2006年11月02日 13:45 [Edit]

経済2.0=複素経済学への道程

その癖、頑張った結果出る杭となると打ちにかかってくるのだから始末に負えない。

いじめが自殺につながる日本の「空気」 (宋文洲の傍目八目):NBonline(日経ビジネス オンライン)
子供のいじめは中国の学校にも、米国の学校にもあります。しかし、中国や米国の子供がいじめに遭い、自ら幼い命を絶ったという例を僕は聞いたことはありません。でも、日本では起きている。それは、なぜなのでしょうか。亡くなった岐阜の少女の遺書が答えています。日本は過剰に「頑張ること」を強いるからです。

しかし、ここで言いたいのはタイトルを見ての通りいじめに関してではない。

経済成長志向というのも、この「過剰に頑張れ」に由来するのではないか。

bewaad institute@kasumigaseki(2006-11-02)
裏返せば、アウトプットが同じであれば、投入するリソースがそれだけ少なくて済むということになります。それだけを聞けば結構なこと、という印象を持たれる方も多いかもしれませんが、投入するリソースとは、お金であり、技術であり、そして何よりも人ということ。

現在の経済学の問題が、まさにそこにある。金も技術も人も「リソース」名の下に十把一絡げなのだ。文字通り、糞も味噌も、「銭化」して一緒に扱ってしまうのだ。

現在の経済学では、必要なものを、必要な時、必要なだけ手配するということをあまり評価しない。残飯が出るほど用意し、その残飯をゴミとして処理する方が「経済成長」の観点から行けばいいことになってしまう。裏庭で燃やしていたゴミを、清掃センターに持って行って処分するのが、経済成長するということなのだ。

実際、中国の宴席では、食べ残すのが礼儀だし、合州国では"Food Fight"というのがある。パイ投げとかのアレのことだ。実のところ「中二病的経済心理」が今もって「グローバルスタンダード」なのである。

「経済成長は必要である」というのは、その意味ではわざわざいじめられに行くのと同じではないか。レッドオーシャン戦略もいいところである。それをやっても勝ち目がないのは前世紀に文字通り海を真っ赤に染めて学んだのではないのか?

必要な成長はもはや経済ではない。経済学の方なのだ。

そしてそのことは、学者よりも市井の人々の方がよく知っているのではないか。その一つの明かしが、こちらだ。

図録▽1人1日当たり供給カロリーの推移(主要国)

見ての通り、今や日本人一人が一日に消費する食料は、韓国にも中国にも抜かれている。しかしこのグラフだけを見て日本人の食事が彼らより祖末だという人がいるだろうか。

ここまでは間違っていない。間違っているのはこうした「質」の変化を、経済成長という「量」でしか推し量る術をもたず、そして別の指標を開発しようともしない我々の怠慢にある。

少なくとも、人々の営みという複雑で豊穣な世界を、「経済成長」の一言でくくるのは傲慢以外の何者でもない。

少なくとも、もう一本の軸がいる。私はそれを「虚の経済」と呼んでいる。

404 Blog Not Found:複素業
その意味で、「実業」と「虚業」を分けて貴賤を語るというのは、実に卑小な行為であり、この事に気がついていない人がいわゆる「エコノミスト」にも多いということは、「エコノミックス」の世界はひょっとするとまだEuler以前ということなのだろうか?

そう。実から虚へ。この流れはもう止められない。少なくとも地球で経済が閉じている間は。そして「経済成長」という言葉からは、この流れがほとんど見えない。

もちろん、虚も実の器がないと成り立たない以上、実をないがしろにするわけには行かない。しかし同じ大きさの器により多くの虚を盛ることができれば、それは立派に「成長」の名に値しないだろうか?

この「複素経済学」の観点から見れば、日本は実に先進的ではないか。今やフロンティアは海でも陸でも空でもない。我々の心の中にあるのである。

Dan the Complex Man


この記事へのトラックバックURL

この記事へのトラックバック
集英社新書編集部より献本御礼。 「お金」崩壊 青木秀和 すぐに書評したかったのだけどやっとAmazonでも発売が開始されたので。 経済、そして経済学に「なんだか騙されている」と感じている人、必読。
書評 - 「お金」崩壊【404 Blog Not Found】at 2008年04月17日 20:22
「選択の自由」が排除する人々過ぎ去ろうとしない過去 それでも私は屠り続ける +書評+ いのちの食べかた404 Blog Not Found この二人の論争を見ていて思い出したアニラジがある。 もう10年以上前1995年から1997年にかけて TBSラジオで放送されていた角川ファンタ...
忘れられrない思想【九龍的日常】at 2008年03月04日 21:23
先日、友人から次のような素晴らしい言葉を頂いた。 20代は 出る杭になる 30代は 出る杭を伸ばす 40代は 出る杭に出会う 50代は 出る杭を愛す なにか、これまでの私の生き方を肯定してくれた気がしてとても嬉しくなった。 20代は、上司や先輩と正面からあたり...
出る杭【HottaWorld::「活・喝・勝」】at 2006年11月21日 22:49
あのね、子飼いさんの言いたいことは 1.マクロケーザイにおいて通例、参照される数値(GDPなど)は   「真の経済成長」に対応しているか、どうか疑問がある 2.無理に頑張ることを美徳とし、休むことを敵視する風潮は止め   よう。これは真の成長でもある ...
山形ちゃん、またですか。ほんとに世話が焼けますね【あほあほ機動戦隊フマさん】at 2006年11月04日 10:44
昨日のエントリに対してDan Kogaiさんからご批判をいただきました。早速リジョインダーをと思うのですが、正直申し上げるならwebmasterはDanさんがお使いのバズワーズをどこまで正確に理解しているか、自身不安でなりませんので、誤解に基づく不当な主張がある可能性が多分に...
[economy]経済学1.0のススメ【bewaad institute@kasumigaseki】at 2006年11月03日 16:48
ここんとこのIPOってもう資産の額は関係なしで値がついてるわけだ。ということは今後土地建物は事業に必要なくなるのか?リアルの資産よりもネット上の資産の方が利益率が高く、固定資産税とかかからないので、メンテナンスのコストも安く済むということか。しかし、リア
クリック&モルタルは死語なんだな【HPO:機密日誌】at 2006年11月02日 15:51
この記事へのコメント
利点が損失を上回る(と判断している)から銭化するし、ゴミを清掃センターにもってゆくのである。あなたは煙に強い肺をお持ちのようで、誠に羨ましい。
Posted by 芋 at 2006年11月04日 18:13
山形ちゃんがなんか書いてるよ

http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20061103
Posted by ふま at 2006年11月04日 02:01
IMEってなぜか使うほどバカになるんだよねw
Posted by なんとなくだけど at 2006年11月03日 04:04
祖末→粗末

てか、どんなIME使うとこんな誤変換されちゃうの? うちには候補すら出てきませんが。
Posted by うぐぐ at 2006年11月02日 22:49
「虚の経済」って…
いわゆるヴァーチャルの世界のことですか?
確かに、ギルとかゼニーとかお金は実体経済のドルや円以上に飛び交ってるようですが。
Posted by koge at 2006年11月02日 22:26
>間違っているのはこうした「質」の変化を、経済成長という「量」でしか推し量る術をもたず、そして別の指標を開発しようともしない我々の怠慢にある。

GDPというのは質の変化も考慮されてますよ。質の高いものほど大きい量に換算されてるので誤解されてしまうのかもしれませんが。

>しかし同じ大きさの器により多くの虚を盛ることができれば、それは立派に「成長」の名に値しないだろうか?

経済学で言う生産性向上というのはまさにそのことでは?
同程度のがんばりでもよりよい暮らしが出来るようになるのが生産性向上です。国全体で0成長というのは誰かの生活水準が上がれば曽於の分他の人が下がってしまうということです。
Posted by ● at 2006年11月02日 21:53
>経済成長志向というのも、この「過剰に頑張れ」に由来するのではないか。

不況はがんばれる人も失業者のまま放置するのが問題です。

>現在の経済学の問題が、まさにそこにある。金も技術も人も「リソース」名の下に十把一絡げなのだ。

一緒にするときもあれば分けるときもありますよ。

>現在の経済学では、必要なものを、必要な時、必要なだけ手配するということをあまり評価しない。

これは一体何が根拠なんでしょうか?いらないものをいくら作ってたくさん在庫が出来てもGDPは増えませんよ。

Posted by ● at 2006年11月02日 21:50
「過剰に頑張れ」という経済成長志向を改め、人々の明日への不安を取り除くために社会ができること:

・経済成長を担う人たちのインセンティブを損なうことになっても、
 高額所得者から税金を多く徴収し、それを社会的弱者の補助に回す。

・経済成長を担う企業の生産性を損なうことになっても、
 能力はないが長時間働くことを厭わない人々の雇用を確保する。

しかし、前者を実施しようとすると、高額所得者の中には、この国は高額納税者に冷たい、俺はどこでも食えるんだから出て行く、と息巻く人や、挙句は、高額納税しているのだから低額納税者の意見に耳を傾ける必要はない、と民主主義の否定に走る人まで現れます。

後者を実施しようとすると、そういった人の所得が減るように給与体系を変更し、挙句は退職に追い込む経営者が現れます。

難しいものですね。
Posted by 暇人 at 2006年11月02日 20:00
大人自体が下流だのニートだのリストラだのと
メディアを通じて遠隔イジメ(笑)してますからねえ。
メディアは勝組の正論で回ってますから
言論人にしてもそういう人しか発言の場は与えられない
わけでしょう。
大人も子供も苛められる側の肩もつと自分も苛められるわけですし。

子供たちはなんの解決もないまま成人していきますから
これからは個人テロによる大人の復讐が増えるのかも。
量はともかく自分がとばっちりを受ける確率は
確実に増えてきているでしょうね。
Posted by 怖いなあ at 2006年11月02日 18:21
中国米国などでは自殺ではなく復讐及び拡大自殺に走るみたいですね。
中国ではいじめの仕返しに教室で手榴弾を爆発させ4人を巻き添えにした例もありますし、米国の銃乱射事件もある意味自分を受け入れない社会への復讐です。こういう「どうせ死ぬなら周りのやつらも巻き添えにしてやる」という自殺法を拡大自殺というらしいです。ある意味宅間守は拡大自殺だったかな。
Posted by bob at 2006年11月02日 16:05

貧乏人が増えてカロリー足りなくなんじゃないのw

Posted by 怖いのは at 2006年11月02日 15:59
このグラフを見る限り、日本の長寿の座は当分安泰なような…
Posted by さなえ at 2006年11月02日 15:39
毎回、関連書の紹介コメントで申し訳ありませんが…。

経済成長の質的転換については、下記の本の洞察がすばらしいと思います。
もし、未読でしたら、一読の価値ありだと思います。

見田宗介『現代社会の理論』
www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004304652
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db1990/9610mm.htm
Posted by blackdragon at 2006年11月02日 14:15