2006年10月31日 12:00 [Edit]

ちょっとはまともな仕事を選べって

これが恥ではなく自慢になってしまうところが、IT業界に限らず「若者業界」の怖いところだ。

NC-15 - ちょっとはまともに取材しろって。
えっと、IT系といってもかなり幅広いのですが、この記事の読者層である開発系がどれだけ忙しいか、俺の例をあげると、忙しいころは月250〜280時間ほど残業してた時期、昼食休憩60分込みで勤務時間数に均すと月430〜460時間が1年半ぐらい続いてたことがありましたね。

実際、開発者の生産性が勤務時間の多寡とは関係ないことは、デキル人ほど知っている。むしろ、この時に「状況」の命ずるまま超過勤務してしまう人は、開発者としてもあまり伸びない。休むのも遊ぶのも仕事、いや人生のうちなのだ。それがわからない人はいつまでたっても追いつかないどころかますます引き離されてしまう。

また、勤務時間を忠実の証しとしてしまうと、デキル子が腐ってしまう。実際私が入社するまえの某社では、生産性が低い子→超過勤務→残業手当ガッポリという負のスパイラルが蔓延していたが、ここは私が大鉈をふるった。残業が利益にならないように給与システムを再構築すると同時に、「職場のヌシ」たちにははっきりとデータを示した上で、「あなたにこの仕事は向かない」ときっぱりと申し渡した上で会社を去っていただいた。これは職場にとっても彼にとってもいいことだったと今でも思っている。

むしろ、超過勤務に対して適切な処方箋を出せなかったのはシステム管理系の方で、これはもう純粋に人手不足のおかげ。開発系とちがって定時にそこにいることが必須なので、どうしても少ない人員を薄く広く配置せざるを得なかった。今はどうなのだろうか。

それでも、IT業界に限らず、「オモシロイ仕事」には、「自己搾取性」とでもいうべき落とし穴がある。その体験記が「搾取される若者たち」だ。これ、タイトルも含めて未熟なところが目立つ一冊で、Amazonの書評はからっきしなのだけど、少なくともこの「自己搾取性」の発見はそれを補ってあまりある成果なのではないか。

こちらはIT業界ではなくバイク便のだけど、なぜ趣味から実益を得ようとした若者達が仕事にのめり込んで行くのかという構造そのものは、IT業界と恐ろしいほどよく似ている。その様子がどんなであるかは本書の方で確認していただきたいが、この罠は、「好きこそものの上手」で成り立っている業界すべてで自然発生しうるのだ。

「仕事が忙しくて出会いの機会もない!」と思っているあなたは、実は「それほど忙しい自分」に陶酔してはいないだろうか?それは働く方にとっても働いてもらう方にとっても危険な兆候なのだ。そして残念ながら、働いてもらう側は今のところその危険性に対してより鈍感だ。働く側に注意を促すと同時に、働いてもらう側もこの問題に関してもっと積極的かつ戦略的に考え抜くよう強く薦めたい。そう。従業員の「自己陶酔」に甘えることは、本当は雇用者にとってより危険なのだから。

Dan the Self-Employed

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#!は「ギザギザバング」とお読み下さい。

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404 Blog Not Found:ちょっとはまともな仕事を選べって
404 Blog Not Found:ちょっとはまともな仕事を選べって【】at 2012年01月20日 08:00
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情熱は百(薬|毒)の長 - 書評 - ワークライフアンバランスの仕事力【404 Blog Not Found】at 2008年11月26日 04:37
メモメモ http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50674431.html 実際、開発者の生産性が勤務時間の多寡とは関係ないことは、デキル人ほど知っている。 むしろ、この時に「状況」の命ずるまま超過勤務してしまう人は、開発者としてもあまり 伸びない。休むのも遊ぶ...
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NPOの場合は、「オモシロイ仕事」の上、「社会貢献に資している」という自己陶酔が働く業界なのかもしれない。 404 Blog Not Found:ちょっとはまともな仕事を選べって 「仕事が忙しくて出会いの機会もない!」と思っているあなたは、実は「それほど忙しい自分」に陶酔しては
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・ちょっとはまともな仕事を選べって(404 Blog Not Found) はてぶを見ていたら興味をひかれたので。 「仕事が忙しくて出会いの機会もない!」と思っているあなたは、実は「それほど忙しい自分」に陶酔してはいないだろうか? 出会い云々は別として、これ学生にもあてはま
[社会]仕事とか【だめ大学生日記2.0】at 2006年11月01日 00:09
「ちょっとはまともな仕事を選べって」 すごい興味深いお話。IT業界でお仕事してる人は必読かも。 『 「仕事が忙しくて出会いの機会もない!」と思っているあなたは、実は「それほど忙しい自分」に陶酔してはいない??
激務自慢〜っ!【蒼と碧の幻想】at 2006年10月31日 22:59
阿部 真大『搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た!』 404 Blog ...
自己搾取性【Motoe Lab, TU】at 2006年10月31日 22:35
を否定するエントリを弾さんとこで発見。 > 勤務時間を忠実の証しとしてしまうと、デキル子が腐ってしまう。 ここ激しく同意したものの、自分は??..
働きすぎる人たち【('A`)ウェーblog】at 2006年10月31日 16:40
この記事へのコメント
以前国際会議に出たときに、
「日本では夜11時から12時まで残業するのが当たり前だ。
ちょっとなんかあれば夜中の2時3時とかもざらだ。」
と言ったら、
「いったいどこにあなたのライフ(人生)があるの?」
と他の全ての参加国の人から怪訝な顔をされたのをよく覚えています。
「同じような仕事をしているのに、
なんで日本だけこんなに残業して苦しまなきゃいけないのか!」
と心の底から思ったことがあります。
Posted by 英語侍@TOEIC940 at 2006年11月05日 01:44
すみません、よく見直したら
ご挨拶もしていませんでした。
遅ればせながら、初めまして。
Posted by くま at 2006年11月04日 10:37
結局雇い主側が短期的な利益を求めて居るからじゃないんですかね。
金儲けの為の道具としか扱われていないとかは、ちょっと行き過ぎかなとは思いますが。

雇われる側も道具根性が染み付いてる気がちょっぴりしないでもないです。
Posted by nameless at 2006年11月03日 00:29
>そもそも「超過勤務」をしなければ回らない職場が異常だと思う。
>現実的な意見ではないかもしれないけれど。

いやいや、それを
「現実的でない」
と封殺する風潮自体が非現実的なんだと思いますよ。

だって、システムのひずみを放置しておいたらいつか破綻するということがわかってないんだから。過労死や疲労による労働の質の低下は、社会保障費の増大としてはねかえってくる。企業が「国際競争力の維持のため」人件費圧縮をはかることが、結局は日本全体の競争力を削ぐ。もっと
「超過勤務自体が異常」
って声を上げられる社会であるべき。
Posted by Bar at 2006年11月01日 17:09
そもそも「超過勤務」をしなければ回らない職場が異常だと思う。
現実的な意見ではないかもしれないけれど。
Posted by そふ at 2006年11月01日 14:57
くまさん、
あ、ほんとだ。校正される誤字たち。
Dan the Typo Generator
Posted by at 2006年11月01日 11:08
はじめまして。
生産性が低い子が給料を沢山もらうのはもちろん納得いきません。しかし「残業せざるを得なくてやむなく超過勤務している人に相応の給料を与えない」というのも、それはそれで納得がいきません。
Posted by mushsh at 2006年11月01日 09:57
>その体験記が「搾取される若者達」だ。

すみません、ツッコませてください。
(お説には同意です)

×若者達
○若者たち
Posted by くま at 2006年11月01日 02:52
>長時間労働自体は違法ではないようです

いえ、違法です。

多くのIT系企業では労働組合がありませんが、そのような企業での残業は労働基準法第36条違反です。残業は使用者と労働組合とのあいだでの合意に基づかねばなりません。合意なく一日8時間以上働かせることは違法です。

また、時間外労働基準は「一ヶ月45時間を超えてはならない」ことが定められています。これは週あたり15時間で、つまり一日3時間を超える残業もまた準違法状態ということになります。
Posted by Bar at 2006年11月01日 01:22
長時間労働自体は違法ではないようです。むしろ
>残業が利益にならないように給与システムを再構築する
ことが違法行為になる可能性が高いと思われます。
Posted by 通りすがり at 2006年10月31日 22:28
> 実際、開発者の生産性が勤務時間の多寡とは関係ないことは、デキル人ほど知っている。むしろ、この時に「状況」の命ずるまま超過勤務してしまう人は、開発者としてもあまり伸びない。

半分事実でもあり、半分事実でもないような...実際システム開発系ではなくシステム納める系だったからな、弾さんとはチト事情が違うの鴨葱...

考えてみれば当時システムが売れれば売れるほどボーナスが貰えるが残業など付かなかったから、ド高い月収貰っていた割には時間給は低かったかな、お昼過ぎ(と言っても夜中のw)からおねえちゃんトコに飲みに行って、仮眠して仕事ってことを繰り返していたような気がする
Posted by マルセル at 2006年10月31日 22:01
元記事のNC旋盤の人が
>最後に、俺は決してデスマ礼賛してるわけじゃないんで。その辺はご理解頂きたい
とフォローしてるので、件のエントリを叩く気はあんまりないけど…。

みんないい加減、違法残業が「違法」だってことを強く認識するようになろうよ…。

↑の150時間だって違法だよね。

最近、高校の履修不足が(背景には政界の思惑があろうが)叩かれてるけど、そんなのの比べものにならないくらいの不正じゃない? で、みんな「自慢」はもとより「言い訳」のタネにしてる。違法行為を自慢したり言い訳したりしてるわけで。

みんなで声を上げて欲しいよ。
Posted by Bar at 2006年10月31日 19:35
コピライターの月150時間残業こそが、上で言う「それほど忙しい自分に陶酔」ではなかろうか。
Posted by aaa at 2006年10月31日 19:29
僕はコピーライターをやっていましたが、
一月の残業時間が150時間超えたことがあります。

結構長いなと思っていたのですが、甘かったみたいですね。
Posted by noriwo at 2006年10月31日 18:29