2006年11月01日 14:00 [Edit]

もう景気はいいから

逆説的ではあるが、景「気」をよくしたかったら、今必要なのは「刺激」ではない。

大西 宏のマーケティング・エッセンス:景気が悪いという巷の声が当たっているが
さて、それはそうとして、政治家や官僚も、そろそろもっと国内の消費についての刺激策を考えたらどうですか。ちょっと解せないのは、今の政府や与党が取っている政策は「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」という小平の考え方を公然と例に出して、まずは企業の業績回復を先行させて、経済成長という「鼠」がとれれば、やがて人々の所得も向上し、経済格差も埋まるということを平気でおっしゃっている人がいることです。いつのまに自民党は、途上国中国のしかもずいぶん昔の経済政策に汚染されるようになったのだろうかと不思議でなりません。

なぜ指標で見れば経済は拡大しているのに、景気はむしろ萎縮しているのか?

答えは簡単で、「明日が不安」だからだ。宵越しの金を持たないとのたれ死にするのではないかと不安な人が多いからだ。

と書くと、「日本の貯蓄率は下がっているではないか」いう反論があるだろう。確かにそのとおり。ぐぐるまでもない。しかし、これは「もう宵越しの金は必要ないから」下がっているのではない。「そうでもないと食えない」人、特に引退世代が増えたからこうなっているのだ。「いざなぎ景気以来の景気拡大」といっても大多数の人が「うちとは関係ない」と思っているのはそういうことなのだ。

だから、最高の景「気」拡大策は「刺激」とは正反対にある。不安を取り除くこと、すなわち「癒し」である。面白いことに、一番「癒し」を必要としているはずの人々がそれを分かっていない。それは前回の衆議院議員選挙を見ればわかる。もちろん選挙で惨敗した民主党はもっと分かっていない。

大西 宏のマーケティング・エッセンス:景気が悪いという巷の声が当たっているが
日本は経済先進国であり、鄧小平の頃の貧しい中国とはまったく状況が違います。日本にはそれなりの規模もあり、質のよい消費市場が国内にあります。それこそが国際競争力の源泉なのだということをもっと考えて欲しいものです。

というのであれば、まずは「景気中毒」の治療から取りかかってはどうだろう。むしろ景気を刺激するのは簡単なのだ。不安を煽ればいいのだから。前政権がやったのがまさにそれだ。しかしこれでそろそろ、景気の耐えられない軽さに皆も気づいたのだろうか。

景気拡大を目指す社会から、景気に左右されない社会への転換というのは、日本の規模ではまだ誰もやったことのない変革だ。そしてそれは必要なことでもある。中国とて、早かれ遅かれ経済成長が鈍化せざるを得ないのだ。その時に先例となっているのか「昔の栄光にすがっている」のとでは日本が世界に持つ意味がまるで違う。

断言しよう。経済成長を追っているうちはまだ日本は中二病なのだと。

Dan the Fed-up


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この記事へのコメント
 金融を中心とした非製造業が足を引っ張らなくなったので、製造業の企業業績が向上した。しかし、思いっきりグローバリゼーションの脅威をマスコミが伝えてきたので、企業が怖がって正規雇用を控えているのがいまだと思う。日本企業は日本力を信じて前進する気概が重要だと思う。
Posted by 日本力 at 2007年01月04日 12:03
 それでも「リストラ景気」よりも
「いざなみ景気」のほうがまともな
ネーミングだと思う。
Posted by よっち at 2006年12月17日 12:12
成長率が0を超え続けていれば景気拡大かもしれないけど、
それになんの意味があるのかということですね。
たまにマイナスになったりして、その分倍返しとかの方が、
景気拡大ではないかもしれなくとも、実感は大きそうです。

誤差程度のプラスを続けているのだとしたら、
それは景気拡大というより横ばいですよね。
その限られたパイを主張する人ばかり増えていたとしたら、
一般人の分け前は右肩下がりということになります。

数字的には大学院生さんが示したような理由から
実感が欠けてくるのでしょう。
Posted by aaa at 2006年11月01日 22:23
>景気拡大を目指す社会から、景気に左右されない社会への転換と
>いうのは、日本の規模ではまだ誰もやったことのない変革だ。
>そしてそれは必要なことでもある。
・・・
>断言しよう。経済成長を追っているうちはまだ日本は中二病なのだと。

ちょっと前にも、似たようなことを言っていた髭のおっさんがいました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%B9
Posted by 暇人 at 2006年11月01日 21:34
そもそも今回の景気は拡大の勢いはほとんどないわけで、それでも
景気が少しでも拡大している期間が57ヶ月を超えれば、「いざなぎ超え」となってしまうわけです。

ただし、そこで問題になっているのは、「景気の長さ」だけです。
そもそも「実感」しうるほど景気に勢いがないので、「実感できない」
というのが現状の景気認識の正しいところだろうと思います。
(「景気が『良い』のに実感できない」のではなくて)
Posted by 大学院生 at 2006年11月01日 18:07
弾さん

「いざなぎ超えだから景気が良い」という世の言説は半分本当ですが
半分は間違いです。

「いざなぎ超え」で問題になっているのは「景気の上昇局面の期間がいざなぎ景気を超えた」ということだけであって、「どれくらい景気が勢いを持って拡大しているか」は全く問題になっていません。


「いざなぎ景気」での年率平均の実質成長率11.5%。
今回の02年2月からの景気拡大局面では  2.4%。

名目成長率で拡大期間の伸び率を比べると、いざなぎ122.8%
今回の景気                   4.2%。

雇用者報酬、すなわち給与の伸び率で
                    いざなぎ114.8%
              今回      マイナス1.6%。

Posted by 大学院生 at 2006年11月01日 18:07
bonlifeさん、
気づいてくれてありがとうございます。
そふさん、
ずっと「み」で覚えていました:)
でも「いずれおわる」という意味を考えれば、「み」の方がいいような気がしないでも。
Dan the Typo Generator
Posted by at 2006年11月01日 15:05
s/いざなみ景気/いざなぎ景気/
…かな?
Posted by そふ at 2006年11月01日 14:50
[誤] 築いたのだろうか
[正] 気付いたのだろうか
Posted by bonlife at 2006年11月01日 14:47