2006年09月26日 15:45 [Edit]
本を見ないブックオフは何を見たか

しかし、「コンビニ風の大規模な古本チェーン」そのものがマーケットとして成立することを証明したのは、立派に革命の名に値するのではないか。
恐妻家の献立表 - ■[メモ]ブックオフの本当の怖さブックオフの実態はコンビニ風の大規模な古本チェーン店であって、それ以上のものではない。したがって、出版流通に革命を起こしたなどとかつて喧伝されたが、アレは誤報。
同社では、従来の古書店が買い入れのさいの目安としてきた、内容(ジャンルや文壇・学界での評価)、著者の知名度、元値、市場での希少さ、などを斟酌せず、もっぱら見た目が新しく見えるかどうかという基準で買い取り値段を決める。これによって、採用されたばかりのアルバイト店員にも、古本の買い取りが出来、効率もアップする。革命的といえばこの点こそが革命的であった。
確かにその通り。ブックオフでは、基本的に本の内容に関係なく新刊の半額、三ヶ月たっても売れなかったら100円という、知恵を使わない価格設定をしてきた。最近はもう少しきめ細かくやっているとも聞くが、ブックオフが「本を本として見ない」戦略で成功を納めたのも確かだ。
しかし、それだけではブックオフの裏面しか見ていないことになる。それではなぜこれほど成功したのかわからない。ブックオフの表面、すなわちブックオフは本を見ない代わりに何を見たのだろうか。
客、厳密には、今まで古本屋の客にならなかった人々、である。
ブックオフ以前の古本屋というのは、いわゆる本の虫(私もそうだ)しか客として見なかった。店舗は薄暗くて埃臭く、その結果客は「オタ男」ばかり、フツーの子どもや女性が気軽に入れるところではとてもなかった。「オタ男」が主要顧客なので、当然「オタ男」の人口密度が充分ある都会にしか店舗はなく、田舎で古本を飼いたかったらデパートで時々開催されいた古本市を指を加えて待つか、都会まで足を運ぶかしかなかった。しかも軽いとは言えない本を持って、である。
ところがブックオフはどうだろう。コンビニばりの明るく清潔な店舗。田舎ならもちろん駐車場付き。ポイントを発行することで、リピータ確保も怠らない。しかもそのポイントも、それを処理するためのレジを導入するというハイテクな方法ではなく、レシートと一緒に出すというローテクなので、導入コストも大してかからない。「悪名高い」本を見ない買い取りシステムだって、田舎にはそもそも本を買い取ってもらえるシステムそのものがなかった。
ブックオフは確かに本を見ない。しかし客と店舗はきちんと見たのである。
ブックオフの成功は、商売というものの面白さをあらためて教えてくれたと思う。売り物ばかり見ていても駄目なのだ。あえて売り物を「ぞんざい」に扱ってでも、そうすることで今まで客でない人を客にし、店員になれなかった人を店員にするということがありえることを証明した点において、ブックオフの存在は日本の流通史から欠かせない存在になったと思う。
そんな私も、実は最近はあまりブックオフ、というより新古を問わずリアル書店を使わなくなった。懐が以前より暖かくなったので、安さより入手の容易性に重点が移ってきたということもある。それゆえブックオフで買ってネットで売るという「せどり」が成立するようにもなってきているのだろう。
ブックオフは確かに革命をなしとげたが、しかしそれは過去の話である。今度は今まで見てこなかった本をもっと見る時期に来ているようにも思えるし、ブックオフもそう思っているのだろう。最近Amazonでは「文庫オフ」の広告をよく見かける。ここはブックオフの子会社なのだが、他のブックオフとちがって本に対する思い入れが見える店舗構成になっている。
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このように、社長の中川氏もblogをつけていていて、ある意味「古き佳き古本屋」の雰囲気を感じる。もちろん、「古き悪しき」の部分まで懐古してはないのだけど。
今後も、本好きとしてはブックオフの傾向から目が離せない。
Dan the Bookworm
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だというから「オタ男」という表現にも
小飼氏の歴史がかいま見れておもしろい。
「愛書家」とか「本好き」とかその辺りの言葉を使えばいいのであって、
わざわざ侮蔑的な「オタ男」という表現を使うのは、折角の良い考察に
水をさしてしまっているように思う。
本を本として見ない。なるほどそういう仕掛けでしたか・・・。