2006年09月18日 00:00 [Edit]

嫌老社会

初掲載2006.09.15; 発売まで掲載

ソフトバンククリエイティブより献本。

結論から言う。

老いる可能性のある人々、すなわち全ての人々は今すぐ予約注文すべきである。


「老い」に関するハウツー本は多い。「どうすれば老いを防げるか」「老いたときどうするか」「老いた家族をどう扱うか....しかし、それ以前に我々は「老い」とは何なのかをきちんと把握しているのだろうか?

嫌老社会」が提示するのは、その「老いと何か」ということの再確認である。そして本書を読むとわかるのは、いかに我々が「老い」なるものを誤解しているか、ということである。

老いに対する一般的なイメージは、「誰でも、年とともに、段階的に」そうなるというものである。我々は老いを「普遍的かつ連続的」なイベントとして捉えている。色なら「灰色」。漆黒の闇を終着点にしようと、白紙を終着点にしようと、その中間点としての灰色というのは、普遍的かつ連続的なものを象徴するにふさわしい。

ところが、実際の老いというのは、実に多彩で不連続なものなのである。全体を混ぜると確かに灰色になるのだが、人それぞれの老いには、生そのものとひけを取らないほどの色があるのだ。本書がまず訴えるのは、それを混ぜて灰色として扱うことには問題があるのではないか、ということである。

まず、「高齢者内格差」の問題がある。本blogでもその存在は指摘してきたが、実は貧富の差が最も激しいのは高齢者世代だということを我々は忘れがちだ。団塊とは言うけれど、実はその中身はちっとも塊になっていない。本書の指摘はそこからはじまり、古今東西の老いを観察した上で、実は老いは確かに誰にでも来るのであるけれど、老い方に普遍性はそれほどなく、そして連続性も乏しいことを見いだす。老いは実は自分にとって、「世界でたった一つの墓」なのである。

本書には、実にさまざまな老いが登場する。プラトンからPPKまで、著者の視野の広さは注目に値する。老いを抜きにして、誰でも知っている人の、ほとんど誰も知らない言葉に触れるだけでも本書の元は取れる。たとえば、儒教と言えば長幼の序の代表のように思われているが、その始祖である孔子がこう言っていたことをご存じだっただろうか?

子曰く
老いて死せざる是を賊となす

何と、賊である。これだけの剛直球は、炎上したblogや板でさえそうは見られない。

本書で惜しいのは、こうした言葉をふんだんに集めておきながら、参考文献リストがないことだ。本書は老いについて考える出発点にしてすぐれた地図ではあるのだけど、「次の目的地」に行くにあたって、凡例や見出しではなく地図そのものを見回さなければならないのだ。この点は編集部の至らなさだろう。

とはいえ、本書の豊かさと比較したら、それはささいな欠点だ。むしろ地の文以外の「まとめ」を希求するのもまた知的な老いやも知れず、その意味では現代人というのは最初から老いているという見方もありうる。

本書の最後において、著者は「罪と罰」のラスコリニーコフに言及する。有為の青年のために無益な老人の生命や財産を奪ってもよいのか。我々は建前では「それは駄目だ」と言っているが、しかし「老人はそれだけで尊い」という価値観を実は受け入れていない。我々がやっているのは、医療から年金まで、手管を尽くした「老人化の先送り」に過ぎず、PPK = 「ピンピンコロリ」というのは、老いを飛ばして死に至ることをよしとすることなのであるから、結局のところ我々は敬老という名の嫌老をしているにすぎない。著者も指摘しているように、19世紀に発せられたこの問いに対する反論を我々は見いだせないでいる。

しかし安易な答えを求める姿勢もまた老いというのであれば、我々は生まれつき老いているとも言えるし、そしてこの点に関して言えば、我々はいつでも「若返る」ことが出来るのである。本書はその意味においては立派な若返りの手引きでもある。これほどの若返りの効用が、わずか700円。ぜひその効用を試してみて欲しい。

Dan the Man to Age


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金融マーケティングとは何か【404 Blog Not Found】at 2006年11月20日 11:55
この記事へのコメント
やすいよやすいよ〜
たった700円の本が日に5冊
たった3500円。
30日でたった10万とんで500円
やすいよやすいよ〜

Posted by やっぱり火星人@ひだりマキ at 2006年09月15日 21:26