2006年04月28日 04:40 [Edit]

Googleは広告会社か?

Google SOC

Googleは、単なる「電通2.0」ではない。

池田信夫 blog:グーグルの価値
それにしても、グーグルの時価総額がホンダとニッサンの合計より大きいというのは理解できない。

磯崎さんはプロだけあって、一番けれんみのない分析、すなわち現在のCore Competence、すなわち広告がそのまま成長すると仮定した上で業績予想していらっしゃるが、磯崎さんの真骨頂は実はそこではない。

これである。

isologue: グーグルは「すごい」のか「すごくない」のか(財務的に見たGoogle)
また、上記は、基本的にはグーグルのビジネスモデルが広告モデルの域を出ないことを仮定していたシミュレーションなわけですが、実際にはグーグルは新しいrevenue streamを作り出す可能性は高い。グーグルは、「広告業」を目指したいわけではなくて、大量の情報をハンドルするエージェントになりたいわけなので、「分母」を広告費に限定するつもりもないのではないかと思います。

そのためのR&Dであり、M&Aである。今のところ、それらは皆の関心を惹いたり驚かせたりはしても、売り上げには結びついていないようにも見える。

なのに、なんで皆Googleに広告以外の価値があると思っているのだろうか?

ここに一つのいい例がある。現在世界最大の時価総額を持つ会社は、Exxon Mobileである。ここが商っているのは石油。なぜ石油にそれだけの価値があるのだろうか?

それは、石油が「ネゲントロピー」(negentropy)、すなわち負のエントロピーの代表だからだ。人に限らずおよそ生物というのは負のエントロピーを摂取して生きているが、その中で「現代文明人」の主食が石油というわけである。石油だけでは「栄養が偏る」というので、天然ガスへのシフトも起きているが、同じ地下資源ということもあって、Exxon Mobileに限らず、どの石油会社も手がけている。

誰もが欲しがるネゲントロピーを押さえたものは強い。そのネゲントロピーの購入者がそれを何に転化するかに関係なく。

そしてGoogleは、情報のネゲントロピーを押さえているのだ。

もし広告が「広く告げる」ことだとしたら、Googleがやっているのは広告ではない。たまたま広告だと思ってお金を出している人がいるからそう呼んでいるだけで、Googleのやっていることは実はその正反対、「広告の謝絶」である。

今までの広告というのは、他の情報を押しのけてそれを人々に見せつけることで、他のものに目を向けなくしてきた。見たくもないものを見せ、買いたくもないものを買わせるのが広告の仕事だ。Googleのやっていることはまさに正反対で、それぞれの人が見たいもの、買いたいものからそうでないものをどけるという手法を編み出したことで現在の地位を得たのだ。

梅田氏がなぜこれほどGoogleを持ち上げるのか、そして佐々木氏がなぜこれほどGoogleに警鐘を鳴らすのか、その理由がこれではないか。

Googleが持っているのは、広告媒体ではない。ユーザーから見た情報のネゲントロピーなのである。

油田さえ押さえておけば、石油をどう売るかはゆっくり考えていいのである。

実際、創業者たちは自分たちの油田にどんな価値があるのかはじめから知っていたわけではない。彼らは自分たちの技術の凄さは知っていても、それをどう金に換えるのかはまるで知らなかったのだ。石油は知っていても、そこに含まれるガソリンが高く売れるということを知らなかったのだ。

しかし、いったんガソリンが売れるとわかったら、油田を持っているものは強い。実際石油メジャーも産油国にはかなわなかった。Exxon Mobileは大きな会社だが、どんぐりの背比べの中の一位なのだ。それほど石油というのは「おいしいネゲントロピー」だったのだ。

情報のネゲントロピーは、それ以上にうまい。そしてその油田を、どの産油国も成してないシェアでGoogleは押さえているのである--現在のところ。

あとはだれかがガソリンの用途を見つけるだけだ。Web 2.0というのは、つまるところガソリンの用途の開拓なのではないか。広告?それはアスファルト程度のものだろう。

とはいえ、情報と石油の重要な違いが一つある。石油は遣ったらそれまでだが、情報はいくら遣っても減らない。Googlebotに開かれたWebページは、他の誰にも開かれているのである。その意味でGoogleの将来は予断を許さないし、誰かがGoogleに取って代わる可能性だって多いにある。

本当に重要なのは、Googleが何を今売っているかじゃない。Googleが今持っているものでこれから何ができるかなのだ。

Dan the Negentropy Guzzler


この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
Googleさんが新サービスをいくつかリリースした模様。 Google Trends とか Google adwords Traffic Estimator(御見積計算ツール) とか。 Web進化論でも書かれていたけど、本当にどこまでのスケールでどこまでのことをやろうとしているのだろうか? 末恐ろしく...
Googleさん、どこまで行くの?【matsukatsuの雑記帳blog】at 2006年05月17日 21:04
さて、東証さんが決算短信のXBRLデータを試験公開されはじめました。 (リリース...
東証の決算短信XBRLデータ試験公開とGoogle【isologue】at 2006年05月09日 00:57
昨日「INAのArchives pour tous 文化における見る価値と保存する価値」のエントリーを書いた後、たけくまメモさんの「ソフトがタダになる時代」やFIFTH EDITIONさんの「ネット時代の商業ソフト販売」なんかを読んで、「広告モデル」だったり、そもそも、そのあたりの話を全部...
[memo]著作権、オープンソース、無形資産【DESIGN IT! w/LOVE】at 2006年05月06日 14:18
(ああ、また長文になってしまいました) また新しいGoogleの本、「グーグル―...
「グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する」を読んで【大徳日記(だいとくにっき)】at 2006年04月30日 18:36
 「Google」を読みました。  ふと思ったのは、GoogleはIT革命(死語)における鉄道になったんだなぁと  いうことです。  もう少し正確に言えば、サーチエンジンは鉄道だということでしょうか。  そして、その鉄道に乗っかって、ロングテールという新しい商品...
Googleは鉄道【ひろのきまぐれ日記】at 2006年04月29日 14:52
低ITリテラシー者の口コミこそ信用できる、という最近の印象 :Heartlogicを読んだ後に404 Blog Not Found:Googleは広告会社か?を読んで、このgoogleの記事もステルスマーケティングか?と思ってしまった。これで404 Blog Not Foundにグーグル・アドセンスでも貼られてたらそ....
グーグルで実生活が何か変わったか?【betatics】at 2006年04月29日 14:33
 タイトルは、小飼弾さんのエントリにインスパイアされたものである。小飼さんはここ
Google と石油【エコノミー、マーケティング、そして IT】at 2006年04月29日 06:31
googleに関しておもしろい記事を見つけました Googleは広告会社か? http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50473074.html ここで何が書いてあるのか簡単にまとめると「googleはただの広告会社の進化バージョンではない。石油の大もとを押さえるExxon Mobileと同じように...
秩序だった情報を作るパワーが最も優れた商品となる。【しふーのBlog -都内某国立理系大院生の日常-】at 2006年04月29日 01:28
その9:「カール・マルクスが語るグーグル像」*以下の文書はその8の続きです 目次:第1回「マルクスさんにインタビューしてみよう」・・・記念すべき第1回、ネタフリのみ第2回「そもそもマルクス経済学って?」・・労働価値説から剰余価値まで第3回「そもそもマル...
カール・マルクスが語るグーグル像―web2.0についてマルクスさんに聞いて見た・・・その9【親バカ党宣言】at 2006年04月28日 22:06
最近、Googleに関する書籍が多数出版されている。たくさん読みすぎて頭の中が混乱している。Googleの技術力や資金力は単純にすごいなぁと思うが、そこから先のことが見えずに頭を悩ませている。でも、「あとはだれかがガソリンの用途を見つけるだけだ。」この一文で少し整理...
Google【ブロググ】at 2006年04月28日 21:14
最近、Googleに関する書籍が多数出版されている。たくさん読みすぎて頭の中が混乱している。Googleの技術力や資金力は単純にすごいなぁと思うが、そこから先のことが見えずに頭を悩ませている。でも、「あとはだれかがガソリンの用途を見つけるだけだ。」この一文で少し整理...
Google【ブロググ】at 2006年04月28日 21:13
さらに グーグルが収益を広告料のみならず 個人のグーグル上での広告へのクリック回数(アクセス件数)の情報を元に 広告マーケッティング産業へと乗り出す可能性も大きいと思います。 私の去年の7月7日のBlog記事自分なりに考えたグーグルにひそむ危険性を一部抜粋して...
情報帝国Googleがこれから何に打って出るか?Part3【貞子ちゃんの連れ連れ日記】at 2006年04月28日 14:17
検索エンジンとしてのグーグルには アナログお父さんのための携帯&OS市場 入門♪Part3 で記したように 私は『じれったさ』のようなものを感じている。とにかく アクセス件数の多い順に並んでいるグーグルの検索マシーンは とにかく速読力を強要する。グーグルは私にと...
情報帝国Googleがこれから何に打って出るか?Part2【貞子ちゃんの連れ連れ日記】at 2006年04月28日 14:17
システム界の有力Blogger:404Blogさん と 会計士会の有力Blogger:磯崎氏 お二方の秀逸なBlog記事をじっくりお楽しみください。 404Blogさんのところで とたも興味深いブログ記事 Googleは広告会社か? から 一部抜粋して 引用。 ・・・・(中略)・・・Google...
情報帝国Googleがこれから何に打って出るか?Part1【貞子ちゃんの連れ連れ日記】at 2006年04月28日 14:15
この記事へのコメント
なんかこんな商売もやってるね。儲けは薄そうだけど。

グーグル、LEGO風のデザインを採用した検索アプライアンス『Google Mini』を発表
http://ascii24.com/news/i/hard/article/2006/04/12/661664-000.html
Posted by 令博 at 2006年04月28日 23:25
情報をアーカイブというか、検索しやすくするのは、他社も独自にまたは、まねしてやってますよ。他社に真似ができないほどの、グーグルの優位性って、具体的に考えると怪しいってことです。
Posted by sima at 2006年04月28日 19:13
danさんがネゲントロピーと言っているのは、単に情報理論で言うところのエントロピーの意味だと思います。それは「世界中の情報をアーカイブする」というモットーにも現れています。だからここでCoreCompetenceと言ってるのはネゲントロピーを生産できる技術力のことであって、他社に真似ができないのはそこじゃないでしょうか。
Posted by あげ at 2006年04月28日 18:45
グーグルのビジネスモデルは特許で守られてないのか、あっというまに、まねされて、グーグルの優位性があやしくなってきている。グーグルのこのサービスだけは、優位性があって他者にはまねできないとか、具体的にひとつひとつサービスを検討しないと、抽象的にネゲントロピーとかいってもしょうがないような気がする。
Posted by sima at 2006年04月28日 05:25