2006年11月25日 02:15 [Edit]

誕生日が同じ夫婦問題回答篇

palさんの解答待ちだったのですが、みなさん早くもしびれを切らしていらっしゃるようなので。

404 Blog Not Found:直感的な定理の反直感的な帰結
最後に問題。妻と私は誕生日が同じなのだが、カップルどおしの集まりにおいて、何組以上のカップルがいれば我々のようなカップルが一組以上含まれるでしょう?

まずはRETさんの解答。

1-(364/365)^N > P
ってことでいいんですかね.

一見正解に見えますが、違います。もし問題が「N人の中に、誕生日が同じ人がいる確率」であればこれでOKなのですが、この場合、「誕生日が同じ夫婦」ですので当てはまりません。

この点ガスコンさんはさすが。上の問題を考察した後で、ちゃんとそのことを見抜いています。

ガスコン研究所: ■コマネチ大学数学研究会「誕生日」
そこで、冒頭の弾さんの問題に戻る。これを確率の問題としてとらえると、カップルのふたりの誕生日が一致する確率は「1/365」であることは明白(うるう年は考慮外)。同じ結果を導くのに、わざわざ式を「=1-(364/365)」などと複雑にする必要はない。つまり、どのカップルも誕生日が一致する確率は、1/365なので、365組のカップルを集めたら、そのうちの1組くらいは、同じ誕生日のカップルがいると考えてもいいんじゃないの。弾さん夫妻と同じ誕生日のカップルとは、一言も言っていないので、どんな誕生日だろうが、とにかく誕生日が同じカップルがいればいいのだから。

なのですが、これも実は正解ではないのです。

それはなぜかというと、「誕生日が同じ夫婦が全くいない」場合というのがありえるから。

そのような状況は、簡単に作れます。例えば「誕生日が同じものどおしは結婚してはならない」というルールを作ってしまうだけでいい。その場合でも、仮に花婿候補と花嫁候補の数が常に等しく、かつ一日に生まれる人の数が常に同じなら、「夫は自分より一日早く生まれた人と結婚する」というアルゴリズムで確実に配偶者を得ることができます。この場合、2月29日問題すら発生しません。

誕生日の場合、「そんなバカな」ですが、例えばお隣の国のように、「同郷かつ同姓どおしは結婚してはならない」というように似たようなルールがありますし、それを言えばそもそも結婚は男女に限るというのもあくまでルールです。

このように、ルール設定によって確率というのは簡単に変わってしまうというのが解答その1。

解答その2は、さらに人を食ったものです。

正解は、一組以上。我々夫婦を招待すれば、確実にそうなります。

人を食った解答ですが、これにも往々があります。ドレイクの方程式という有名な問題があります。これは、「地球外文明は存在するか、存在するとしたらどれくらい存在するか」というのを確率論的に導こうという方程式です。

ドレイクの方程式 - Wikipedia
N = R* × fp × ne × fl × fi × fc × L

この各要素の確率がどれくらいかといのがSETIの主要命題ですが、しかしこの問題から「地球外」を取るだけで、答えは「少なくとも1つ以上」と明らかになります。

実はこの問題は、そもそも確率論で処理しようとした時点で正解ではなくなってしまうのに、あたかも確率論の問題に見えるところがミソなのです。確率を扱う場合には、さまざまな条件を仮定しますが、確率論に慣れていると、仮定にすぎなかったはずの条件を、あたかも事実であるかのごとく思い込みがちです。本当は、まず実測してみてから理論値と比較して、「サイコロに細工はしてなかったか」を結論するべきなのに、先に理論値を出して、現実もその通り進むだろうというのは専門家ほどハマる間違いのようです。

有名どころでは、ブラック-ショールズ方程式にまつわる逸話があります。ブラックとショールズはこの方程式を元に割安なオプションを探して購入してみたものの、実は割安に見えたのは購入したオプションの原資産の株を発行している会社が配当性向を変えたためで、彼らはそれを見落としたというオチです。

金融工学、こんなに面白い」にのっていたエピソードです。ちなみに同書には、ブラック-ショールズ方程式なしに、ずっと簡単な方法でオプション価格を求める方法ものっています。

ノーベル賞を取る人たちですらそうですから、我々が確率の落とし穴にはまるのは決して恥ずかしいことではないのでしょうというオチで本問題をしめくくることといたします。

で、実際のところどれくらいいるのでしょうか、誕生日が同じ夫婦。実は私も自分以外の実例を知らないのです....

Dan the Unpredictable Man


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弾さんの「誕生日が同じ夫婦問題回答篇」が提示された。私も「出題の意図」を考えなくもなかったのだが……。そもそも、「直感的な定理の反直感的な帰結」のエントリは、palさんの「事前確率」によって統計の見方が変わってくるという問いかけに書かれたもので、ヒントはたく...
■「誕生日」問題の答え合わせ【ガスコン研究所】at 2006年11月25日 21:34
この記事へのコメント
確率論に微妙にうそをまぜていませんか?

同じ誕生日の夫婦が離婚しないうちにあう確率など、
確率だけで計算できない問題をまぜていませんか?

カップルが同性か別性かでも計算がかわりますよ
Posted by とおりすがり at 2006年11月29日 00:59
>srqさん

ありがとうございます.

>「N人の中に、誕生日が同じ人がいる確率」〜「N組のカップル
>(というか夫婦)がいたとき、結婚記念日が同じカップルが1組以上いる確率」

というのは 1-(364/365)x(363/365)x... の場合ですよね.で,それは当初の問題ではないですよね(僕の最初の答も,そもそも弾さんの出題意図とは違ってますが).
shigepongさんが書いていらっしゃることと同じ前提を想定し,同じことを書いたつもりなのですが(さらにその後,最初のsrqさんの書き込みへと続くと思うのですが),もう少し考えてみます.
Posted by RET at 2006年11月29日 00:24
ちゃんと読んでなかったです。
「かっぷる」じゃないとだめなんでした。。
すみません。
Posted by perl始めました at 2006年11月28日 21:19
遅れす

n番目の人がn-1番目までの人と同じ誕生日である確率を
p(n)とすると

p(n)=(1-p(n-1))*(n-1)/365

となるので

p(1)=0 #一番目の人はだれとも重ならない
p(2)=(1-p(1))*1/365 = 1/365
:
と続いて
23人超えた時点で5割越え

漸化式の解き方はわすれました。。
Posted by perl始めました at 2006年11月28日 21:13
>RETさん
元の問題だと、「N組のカップル」がいたときに、その中に1組以上誕生日が同じ「カップル」が含まれる確立、ということだと思います。
これは365面のサイコロを二回ふる、というのをN回やっているようなものです。

だから、N組のカップル、すなわち2N人の中に1月1日生まれの人が二人いても、カップルになっていなければこの場合は除かれます。

RETさんの式だと、確かに「N人の中に、誕生日が同じ人がいる確率」になると思いますが、逆に今回の問題に即して言えば、これは、「N組のカップル(というか夫婦)がいたとき、結婚記念日が同じカップルが1組以上いる確立」といった感じになるかと思います。

サイコロの例で言えば、365面のサイコロをN回振って、同じ目が二回以上出る確立、といったところです。

これで伝わっているでしょうか…
Posted by srq at 2006年11月27日 17:40
わたしもRETさんと同じことを思いました(で、たしか23人で「少なくとも1組」の確率は0.5を超え、60人もいると0.99ぐらいになる)。
Posted by luxon at 2006年11月27日 11:04
検索したところ楽天の渡邉恒樹投手もご夫婦が同じ誕生日のようです。ご参考まで。
http://plaza.rakuten.co.jp/watanabe18/diary/200605170000/
Posted by aoshimanoa at 2006年11月27日 02:00
日本の高校数学では、ちゃんとやってりゃ、統計的確率をやるので、それを忘れないように素直に育てばOKって話でしょうか。
Posted by mnagaku at 2006年11月26日 21:45
問題の意図はわかりましたが,1つだけ.
>N人の中に、誕生日が同じ人がいる確率
は 1-(364/365)x(363/365)x...x(366-N)/365 であって 1-(364/365)^N ではないと思うんですが,僕はどこで考え違いをしているのでしょう?
「N人の中に、誕生日が『自分と』同じ人がいる確率」なら 1-(364/365)^N だと思うのですが,これだと元の問題から外れすぎだと思いますし.
Posted by RET at 2006年11月26日 15:54
要は「サイコロを何回振れば1の目がでるでしょうか?」という問題と同じということでしょうか?グラサイを使えば一発で出るし、いいがかりをつけて永久に出させないことも可能だろうし。でも普通は「6回振ったら1回くらいでてもよさそうじゃないの?」って感じの回答でよろしいんじゃないでしょうか?

弾さんは問題を作る側よりも解く側のほうが向いているように感じます、いい意味で。
Posted by 妻はフィリピーナ at 2006年11月26日 06:33
いくつか手計算でやったら、私のレスでいうE(N) = N/365 っぽいので、高校数学で言う「数学的帰納法」で証明してみたらできました(というか、直感的な答えでいうとそうなりますよね…)

なので、純真な高校生ならば「A. 365組」とすればよいのでしょうか。

…などと言っておきながら、もともとの仮定から間違ってたら相当恥ずかしいですけれど。
Posted by srq at 2006年11月25日 23:39
そうそう、爆弾テロが心配で今まで飛行機に乗れなかった人が、
ある日、統計学の先生に会ったそうな。
早速、爆弾を持ったテロリストと同じ飛行機に乗り合わせる確率を
聞いてみた。
「先生、一人の爆弾を持ったテロリストと乗り合わせる確率は
 どれくらいですか?」
「およそ、2万分の1以下ですね」
「それでは先生、同時に二人の爆弾を持ったテロリストと
 乗り合わせる確率はどれくらいですか?」
「極めて少ないですね。数十億分の1以下です」

それを聞いて以来、男は安心して飛行機に乗れるようになった。
いつも必ず爆弾を一つ手にして。
Posted by lba at 2006年11月25日 21:14
>shigepongさん
しろーとですが、ちょっと気になったので。

>したがって「誕生日の一致するカップル」が「確実に」一組以上含まれるようにすることはできない。

N>=1なら、n = 1/(1-(364/365)^N) > 1 が常に成り立つっていうことでしょうか。それの意味することとしては、「N組のカップルについて、(上でいう)n回試行したら、ひと組以上誕生日が一致するカップルが存在する」ってことですよね。これはN>=1なら常に成り立ちます(当たり前ですけど)
問題の意味からするに、多分、下に示す期待値
E(N) = Σ_(p=1, N) p*C(N, p)*(364/365)^(N-p)*(1/365)^p
(_(アンダースコア)の後の括弧はΣの上と下の添え字のつもりです。)
が1以上になるようなNを求めるというのがよいかと。

すぐ計算できそうな環境が今ないのでわかりませんけど。

間違ってたら、すいません。
Posted by srq at 2006年11月25日 21:13
夫婦では無いですが、うちのカップルも誕生月日は同日ですよ。
誕生年は違いますが。
Posted by 九龍 at 2006年11月25日 20:46
うちは祖父母通しが誕生日が同じです。
ここにコメントを書く人の人数×平均的な、
知り合いの数を母として、
コメント欄に書き込まれた"一緒ですよ"という報告の
数で割れば(以下略
Posted by ユウダイ at 2006年11月25日 19:00
ウチも誕生日一緒夫婦ですよ。3月21日同士で。
結婚記念日も同じ日にして濃縮してます。
Posted by Hammer at 2006年11月25日 12:24
注意:
「誕生日の一致するカップル」がひとりも含まれない確率をゼロにすることはできない。
したがって「誕生日の一致するカップル」が「確実に」一組以上含まれるようにすることはできない。
N=1であっても「誕生日の一致するカップル」がすくなくともひとり含まれる確率はゼロより大きい。
Posted by shigepong at 2006年11月25日 11:40
弾さんのおっしゃりたいことは分かりますが、確率を学ぼうとする高校生向けに設定を整理した答案も置いておきますね。

仮定(というか近似):うるう年は考えない。一年は365日とする。
仮定:カップルの誕生日も、カップルの選ばれかたもランダム
設定:「我々のようなカップル」とは「誕生日の一致するカップル」のこと

(1) このとき任意の一組のカップルが「誕生日の一致するカップル」である確率は 1/365
(2) 「誕生日の一致するカップル」の組数の期待値は、N/365
(3) N 組のカップルがいたとき、「誕生日の一致するカップル」がひとりも含まれない確率は
(364/365)^N
(4) N 組のカップルがいたとき、「誕生日の一致するカップル」が少くともひとり含まれる確率は
1-(364/365)^N
Posted by shigepong at 2006年11月25日 11:39
>ちなみに同書には、ブラック-ショールズ方程式なしに、ずっと簡単な方法でオプション価格を求める方法ものっています。

これ気になる。。。
Posted by もう at 2006年11月25日 11:39