2006年11月20日 01:00 [Edit]

酒場の若者達(ナゴヤ)

あのentryは、クライアントに対してこういう目線を保てる人のentryとはたしか思えない。

池内ひろ美の考察の日々: 夫婦相談を行うとき
それぞれの夫婦に、それぞれのかたちがある。

さすれば「それぞれの人に、それぞれのかたち」があるというのは当然のことであり、またそれぞれの人の中にもそれぞれの人格があるのもまた当然のこと。職場ではまじめで有能な者が、家庭では暴君などというのも稀ではないし、その逆もまた真なのは自明のこと。

にも関わらず、我々はその人の属性Aを見て、たまたまその人の職業がBであるということを知っていると、なぜか職業Bには属性Aが付随すると思い込んでしまう。思い込みですめばまだいいが、何かのきっかけでそれを吐露してしまう。吐露してしまうだけならまだいいが、一月もたってから炎上してしまう。

確かに今回の池内さんの削除済みenrty、「期間工(トヨタ)」は、はっきり申し上げて弁護のしようがないほど浅はかなentryだったと私は思う。彼らが「ただ金を儲けることだけを求め」ているかどうかは、居酒屋で多少言葉を交わしただけではわからない。彼らにTVの出演料がわからないのと同様(安いです、はい。しかしそれでも絶対金額から行けば期間工の日当よりは多いはず)。もしかして、本人たちだってわかっていないだろう。私自身、ある仕事をしている時に、それが金のためなのか自己満足のためなのかは、渾然一体となってはっきりとはわからない。「いい汗かいた」ことと「いいギャラもらった」ことの相関関係は今イチ明らかではない。

また、彼らの給与が高いか安いかは、彼らの職場の仕事ぶりを見て、かつ彼らと同様の仕事(job description)を与えられている正社員を見て、その上で給与を比べてみないことには何とも言えない。二つ確かなことは、私は彼らの作った(かも知れない)車に乗り、そして彼らの給与を支払っている会社の株を少ないながら持っているということだ。それだけで、私にとっては職場の彼らを尊敬するに充分な理由だ。酒場の彼らを非難するのも軽蔑するのもいい。しかし彼らの職までその対象とするのは明らかに一線を超えている。

職場というのは、経営者がどう思案しようと会計原則がどう分類しようと経済学がどう分析しようと、「ただ一定の時間を過ごして、その見返りとして一定の金品を受け取るだけのところ」ではありえない。一日8時間労働なら、妻子と過ごす時間以上の人生を過ごす場所である。結婚/離婚に対して真摯に取り組む姿勢がある人であれば、同程度には真摯に扱うべき話題なのではないか。

それを踏まえてもなお、炎上がコメント欄だけの現象であることには首を傾げてしまう。なぜみなさんTBを活用しないのだろうか。blogだって実名を晒さずに書くことができる。仮にTBが受け付けられなくても(私も結構ある)、元記事が引用されていれば必ず「届く」。炎上以上の効用を書き込むことで得たいのであれば、そちらの方が断然お薦めである。

また、やはりこういった批判は、私なんぞよりも現場を知る人こそふさわしい。

トヨタ自動車期間従業員への道
引く不景気/就職難/リストラの影響で、3K(キツイ・キタナイ・キケン)職場の代表のような自動車会社の期間従業員(期間工)を選択肢の一つとして視野に入れ始める人も少なくないのではないでしょうか。(私もそんな一人でした)

の掲示板に、

期間工掲示板
こん**は。

私自身もこうして駄文をネットに書いているのでなんとも身につまされる話ではありますが(汗、こうした、底の浅い似非文化人の書く事なんかにいちいち腹立ててるとキリがありませんので、さっさと忘れてしまうのが一番かと思います。似たような話はblogだけでなく、テレビや新聞でも毎日のように起こってますしね。

自社記者の金品授受を匿名で報じる新聞なんかもある時代ですし、結局の所、信じられるのは自分の判断だけってな、生きていく上での本質がますます問われてくるんじゃないかなぁ…なぁんて思ってみたり。

上手く書けませんが、額に汗する人々が一番尊いってな昔ながらの価値観が最近よく分かるようになって来ました。ほんと、皆さん、お身体に気をつけて無事満了してください。

と、かくも冷静に書かれると部外者としては恐縮しつつも、しかしそのものわかりのよさもまた付け入られる隙なのだということも知っておいてほしいと願ってしまう。残念ながら資本主義というのはものわかりのよさをあまり評価してくれない。会社もお金も求め訴えないかぎりは歩み寄って来ないのだ。

そして自分の職場に対する理解も。

ホワイトカラーの世界では、仕事は報告があってはじめて完了したものとみなされる。少なくとも「まともな」職場ならそう教える。ブルーカラーの仕事はただでさえ疲れるのに、そこに持ってきて「求め訴える」活動をしたほうがいいのではないですかというのは酷ではあるのだけど、それでもそれよりよい方法を私は知らない。

そして、自分にとってはごくありふれた日常を語った言葉が、別の世界の人にはどれだけ新鮮に感じられるかということも知っておいてほしい。例えば小関さんの本を読むと、鉄の削れる匂いが必ず伝わってくる。「メタルカラーの時代」とかよりもずっとはっきりと。もちろん匂いが薄い分、それだけ多くの匂いを「メタルカラーの時代」のような取材本からは嗅ぐことが出来るのではあるけれども。

今や「手に職」では充分ではないのかも知れない。「口に言葉」がなければ。しかし、手に職があってはじめて響く言葉もある。そういう言葉を、私はきいていきたい。

Dan the Somebody to Some, Nobody to the Rest


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オレは有名になりたいんだ!!
伊藤マックスの勝利ブログ【伊藤マックス】at 2006年11月20日 14:20
この記事へのコメント
あらら炎上しちゃってますねぇ
Posted by   at 2006年11月20日 21:23
>職場ではまじめで有能な者が、家庭では暴君などというのも稀ではないし、その逆もまた真なのは自明のこと。
>にも関わらず、我々はその人の属性Aを見て、たまたまその人の職業がBであるということを知っていると、なぜか職業Bには属性Aが付随すると思い込んでしまう。

池内さんがどんな方かは知りませんが、
「どんな人でも陥りがちな思考パターン」と考えて心すべきなのか、
それとも「所詮どんな思慮深い人間も四方八方全ての事柄を重層的に把握することはできない」事例と考えたほうがいいのか。


Posted by qima at 2006年11月20日 12:52
本来、『「求め訴える」活動』のために「労働組合」というものがあったような気がするが、いつの間にか会社の代弁機関となってしまっている。
Posted by MB at 2006年11月20日 10:28
一体何時から収録が始まってたのでしょうか?
教えてもらえませんか?w
Posted by 大勲位鈴木亮佑 at 2006年11月20日 08:41