありません。そんなこと彼/女らも期待してません。なあに、かくいう私もあまり妻のことを日頃褒めているわけではないのです。どちらかというと100やってもらいながら、「なんで120やらんのだ」と無体なことをのたまってます。

だからこそ、この時こそ言っておくべきという機会は確かにあるのです。

今回の「はてなに入った技術者の皆さんへ」は、実はそのための絶好の機会だったのです。

それを見逃してしまうところが、jkondoの若さなのでしょう。

しかし繰り返しますが、若さというのは永遠に持っていられるカードではありません。20代ではかわいかった行動も、30代ではうとましいということはよくあるのです。

たまには最大の功労者に、目に見える形でのろける、失礼、謝辞を述べるのもいいんじゃないでしょうか、ねえ、reikonさん。

tapestry @ Hatena - 驚愕の事実
やっぱり飲んだらあかんのかなあ。

というわけで、健康診断が終わった頃一杯おごらせてください。

ご清聴ありがとうございました。

Dan the One of You


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Danさんのエントリーに感動した【地に足がついている日記】at 2006年04月24日 15:05
この記事へのコメント
はじめまして。
なんだか最後まで読んでいたら涙が出てくる程感動しました。
今の自分っていうのは誰か居て、初めてオンリーワンになれるんだってことを忘れていたような気がします。

今度何かプレゼントでもしようかしら?
Posted by cocelo at 2006年04月25日 03:19
ああ、この記事は弾さんののろけだったのか(笑
Posted by Tiger at 2006年04月24日 14:19