2006年07月27日 23:00 [Edit]

弱者救済は死者をもってせよ

ところが、その強者があいかわらずぬるいのに、その地位がより安定してしまったところに今日の問題があるのではないか。

分裂勘違い君劇場グループ - 劇場管理人のコメント - 弱者を弱者にしている、唯一にして決定的な要因は、「強者を理解していない」ということ
一度も強者になったことのないヤツには、想像もつかないだろうが、実は、ほとんどの強者は、かなりぬるい。
その上、彼らの確固たる安定した地位は、見た目ほど安定なんかしてない。
つけ込む余地、蹴落とす余地なんてありまくりだよ。
ちょっと視点を変え、ちょっと工夫するだけで、逆転するチャンスなんて、いくらでもあるんだ。

ここで強者の種類を二つにわける。フロー強者とストック強者だ。

フロー強者は、ぬるい。その時点における自分の強みが未来永劫そうだとは限らない。江戸時代ならとにかく、明治以降自分が身を投じた業界が、還暦を迎えるまで安泰だった試しがない。あ、一つあるか。役人という奴が。

それはさておき、フロー強者の切迫感というのは、「格差社会」においてすら以前より増している。フロー強者で居続けることは、かつてほど簡単ではない。昔は正しい入り口に入りさえすればよかった。今では出口まで気が抜けない。

しかし、ストック強者は、ますます安泰になってきている。文字通りの「ストック」を持つ株主の地位はますます向上しているし、キャピタルゲイン税から相続税に至るまで、ストックにかかる税金は格段に安くなったからだ。彼らはフロー強者と違って、強がる必要が全くない。ただそこにいるだけで、「弱者」を威圧できるのだ。

しかも、彼らのほとんどは「現役」ではなく「退役」だ。彼らの「強さ」が社会に還元されることはほとんどない。

問題は、弱者を保護しないことではなく、強者の力が活用されていないことにあるのではないか。

このあたりの考察は、上掲の「働くということ」を是非ご覧いただきたい。1950年からずっと日本を見てきたイギリス出身の著者は、強者の論理を知り尽くした上で、その論理が生み出す問題を見逃さない。何百年前の文献を縦横無尽に駆使しつつ、ネットの最新の情報もつぶさに目配りしている。脱帽もの。恥ずかしながら私はこの人を知らなかった。こういう人を「賢者」というのだろう。最新刊の誰のための会社にするかも超おすすめ。

ただし、彼は提案に対しては非常に控えめで、「こうしたらこうなる」という言い方はしていても、「こうすべきだ」という論調はなるべく避けている。具体的にどうしていくかは、あくまでの日本の有権者の問題だというのが行間から伺える。私が彼の名を知らなかったのも、そのためだろう。

私自身は、フロー強者を経た、なりたてほやほやのストック強者に分類されるだろう。しかしまさに蹴落とすとまでは言わぬともつけ込む余地に食い込むことでそうなったのであり、「弱者」だった時代の方が長い。新聞紙にくるまって寝てたこともあるのは以前書いたので繰り返さないが、どちらの経験もある。今の暖衣飽食を捨てたいとは思わないが、それが弱者を足蹴にしてきた結果だとはましてや思いたくない。「弱者」だった時代、今では私より弱い「比較的強者」たちが私をどう扱ってきたかを思い起こせばなおのこと。彼らは弱者を蔑み、強者に媚びる、実に醜悪な生き物であった。

かといって、「フローの余剰から作ったストック」を取り上げては、今度はフロー強者たちが強者であることを辞めてしまうだろう。また強者でありつづけられる期間が短くなり、社会保障の原資がやせ細っている今、「隠居」用の資産を安堵するのはフロー強者たる彼らが、強者である間になるべく全力で仕事をさせる効用もある。

それでは、「受け継いだストック」をいきなり「取り上げる」ことは出来るだろうか?これはこれで良策とは思えない。いきなりそうしては抵抗も大きいだろうし、なによりストック市場にいきなり売り物が殺到して折角のストックが「腐って」しまう。

こうなると、一番いいのは、やはり「死んだら肉体は土に、財産は皆に」という方策ではないだろうか。これであれば、ストックの値崩れは防げるし、「かつての強者」も安心できるし、そして「現在の弱者」にはそこから這い上がるための藁を与えることにもなる。

以前私はこう書いたことがある。

404 Blog Not Found:Spend Now, Pay Later -- Posthumously
以前取り上げたように、65歳以上の平均貯蓄残高は2423万円。不動産が4251万円。ただしこれは世帯あたりなので、単純に2で割って3337万円。これに100万をかけるとざっと33兆。赤字国債を帳消しにできるほどの額だ。

これを国債償還に充てるというのが当時の私の提案だが、代わりにこれをベーシックインカムの財源とするのはどうだろうか。生き残った全員に一律に配っても25万円。決して無視できる額ではない。

これをより「強くなる力を秘めた弱者」、すなわち若年者に傾斜配分できれば、効用はもっと上がるだろう。仮に未成年に配分したとすると、最新の統計の2379万人から逆算すると一人年額139万円。24歳まで広げても3154万人なので104万円。これだけあれば、大学どころか大学院教育まで無料化できる。子供が二人いれば、子育てを専業化することも出来るのだ。

我がながら妙案に思えてきたのだが、いかがだろうか?

Dan the Taxpayer


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この記事へのコメント
生前贈与が増えると思いますが、贈与税を100%にする気ですか?
子や孫になんかしてやるために働く有能な強者(曲亭馬琴とか)がやる気なくしますし、財布忘れた友達にジュース奢ってやることさえ不可能になりますし、現実的じゃないんですが。

死者の財産には何をしてもいいってやると、自分の墓を作ることが不可能になります。宗教の自由に対する滅茶苦茶な侵害のはじまりになりそうです。その辺への対策はあるんでしょうか。

死者の財産の究極の物として、遺体そのもの=臓器移植資源がありますが、これも100%強制で接収して移植に使うつもりでしょうか。
やらないなら、その倫理的な根拠を示さなければダブルスタンダードでしょう。
Posted by kk at 2008年11月14日 21:15
お邪魔します。

>弱者救済は死者をもってせよ

 問題は「人の意識がついていけるか」ではないでしょうか。特に国会議員
の地位ですら"世襲"になりつつあるこの日本で(小泉首相も三世)。例えば
「神の前では(金持ちだろうが貧乏人だろうが、地位や身分が高かろうが低
かろうが)皆平等」といった徹底した連帯意識が無ければ難しいのでは。
Posted by ブロガー(志望) at 2006年07月30日 08:48
妙案です。
ただし 現行の憲法では たとえ相手が死者でも 私有財産を100%没収というのは たぶん実現不可だと思います。
ですから95%とか98%とか99%を死者から没収というのが テクニカルな実現可能な方法だと思います。
財産目当てで兄を結婚した兄嫁と 中の姉の遺産相続争いを眺めているだけで 私は人生に疲れてしまいそうです。父がもっと早く長兄に生前贈与をして居ればよかったのです。なまじ財産があったせいで 金持ちアホぼっちゃんや 金持ちアホじょっちゃんになってしまった知人を私は山ほど持っています。
弾さんのご意見には 激しく同意します。
Posted by 貞子ちゃん at 2006年07月30日 02:05
お邪魔します。
 問題は「人間の意識はそう簡単には変わらない」事ではないでしょうか。
ビル・ゲイツも「死んだら自分の財産は全て寄付すると言っていたがそれを
撤回した」と聞いた事があります。ましてや日本は律令制の公地公民を「荘
園」という形で骨抜きにし(「土地の私有を認めた上で課税」ではない)、
国会議員も着々と「世襲化」していますし(小泉首相が三世)。
Posted by ブロガー(志望) at 2006年07月29日 06:47
なんか、国の借金ってのがどういうものか全然おわかりでないんですね。ぼくは手持ちの国債をいますぐ償還されても困るんですけど。多くの国債買って持っている日本人たちも困るでしょう。しかもそれを返済するのに、ぼくの資産を召し上げるんですか?自分の資産をとられて、自分の国債を償還してもらって、いったい何の意味があるんです? バカですね、あなたは。でも、あなたが自分の貯金をはたいて家屋を売り払って国の借金を肩代わりしようというなら止めはしませんが。
Posted by 国債買ってる人 at 2006年07月29日 00:24
でかいジャスコをつくれば、でかい駐車場の需要ができる。
だからつくってるだけで、郊外にそれ以外の需要なんてない。
一等地に大きな土地があけば、開発計画はだいぶ変わるんですよ。
揚げ足取るのは結構ですが、少しは頭を使ってください。
Posted by 税 at 2006年07月29日 00:09
少し言い方を変えると、全国民を国が実施するリバースモーゲージ制度に強制加入させ、かつ、その担保対象を不動産だけでなく全資産とする、というイメージですかね・・・。
Posted by 暇人 at 2006年07月28日 19:34
>郊外にジャスコが増えたのは、土地の権利関係が緩かったのも
>大きな理由のひとつです。

たしかに、地方では
デカいジャスコとデカい駐車場が増えてますが…。
Posted by Bar at 2006年07月28日 14:32
駐車場が多いのはまとまった土地がないからですよ。
ぶつ切りの土地はそういう風に利用するしかない。
郊外にジャスコが増えたのは、土地の権利関係が緩かったのも
大きな理由のひとつです。
Posted by 税制について at 2006年07月28日 10:19

>土地の流動性を高める

駐車場が増えるだけじゃないだろうか…。
Posted by Bar at 2006年07月28日 07:13
相続税は逃げ道があるので、私は固定資産税の強化が一番いいと思ってるんです。
ただ、工業用地にかけると外国に逃げるので、商業用地のみ大幅課税。

大きな市街地でも、意外に地主がたくさん土地持ってるんですよ。
土地の有効活用に非協力的な地主が多いことが、
停滞の要因になってる地域は多いです。
シャッター街なんて典型で、閉めてても生活できてしまうことが大きな問題。
土地の流動性を高めることが結局は地価を上げて、デフレ解消に役立つと思います。

この政策は、自民党からは絶対出ないでしょうね。
地主は自民党の有力な支持者だから。
逆にこれを民主党が掲げて戦えば、いい線行くと思います。
Posted by 税制について at 2006年07月27日 23:45