2006年07月01日 02:20 [Edit]

Thou art God for you laugh - 書評 - Stranger in a Strange Land

以前にも書いたことなのだけど、「笑い」に関して私が最初に思い出すのが、火星人に育てられた地球人、Valentine Michael Smithの台詞。

FIFTH EDITION: ネタ芸人の素顔
筆者は、その事から、ユーモリストというのは、幼少の辛い体験から自分の心を守るため、何らかの手段で他人を笑う(笑わせる)ことによって自分の精神を守る術を体得した人であるケースが多いという話をしていたのだが。

Michaelは、笑いをgrokすることで、地球人となる。

I've found out why people laugh. They laugh because it hurts--because it's the only thing that'll make it stop hurting.
[snip]
I had thought -- I had been told -- that a 'funny' thing is a thing of goodness. It isn't. Not ever is it funny to the person it happens to. [snip] The goodness is in the laughing. I grok it is a bravery ... and a sharing ... against pain and sorrow and defeat.
[拙訳:なんで人が笑うのか、やっとわかった。痛いからだ。それしか痛みを止めるすべがないからだ...僕はずっと「可笑しい」ことは良いことだと聞かされてきたど、そうじゃないんだ。可笑しいことが起こった人にとっては、それがいいことだった試しが無い。笑いは、悲哀と敗北に対する共感、そして勇気なんだ]

私自身、Michaelにこう言ってもらってはじめて人間がわかったような気がする。

実は、この話はこう続く。

This is hard to explain. because you have never lived as a Martian, for all that I've told you about it. On Mars there is never anything to laugh at. All the things that are funny to us humans either cannot happen on Mars or not allowed to happen -- sweethart, what you call 'freedom' doesn't exist on Mars; everything is planned by the Old Ones -- or the things that do happen on Mars which we laugh at home on Earth aren't funny because there is no wrongness about them. Death, for example.
[拙訳:火星育ちでない人に説明するのはとっても難しいのだけど、火星には、可笑しいことは一つも無いんだ。我々人間にとって可笑しいことは、火星では起こりえないか、起こることが許されないんだ。いわゆる「自由」というのは、火星にはないんだ。すべての出来事は「長老たち」の計画通り起こる。あるいは、我々が地球上で笑うような出来事は、火星では間違ったことではないので、可笑しいとはいえない。例えば死とか]

ヒッピーの教科書であり、Billy Joelの歌にまで謳われた本書は、なぜか日本ではいまいち知られていないのは、なぜかHeinleinの訳本としては珍しくハヤカワでなくて創元から出ているせいなのか、矢野徹訳でないからなのか。それでも24時間発送なのはうれしい。

初版は何と1961年。もう書かれて45年も経つ本だけど、未だに何かあると読み返さないではいられない本だ。特に、Jubal Harshawがいい。リアルで「師」を持たなかった私にとって一番それに近い存在が彼だ。

時折思うのだが、文明というのは「火星化」のことかも知れない。火星人たちは、"wrongness"--間違ったことを、異次元に飛ばす力を持っている。Michaelにもその力は伝授されていて、それが巻き起こす騒動も本書のみどころの一つなのだけど、かつて文字通り笑ってすませていたことを、起こらないようにするのが文明的な解決策で、その意味で火星人たちというのは、文明を極めた人々である。そして文明を極めた結果、文化は不要になった。

芸人というのは笑いという文化を売って金という文明を手にする、ある意味とても罪深い人々でもある。彼らが身を削りまくった結果燃え尽きてしまうのは、ある程度仕方のないことなのかも知れない。

それでも、「笑いを金にするなんて何と下賎な」といったらそれこそ「笑いもの」である。火星人の文明力と、地球人の文化力の二兎を追った結果、一兎も得ない人々というのはそれこそ一番可笑しい人々だ。

Geekたちは実に笑いが好きだ。笑いのないプレゼンはそのことが笑いものになるぐらい。もしかして、それは彼らが火星人的な力を持っていることの代償なのかも知れない。

Dan the Stranger in a Strange Land


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この記事へのコメント
Though art God for you laugh

弾さん、タイトルの意味を教えて下さい。
"Thou art God にかけてるとか?
Posted by Jeremy at 2006年07月01日 07:11
Jeremyさん、
s/Though/Thou/
としました。ghはsighのgh:)
Dan the Waterbrother of Typos
Posted by at 2006年07月01日 07:26
よほどの暇人なのか、hatがおかしいことに気づいた。
Posted by ひま at 2006年07月02日 14:31
or the things hat → or the things that
じゃないですか?
コメントしても、反映されないのは、スパムとしてゴミ箱に
直行しているのだろう。
Posted by hima at 2006年07月03日 12:50
himaさん、
反映しました。ありがとうございます。
コメントが反映されない件ですが、最近時々あります。
どうもLivedoor Blogのファイル更新プログラムがstallしている感じです。
まいったなあ。
Dan the Typo Generator
Posted by at 2006年07月03日 15:30