2006年06月07日 13:35 [Edit]

サイバースペースにおけるインサイダー定義の憂鬱

憂鬱なふぉーりん・あとにー、47thさん指摘の通り、「聞いちゃったらだめ」というのは私も知っていました。が、問題はそこではないのです。

ふぉーりん・あとにーの憂鬱: 「聞いちゃったら」だめです
なので、例えば、製薬会社の社員の友人と飲んでいて、「実はこの前発表した新薬の欠陥が分かって回収しなくちゃいけなくなりそうで、そのせいで首が飛びそうなんだよね。ローン組んだばっかしなのに、やってられないよ」と聞いてもいないのに一方的に愚痴られたとしても、その話を「聞いちゃった」以上は、その会社の株の売買はできません。持っているその会社の株は塩漬けです。

問題は、何をもって「あなたしか聞いてない」のか、「一般株主も聞いているのか」が判定されるか、にあります。

例えば、上の製薬会社の社員が、このことをblogに書いた場合はどうなのか、SNSに書いた場合はどうなのか、ということです。

例えばblogの場合。これはblogという不特定多数、すなわち一般株主も見れる場所に書いてあるのだから、書かれた時点でインサイダー情報になるのかならないのか。そしてSNSだったら、基本的にはインサイダー情報だけれども、それが書かれたのが日記ではなく株主コミュニティだった場合どうなるのか?

ふぉーりん・あとにーの憂鬱: 「聞いちゃったら」だめです
極端なことを言えば、そういう気の置けない友達がいるとかで、インサイダー情報が望まないのに入ってしまうかもしれない会社の株は持たない方がいいと言ってもいいぐらいです。
債券・株・為替 中年金融マン ぐっちーさんの金持ちまっしぐら :村上世彰、最後くらい男らしくせい!!
我々金融に携わりお金を扱う人間はタダでさえ後ろ指をさされやすいのだ。そういう自覚をもって、自らを律して生きる・・・・と言う考え方にはならないのだろうか。

私自身、電網大工の性格上、パスワードなどの秘密情報にはどうしても触れてしまいますが、職業意識上なるべくこういった情報との接触は避け、また触れた場合にも率先して忘れるようにしています。私は妻のmailboxを勝手に覗いたりしたことすらありません(聞いてますか?配偶者のケータイにさぐりを入れるみなさん)。

しかしあくまでそれは私が勝手に私自身に課していることであり、私がこういった嫌疑に晒された場合にそれを客観的かつ合理的に証明する手段はほとんどありません。

刑事事件においては、検察は「聞いた」ことを「合理的な疑いを入れない程度」に証明しなくてはいけません。 逆にいえば、疑われた方がすべきことは「合理的な疑いの余地を提起すること」ことであって「聞いていないことの証明」は求められませんので、ご心配はいりません。

ますます心配が深まりました。

インサイダー情報が、公ではあるけれども私が目をとおしていない場所に書かれていた場合、私はどうやって「合理的な疑いの余地を提起」すればいいのでしょう?例えば2chにそれが書かれたいた場合、私はどうやって「読んでません」を受け入れてもらえるのでしょうか?

率直にいって、Winny事件を挙げるまでもなく、電網がらみの判例は、かつてはかなり(naiveに)信頼していた司法というものに対する疑念を深めるものばかりです。率直に行って、判事がその対象に対する知識を欠いている場合、判事は検事の言いなりではないかという感慨すら持っています。

今後は、こうした「専門分野の合わせ技」が争点となる事件が増えると思います。判事達はますます自分たちの知らない世界に対する判決を求められるわけで、そしてこういった時には結局自白や心証といった主観的なものに陥りがちなのです。自分が知らない世界に対しては、その世界の吟味ではなくその世界を知る者に対する心証で判断しがちなのは、何も日本に限った話ではありません。チャップリンの白を黒にしたのは誰でしたっけ?

Dan the Spellbound


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FIFTH EDITION:インサイダー情報と選択的情報の開示の問題について こういう知ったかぶりを開陳するのなら、言葉の軽重とかをじっくり点検してからにして欲しいものだ。
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村上世彰vs東京地検特捜部[情報戦]【Lawとバット】at 2006年06月08日 01:05
村上「私は嫌われ者になってしまった」激白とのこと、これをみて世の中の動きを知らん
世の中の動きを知らん爺どもが日本を滅ぼす【時事を考える】at 2006年06月07日 22:42
この記事へのコメント
仕事と言えばそれまでなんですが、「遷移」でクレームを付けたことを、鼻高々に述べる元記者さん程度の不勉強な法曹関係者がいれば、事実を斟酌せずに、新解釈するでしょうね。
Posted by sionoiri at 2006年06月07日 14:25
むしろ、弾さんが見ていないと仰っていて、アクセス・ログを分析しても弾さんのIPアドレスが見あたらないような場合に、どうやって「合理的な疑いの余地を入れない」ほどに立証すればいいのかと検察の方が電脳世界での立証技法に頭を抱えているんではないかと思いますが(笑)
それは半分冗談としても、ネットの世界もそうですし、金融の世界でもそうですが、検察官・裁判官の土地勘のない分野での判断が、その世界で成立している規範と合致しないことはあるでしょうし、これからも起こってくると思います。
特に「聞いた聞かない」という「生の事実」の認定というよりも、ルールや「本来あるべき姿のイメージ」(例えば、過失の認定における「過失がなかったときのあるべき姿」―これは、最近産婦人科医の処置に関する認定において大きな話題となりましたが)との関係においては、検察と裁判所が「空気を読めるのか」というところは、私も(相変わらず)憂鬱です。
Posted by 47th at 2006年06月07日 14:20