2006年07月18日 04:45 [Edit]

不完全自殺マニュアル

そういえばまだ書評してなかったっけ。

まえがきより
だけど「どうして自殺しちゃいけないのか?」「なんで生きなきゃいけないのか?」という問いには、相変わらず何の解答もない。

それでは、この問いの解答として「だったら自殺すればいい」というのは正答なのだろうか?


実は本書には、一番確実な自殺法が書かれていないという点で、看板に偽りがある。

「寿命を待つ」、という自殺法だ。

実は本当の「完全自殺マニュアル」は、63億人一人の例外なくもっている。それも一人60兆コピーほど。我々には寿命がある。遺伝子(gene)は自殺するのだ。ときにガン細胞など、自殺の方法を忘れた細胞が出るが、この場合は自殺せずとも自滅する。いづれにせよ、死は確実だ。

にも関わらず、なぜ意伝子(meme)は首つりよりも確実なこの方法ではなく、時により不確実だが迅速な方法を取ろうとするのだろう。

残念ながら、本書にその答えは書いてない。私もその答えは知らない。本書に書いてあるのは、遺伝子による自殺執行を待てない人に、他にどういう自殺方法があるかを紹介した本だ。

しかし、実際の自殺方法の解説は実のところ3割未満。残りは何が書いてあるかというと、自殺者たちの肖像だ。未遂もあるし既遂もあるが、本書は自殺者たちがいなければ書けなかった本である。本書は自殺の実行には不要なこうした部分が多いという意味においてもまた不完全である。

実のところ、本書が100万部を超すベストセラーになったのは、本書が不完全だったからだ。人は人の死を知りたがる。さもなければなぜ最も売れるフィクションはミステリーなのか? にも関わらず、他殺を扱う本はフィクション、ノンフィクションを問わず巷にあふれているのに、自殺を扱う本はほとんどなかった。それを見つけた鶴見氏と太田出版の目のつけどころは鋭い。

にも関わらず、鶴見氏を手放しで賞賛できないのは、まずなんといっても鶴見氏の論法が偽善的だからだ。平たく言うとヘタレであり、ヌルいということ。

自殺の方法を解きながら、自らは自殺せずその印税で生きている。本書は1200円なので、印税10%としても1億2000万円。本書で詳しく取り上げられている山田花子が本書を見たらどう答えるだろう。鶴見氏には是非彼女の後を追っていただいた上で「霊界対談」してきてもらいたいものだ。

まあそれは不謹慎な冗句としても、この台詞には生きる気力も死ぬ気力もなくなってorzとなったのは私だけだろうか。

「完全自殺マニュアル」著者が語る自殺の権利 - 東京 AFP BB News - BETA -
一生懸命な人生を強いられている人々から不安を少しだけ和らげる、この本はそんな存在であってほしいと思いました。ほんとうの話、読者には生きてほしいと思っていたのです
[太字化は弾]

読者が死を選ぼうが生を選ぼうがそれは読者の自由ではなかったのだろうか?

私は本書のコンテキストそのものが不謹慎だとは思わない。実際誰が何と言おうが遺伝子は自殺する。遺伝子に出来ることを意伝子に禁じるのは不条理もいいところだ。実際本書で太田出版に入った十数億円、著者に入ったであろう一億円あまりというのは、それこそ兵器産業の利潤と比較したら鼻くそのようなものだ。我々自身、生を文字通り食い物にしなければ生きていけない存在である以上、人の自殺で食って何が悪いと言われれば私には返す言葉がない。

しかし、不誠実ではあると思う。もしマニュアルにするのであれば、徹底してマニュアル化した上で、そのマニュアルに偽りがないことを身を以て証明して欲しかった。

「完全自殺マニュアル」著者が語る自殺の権利 - 東京 AFP BB News - BETA -
私の本は、日本社会のタブーをさらけ出したのです。自殺は犯罪ではありません。私たちには自由があるのだから、自殺した人を責めるべきではないのです

一見禿同してしまいそうな言葉だが、自殺の自由とは、「あなたには自身の自由を全て放棄する自由があります」というのに等しい自己矛盾的な自由である。

なぜ人が自殺するか?その理由はいくつもあると思うが、「もう自由の重さに耐えられない」に分類される自由はかなり多い、いや過半を占めるのではないか?病苦、借金苦といった「苦痛から逃れるための自殺」は確実に過半を占めるはずだが、これは「もう病に耐える自由、借金を返し続ける自由から解法されたい」と解釈できる。

自由を軽々しく扱うのは、自殺を軽々しく扱うより危険なのではないか?

また、「自殺した人を責めるべきではない」というのも実はおかしな話だ。死んだ者はもう責めようがないのだから。逆に自殺した人を称揚すれば、「自殺が増えてめでたしめでたし」とでもなるのだろうか?

「自殺による苦痛からの解放」に問題があるのは、自殺では苦痛から解放したことを自覚できないからだ。確かに苦痛はなくなるが、苦痛からなくなったことを確認する自分もまたなくなってしまうのだから。

そのことに気がついてから、私は自殺をあまり考えなくなった。「全く」ではない。私はあわてんぼうなので、肩こりがひどいだけで肩をダイナマイトでふっとばしたくなる。なんとかそうせずに済んでいるのは、私が欲張りだからだ、肩こりはいやだが肩は惜しい。だから刹那的と知りつつも肩こりに時には耐え、時には刹那的な解決法と知りながら温泉につかり、マッサージを受け、鍼を打ってもらう。

そう、刹那的。しかしこれを繰り返しているだけで実は寿命は来るのだ。何もあわてることはない。

根源的かつ抜本的な解決ばかり期待するから、自殺に飛びつく。そして自殺するためなら、本書より首をくくるための縄の方が役に立つ。本書にもそう書いてあるし、縄は1200円もしないだろう。

しかし、それはあなたの命を1200円程度の本書と同程度に自ら値切るということでもある。あなたが自らの命にその程度の価値しかないと考えるのであれば、そのように扱えばいい。それもまたあなたの自由なのだから。

「そうではない」、と答え切るのは難しい。私自身、まだ成功していない。私はおそらく本書で鶴見氏が手にしたであろう金額より多い金額を確かに手にはしたが、これは証明としてはユルすぎて使えない。だけれども、「そうではない」という確信、いや思い込みかもしれないがそういうものは確かにある。だから悩む。ああでもない、こうでもない、と。そうして悩んでいるうちに私の人生は終わってしまうかも知れない。

それで、いいのではないか。

Dan the Mortal


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遺伝子や細胞が自分自身生きるのが嫌になって自殺するなんて聞いたことない。
アポトーシスは自殺じゃないだろ【佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン】at 2006年07月18日 19:24
この記事へのコメント
自殺は,本人に「苦痛からの解放」をもたらすかわりに,周りの家族・知人に多大な苦痛をあたえます。その苦痛は(他の死因と比較して)きわめて大きいものです。
たしかに、遺族は、助けられなかった、自分を責め続けます、

自殺願望は人生の目的が分からなくなったとき、

始まります、

人生の目的は、誰に聞けばいいんでしょうか?

パソコンの使い方しりたければ、そのパソコン作ったメーカーのマニュアル読むのが

正しい使い方ですが。

人間を作ったメーカーは誰?

親?

親は作ったというより、

できちゃった・・・。ってかんじ。

私を作ったの誰?

神様?

じゃマニュアルは?

聖書?

マニュアル難しい!パソコン教室ないの?

だから、人間は宗教なしに生きれないんじゃないですか?

宗教嫌いな人は

刹那的と知りつつも肩こりに温泉につかり、マッサージを受け、鍼を打ってもらうと、生きる力がわく。

整体もいいですよー。http://www.354976.jp/





Posted by 微笑の整体師 at 2009年08月06日 10:48
自殺は9割失敗する件は書いてなかったかな
Posted by 名無し at 2008年08月23日 09:19
結局、賛否両論。

俺は自殺していいと思う。
Posted by facking at 2008年02月06日 01:09
金になりゃなんでもいいじゃん。それが資本主義。

まあ、自殺をネタにいい子ぶった文章を書いて
アフィ張っつけて儲けようとするココの管理者の根性の悪さを笑ってやるよwwww
Posted by (・∀・)ニヤニヤ at 2006年10月11日 18:01
 僕にとって「完全自殺マニュアル」は聖書に等しい。
 死にたいと思ったことがない人には理解できないかも知れないけど「死のありがたみ」は計り知れない。
 人間は単純だから「生きろ」か「死ね」くらいしか口にしない。しかしこの本は、はじめて「死んでもいいよ」と言ってくれたように感じた。
 自殺を否定したがる気持ちはわかるのですが(葬式代に金がかかるなど)死にたい奴の「死にたい気持ち」を認めてやることも大切だと思う。
 簡単に言う、自殺を許せ!!! 簡単な手続きでキレイに死ねる薬をくれるとかクイックに死ねる社会になればいいと思う。死ぬときくらい、肩の力をぬかしてほしい。
Posted by kM at 2006年08月27日 18:11
tnkさん、弾さん、一つ賢くなりました。
ありがとうございます。
Posted by 北斗柄 at 2006年07月18日 21:22
北斗柄さん、tnkさん、
こちらはtnkさんの解釈の意で書きました。
わかりやすくするため少し補足しました。
Dan the Vehicle of (g|m)eme
Posted by at 2006年07月18日 16:56
>北斗柄さん
遺伝子→gene
意伝子→meme
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%A0


自殺は,本人に「苦痛からの解放」をもたらすかわりに,周りの家族・知人に多大な苦痛をあたえます。その苦痛は(他の死因と比較して)きわめて大きいものです。恋人に自殺されたために壊れてしまった友人を持つものとして,自殺をネタに金を稼ぐ連中に対しては強い憤りを感じます。
Posted by tnk at 2006年07月18日 12:46
寿命で死ぬのはカテゴリーとしては自殺じゃなくて他殺では?
自殺は自分の意志で死にますが
寿命は自分の意志に反して死ぬしか無い訳ですから。
Posted by lba at 2006年07月18日 12:46
全編同意の下、「そのマニュアルに偽りがないことを身を以て証明して欲しかった。」それは一読者の希望であって、それをもって著者を不誠実というのであるところだけは、評が「ユルい」ように思うけど。著者が最大に不誠実なのはそこじゃないだろう、と思う。題名の付け方であって、この本を出版するその時点、やる気まんまんで売ろうとしたことだけじゃないのだろうか。
Posted by とおりすが〜り at 2006年07月18日 10:31
意伝子→遺伝子
ちょっと普通じゃ考えられない変換なので釣られたのかな?
Posted by 北斗柄 at 2006年07月18日 10:23
まぁ遺伝子が自殺するわけじゃないけどな
Posted by 通りすがり at 2006年07月18日 08:13
そうか、弾さんは、リバタリアンだったんですね。
これとか、近いですよ。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062132729/
Posted by 金 at 2006年07月18日 07:46