2006年10月14日 18:30 [Edit]

YouTubeにとってGoogleとは何か

youtube logo

404 Blog Not Found:YouTubeの本当の価値にはずいぶん反響があった。 はてブは nbookmark とあっさり新記録を達成してしまったし。本blogはアクセス数の割には記事当たりのはてブ度はそれほど高くはないので、少し驚き。

このEntryに寄せられた疑念や質問のうち、二つは答えておく必要があるように感じているので本entryで答えることにする。


Note:YouTubeの価値
訴訟に負けたら、懲罰的な賠償金を支払うことになる可能性がありますよね。 懲罰的賠償金というのは、その企業が「痛い」と感じる額が設定されるそうなので、イージス艦一隻どころではなくなるのでは?
chart

もっともな質問だが、株主責任の原点に立ち返ってみれば、Googleは今回の買収に使った費用以上には痛くなりようがないということはすぐわかる。

YouTubeにとってGoogleとは何か。ただの株主である。将来はさておき、現時点では提携もしていない。役員も送り込んでいない。そして株主責任とはなにか?株価という有限責任である。株が紙くずになった時点で、それ以上の責任はない。もしあなたが株主の会社が、企業価値以上の賠償金を請求されたら、あなたのところに株数に応じた請求書がまわってくるか?まわってこないに決まっている。

だから、もしYouTubeが持っている以上の袖をYouTubeに振らせたかったら、YouTubeだけではなく、Googleをも訴えなければならない。訴えるとしたら何で訴えるか?監督責任?監督してないのに?ただの株主を?

事実、Googleの株価は見ての通り発表開けの10月10日(現地時間)こそ押したものの、すぐに平静を取り戻している。

だから、

アンカテ(Uncategorizable Blog) - グーグルは世界最大の有限会社である
でもたぶん、創業者二人にこの話をしたら、「そうだね、グーグルはつぶれるかもしれないけど、それが何か?」と言うだろう。最悪のことが起きても、彼らは借金を背負うわけではなくて、無一文になるだけだ。

という以前に、Googleが無一文になることはありえない。仮にPageとBrinがそれをよしとしても、Schmidtがそんなことは許さないだろう。

だから、Googleにとって一番よいのは、YouTubeを所有だけして放置しておくこと。

ITmedia News:Google、YouTubeを16億5000万ドルで買収
またYouTubeのチャド・ハーリーCEOは「これまで繰り返し『売却の意志はない』と述べてきたのに、Googleへの売却を決心した理由は」という問いに、「売却を否定してきたのは、独立した形でサービスを提供できなくなるのを恐れたため。Googleの買収ではそれ(独立)が可能だから」と答えた。

この意味を、もう一度よく考えてみよう。むしろこれはGoogleの本音にこそ近い。カモネギとまでは言わないが。

もう一つの質問が、こちら。

はてなブックマーク - 404 Blog Not Found:YouTubeの本当の価値
# 2006年10月14日 f-shin f-shin それが目的なら放置しとけば良いと思います。むしろ逆だと思うけどなー。

放っておいてもYouTubeが破壊を進めてくれるのに、なぜわざわざ買ったのかという質問。

それは、YouTubeが戦いに勝ってしまった場合のリスクヘッヂなのである。

現在のYouTubeの状況を見てみると、勝負は五分五分といったところだ。負けが見えているわけでも勝ちが見えているわけでもない。すでにいくつかのTV業者が提携に動く一方、YouTubeと争う姿勢を見せている業者もいる。実はTV業界を分断できただけでもYouTubeは結構すごいのだが、これでYouTubeが本当に勝ってしまうと、今度はGoogleがやばくなる。今のところYouTubeにある広告はAdSenseがほとんどだが、YouTubeの勝ちが見えた時点で彼らが自前で広告を集め出すだけでGoogleはその分の広告を失うことになる。

というわけで、今回のDealは、YouTubeが勝っても負けてもGoogleにとっていいDealということになる。しかも今回の買収は株式交換。Googleのバランスシートからは現金は1セントも動いていないのである。

今回の買収は、今までのGoogleの買収、すなわち「ふつーに自分たちがもっていない技術を買う」買収、あるいは「あちら側的買収」ではなく、競合相手を買って中性化(neutralize)するという、むしろ「こちら側的買収」に近い。Googleの能力が「あちら側」にしか通用しないと思っていたら大間違いであることも今回の買収は示しているのだと思う。

Dan the Watcher


この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
SNSに不安を抱くグーグル グーグルが2007年からフェースブックの存在を警戒し始めたのは、その本質を理解していたからだ。フェースブックのユーザーが、個人的なネットワークを通じて情報を集めるようになれば、インターネットにおける彼等の検索エンジンやナビゲーターは、
グーグル秘録 完全なる破壊 5/7〜新たなる敵【投資一族のブログ】at 2014年09月01日 21:11
弾さんのGoogleとYouTubeの話まとめ。 ・404 Blog Not F...
Dan the Watcher【今日のコネタ】at 2006年10月16日 17:38
私自身、法の専門家でないので人にこう言われると少し不安になります。 池田信夫 blog:Google/YouTubeの深いポケットなお法的リスクについて、GoogleはYouTubeの株主にすぎないので有限責任だという説明があるが、これは誤り。GoogleはYouTubeを完全に買収したので、法的に...
子会社の賠償責任は親会社に及ぶか?【404 Blog Not Found】at 2006年10月15日 23:13
WSJによれば、ニューズ・コーポレーション、NBCユニバーサル、ヴァイアコムなどが、YouTubeは違法だという結論に達し、これを買収したGoogleを相手どって損害賠償を請求する方向で検討しているという。賠償額は、違法なビデオクリップ1本について1.5万ドルだというから、7000...
Google/YouTubeの深いポケット【池田信夫 blog】at 2006年10月15日 16:32
続報の続報:懲罰的賠償(Punitive Damage)もなにも只の株主であり続ければ有限責任だし、と弾さんが書いてました。 (cf.404 Blog Not Found:YouTubeにとってGoogleとは何か  なるほどね、そうすればYou Tube型のビジネス・モデルが成功してしまった場合はその時点での最...
『移動祝祭日』 10/15/06〆【【THE FOOL ON THE HILL】】at 2006年10月15日 11:56
livedoor ニュース:グーグル、ユーチューブ買収で与える著作権問題への影響 素人にはよく分からない買収だ。ユーザーの立場としては、YouTubeとアマゾンやiPodあたりとの提携じゃないかと思ったのだけど。(初出10/13)
むしろYouTube+Amazon+iPodキボンヌ2.0【佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン】at 2006年10月14日 19:20
この記事へのコメント
GoogleがViacomに訴えられましたね。判決が出るのは当分先でしょうけど。

Posted by 妻はフィリピーナ at 2007年03月15日 03:47
はじめましてKと申します。

興味深く読ませていただきました。
ますますこの買収youtubeが買っても負けても損はない。
googleがますます強大化というわけですね。
この間googleが世界を席巻するという内容のNHKスペシャルがやっているのを見ましたが、あれは正直あまり気分のいい番組ではなかったです。

googleとの付き合い方を考えようと思ったところで、それとは関係なしにgoogleは勝手に一人歩きしていくでしょうから…。
Posted by K at 2007年02月09日 12:57
解説ありがとうございました。私のブログもまだ続けられるんですねホッ!ホッ!(o`Θ´)o
Posted by にゃんた at 2006年10月15日 13:12
そりゃだってただ予算取りたいだけですから><
Posted by k at 2006年10月15日 01:53
これはカルテルというか、共生みたいなものなんでしょうかね。
ビデオ共有のニーズは絶大だが、著作権リスクが伴う、
だからGoogleビデオでは完全に消費者サイドに寄った仕組みにできなかった。
YouTubeはそこでリスクを取って、結果的に圧倒的なユーザーを抱えた。
買収することで、株主としてYouTubeをある程度コントロールできるし、
訴訟リスク自体は当然YouTubeが負う。
YouTubeは、当面の資金繰りを気にせずにシステム増強に専念できると。

それにしてもこの圧倒的なスピード感は何なんでしょう。。。
片やどっかの島国では、世界トップレベルの光インフラをもちながら
「300億円で官民一体の国産検索だ」とかなんとか言って盛り上がってるわけです。
レベルが違い過ぎてもうダメです。

Posted by hama at 2006年10月14日 23:11