2006年10月17日 02:30 [Edit]

「あちら側」と「こちら側」のルールメイキング

はてな界隈で「人気」の「無断リンク」を眺めて気がついた。

このリンクされる側とする側の違いもまた、「こちら側」と「あちら側」の違いだということを。


ちなみに「こちら側」と「あちら側」という表現でピンと来ない人のために説明すると、この概念は「ウェブ進化論」で梅田さんが出した概念で、「こちら側」は「実社会」、「あちら側」は「ネット社会」だと大まかに思っていい。もっと詳しく知りたい方は同書を読むこと。すでに「あちら側」の人々には行き渡った表現だけど、今回は「こちら側」の人々も読者として想定したので、「あちら側」がワカっている読者にとっては野暮を承知で解説した。

無断リンクをあえて実社会に例えると、リンクされる側は家の中に玄関ではなく勝手口はおろか窓から入ってこられるような不快感を感じているのだと思う。だから「玄関」、すなわち「トップページ」にリンクしてくれと彼らは訴えるのだろう。その気持ちはわからぬでもない。

しかし、同じ実社会でも電話に例えると話は変わってくる。基本的にあなたの電話にはあなたの電話番号さえ知っていれば誰でもかけることが出来る。この場合、他の人の電話はすべて勝手口であり窓であると見なすことができる。そしてWebの世界ではURI(URL)というのは電話番号のようなものだ。それが代表番号であろうが個人用のケータイの番号であろうが、広報されている以上無断で紹介してよい、というのが「あちら側」の論理だ。

ここで、「こちら側」と「あちら側」のルールメイキングの違いが出てくる。「こちら側」がこういった問題に直面した場合、まず似たような事例を探す。例えば上の玄関の話など。そしてその場合、今までの社会通念ではその事例をどう扱っていたかを見た上で、その事例に従って問題を対処する。そしてそれから逸脱したものは「悪いこと」だとされる。

ところが、「あちら側」ではその理屈は通らない。技術的に可能なことはとりあえず「いいこと」であり、もしそれが本当に「悪いこと」だとしたら、それを排除するのもまた技術的になされなければならない。そしてそれを排除する技術がすでにあるのに、「悪いことをするな」というのは正当な苦情ではなく発言者の怠慢ということになっている。

そう。「あちら側」においては、実装されない法は法ではなく、ただの愚痴なのだ。

当然このことは「こちら側」との軋轢を生む。無断リンクもYouTubeとTV業界の確執もそのほんの一例に過ぎない。どちらもお互いの流儀で問題を解決しようとする。「こちら側」が勝つこともあるし「あちら側」が勝つこともある。

しかし、争っているうちに、「それが本当に悪いことなのか」という反省も生まれうる。

たとえば無断リンク。確かに「こちら側」の感覚では不気味かも知れない。しかしそれはあなたのサイトの地位を確実に高め、あなたのサイトの有用性を確実に向上させる。たとえば本blogは全部で HateB Total Countのはてブがある。"Hatena Bookmark Ranking by Livedoor Reader Ranking"を見ると個人ではトップクラスだが、それではトップページへのはてブがどれだけあるかというと、 に過ぎない。全体の1%にも満たないのだ。これよりもブックマーク数が多いページも本Entry現在で6つもあるのだ。

要するに、本blogは無断リンクを認めることで、リンク数を100倍以上に増やしているわけだ。

そして、トップページを飛ばして直接来るのは何も「無断リンク」だけではない。検索エンジンの存在を忘れるわけにはいかない。はてブに怒りを表明しておいて検索エンジンには文句を言わないというのでは、それこそ野良猫を叱りつけていて虎を無視するようなものだろう。GoogleやYahoo!にも同様の文句がないのはなぜなのだろうか。

ITmedia +D LifeStyle:インターネットは社会じゃない (1/2)
インターネットが一般に開放されたとき、そこは「ネット社会」ではなく、「ネット世間」と呼ばれるべきだったのである。

もしお互いに責任を問えないのが世間、問えるのが社会ということであれば、ネットは世間ではありえないと断言できる。「ネット社会」においては、実社会とは誰が責任を取るかが正反対なだけなのだ。

そして、責任の全うがコードの実装という形で行われる以上、実はネット社会は実社会以上に厳しく責任が問われる社会でもある。そこでは実社会のように、身内には甘く他人には厳しいというような「弾力的な責任運用」などというのは存在しない。デフォルトでは自分以外は等しく他人であり、そうでない仕組みが欲しかったら実装しなければならない。SNSの人気の一因は、それをまさしくMixiなりMyspaceなりが実装したからだ。

私としては、「こちら側」と「あちら側」のどちらのやり方がいいかは決めかねる。しかし少なくともWebサイトというのは「あちら側」なのだということは理解しておく必要がある。そこではあなたが泣こうがわめこうが、技術的に排除しない限り無断リンクはなされるのだから。

Dan the Man Between the Worlds


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 知らない間にはてな界隈が「無断リンク」問題で盛り上がっているらしいです。 これについては弾さんのエントリーが当を得ていると思うので、そちらのエントリーを参照していただきたいと思います。おわり。と言う...
「無断リンク禁止」と言われてもねぇ【知らないことがあってもへっちゃらさ】at 2006年10月18日 08:27
はてなブックマークを見ていると『無断リンク禁止』の話題がホットみたいですね こんな感じで⇒『はてなブックマーク - タグ 無断リンク』 私はリンクを貼るのに断る必要はないと思っているし、なぜ『無断リンク禁止』を主張する人がいるのだろう?と不思議ではあるので....
『無断リンク禁止』っていうなら、このくらいはやって欲しい!【こもぞうのひとりごと】at 2006年10月17日 23:33
404 Blog Not Found:「あちら側」と「こちら側」のルールメイキングを読んで。 「コードがネットのルールを規定する」という話がローレンス・レッシグの「CODE」と丸かぶりのような。といっても、私も「CODE」は実家に候
無断リンクとルールメイキング:「CODE」と「力ある者」【waveriderの日記】at 2006年10月17日 22:59
なぜ今「無断リンク」が問題なのか。 正直ビックリした。 オープンな仕組みであるW...
無断リンク【今日のコネタ】at 2006年10月17日 19:21
例によって夜中に目が冴えてしまったのでなんかして遊ぶ. 引用: あなたが泣こうが
無断リンクを排除する【* .fridge shell developers blog】at 2006年10月17日 05:21
この記事へのコメント
三島由紀夫でしたっけ?
「言葉は発された瞬間に自分のものではなくなる」と言ったのは。
HPなんかも公開された時点で自分のものではなくなっているんですよね。
8873さんの表現が実に的を射ていると思いました。
Posted by bob at 2006年10月19日 06:44
Web利用者が一般に広がってくることによって、大半の人は実世界の感覚を無条件に適用しようとしている(というか現実を映しこむことしか評価基準が無い)ように思えます。そこには技術的観点は全く無く。
で、そんなのは理解しなくてもよい、自分が生きる世界は自分の主張が受け入れられる世界〜インターネットはフロンティア、自分が開拓したところ(すなわち主張なりを展開するページ)は自分のもの〜なんだからと頑なに信じ込んでいる人がこういった本来不要な軋轢を生むのではないかと思います
>しかし少なくともWebサイトというのは「あちら側」なのだということは理解しておく必要がある。
と言うのも「あちら側」の人が押し付けてくる、自分には受け入れられない主張と思われているんでしょうね。
長文コメント失礼しました。
Posted by novtan at 2006年10月18日 08:11
九龍(校正人)様、
正当な苦情、確かに承りました:)
正答にしました:)
Dan the Typo Generator
Posted by at 2006年10月18日 00:42
意図的なのかもしれませんが
正答な苦情×
正当な苦情○

ではないかと思いますが。
Posted by 九龍 (校正人) at 2006年10月18日 00:34
確かに技術的に防衛策を取らない以上、善意の無いリンクは防げないと思います。ただ、「技術的にできることはやられて当然」としてしまうと、「作者の意図しないリンクをはる」という行為がDOS攻撃などの不正アクセスと同列であるというような感じを受けてしまいました。
Posted by 通りすがり at 2006年10月17日 22:21
名称はリンクから”ブクマ”がとってかわろうとしている昨今ですが、いまだに古くからの慣習と本質的な概念自体は根強く息づいてるんだと感じました。
用価値があるかないかというマインドマップ的な考え方を持ってリンクを繋いでいくというのはまさしくWEB2.0に則った新しいトレンドであり、それを否定する人種は大別してWEB1.0から脱却できないでいるってことなんでしょうね。
これも一種のあちら側とこちら側といえるんじゃないでしょうか。

長々と失礼しました。
Posted by 十里スガル at 2006年10月17日 13:30
ハテブはブクマでありブクマ以外のなにものでもないというトートロジーで説明できるかどうかわからないのですがブクマがブクマたる理由は限りなく自分本位であり、効率的・再利用的な”しおりを挟む”行為が前提にあるのではないでしょうか。
創作系サイトにありがちなのですが、リンクを貼るというのは敬意をもって行われる大それた行為であり、気軽に行うものではないと認識されているようですね。リンクの決断をサイト管理者の人間性にまで及んで考えられる方が多いことでも察することができるように。つまり自分が貼ったリンクを辿って訪問するサイレントマジョリティーまでも意識しているのでしょう。
貼る側の観点から見るとリンクを貼るという行為自体に様々な責任が生じていることになります。
Posted by 十里スガル at 2006年10月17日 13:29
梅田さんの功績は、この本で「こちら側」の人に『「あちら側」と「こちら側」ってものがあるんだよ』と知らせたこと。梅田さんの罪は、この概念にもうちょっとカッチョイイ名前をつけなかったこと(笑)

それにしても、Danさんの様に、『「あちら側」なんだから「あちら側」のルールを知りなさいよ』というのがいいのか、コメントの8873さんの様に「こちら側」の言葉に翻訳して説得するのがいいのか。どっちが近道なのかすらわかんないですわ
Posted by Tambourine at 2006年10月17日 09:57
リンクの是非なんてとっくに決着してる話かと思ってました。

http://www.cric.or.jp/qa/multimedia/multi15_qa.html
社団法人著作権

http://ascii24.com/news/i/topi/article/2002/07/02/print/636937.html
日弁連のリンク騒動
http://www.nichibenren.or.jp/ja/common/terms.html
今の日弁連の態度


トップ以外リンク不可というのは、著書を指定されたページから読めと読者に強制してるようなものではないかと思います。
Posted by 8873 at 2006年10月17日 08:42