2006年12月10日 20:45 [Edit]
多情で無法な日本人
国籍法は、日本国民の定義を以下のように定めている。
国籍法第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
- 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
- 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
- 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。
その後特殊事項、例外事項が続く。が、基本的にこの第二条が、私を含めほとんどの日本人に日本国籍を与えられる根拠となっている。そう。あなたが日本人なのは、法がそう定めているからだ。あなたが日本で生まれ育ったからではない。
それで問題がある、というのであれば、法を変えるのが法治国家のはずだ。似たような事件は、今回が初めてではない。法の壁に泣いた日本生まれの「非、国民」も一人や二人ではない。
しかし、なぜかその時に法の施行者を責める声はいつも出るのに、「法そのものを変えよう」という声は聞こえない。私自身は、この国籍法第二条はおかしいと常々思っている。属人主義は、国家間の競争と協調のスピードがこれだけ速い時代にはそぐわないし、仮に属人主義をよしとしたところで、父母の待遇に差がある第二項はおかしい。
もし国籍法を抜本的に見直すという候補が現れたら是非投票させていただきたいが、与党野党を問わずそういった候補は見当たらない。見当たらないということは、この問題は国民にとって「どうでもいい問題」であり、そしてこの法律もまたどうでもいいのだと結論づけざるを得ない。
無情なのは、法務大臣だけではない。これをお読みのあなたであり、これを書いている私である。
法治国家というのは、そういうことなのではないか。
茂木健一郎 クオリア日記: 白魔術最高裁判所、および件の法務大臣の判断は私のコモン・センスと違う。
しかし、日本の法の実務家にはそもそもコモン・センスを尊重する風土がない。
それを風土のせいにすることこそ、我らがコモン・センスなのではないか。
法が悪ければ法を変えればいい。それを放置しているのだから有権者が悪い。もちろん我々のほとんどは法の実務家ではなく、そして法の実務家のほとんどは公選されるわけではないのだが、それでも日本の法律では、立法府の法の実務家は公選されるのだし、そして行政府の大臣の過半はその中から選ぶことになっている。もし法の専門家に「コモン・センスを尊重する風土」がないのだとしたら、それは我々に「コモン・センスを法に変えていく」風土がないからだ。
逆に、情であればあふれんばかりに存在しているのもまたこの国の風土である。
CWSコモンズ via heuristic ways - 子供たちの祖国「まりはもう日本人じゃん!!」。そう言ってくれたのは私自身でなく、いつも一緒にいて私を一番見てきている私の友達です。私は日本人と変わらない事を率直にうったえている、何よりの証拠です。
必要なのは、「まりはもう日本人じゃん!!」と彼女に言ってあげることではない。「まりをもう日本人として認めるような法律を作れ」と為政者に要求する事だ。少なくとも、それが法治の意味する所である。彼女の学校は、そのように教えてきたのだろうか?
もういい加減法の不備を法務大臣のせいにするのはやめにしないか。
日本の法には、法務大臣以外でも「大臣の許可」という条項が多すぎる。結局のところ、「全て大臣が悪うございました」ということになってしまう。我々は今後も大臣をそういう「例外処理人」として使って行きたいのだろうか?
それがいやなら、いっそ情治国家を名乗るべきなのではないか。
Dan the Japanese by Law
この記事へのトラックバックURL
「出生前に死亡した母が死亡の時に日本国民であつたとき。」なんてありえないと思うが・・?
生物学的な差を無視した議論はやめていただきたい。
社会から徹底して無視され続けているだけで。
普通にありえると思うけど?
ただし母親が死んだ後におなかの中から子を取り出して命をとりとめた場合は,母親が死ぬ前に生まれたことになるんじゃなかったっけ?
法律に関しては、そういうこと多いですね。卑近な話で言えば、NHKの受信料徴収が納得いかないなら、NHKに文句を言うのではなく、放送法に文句をつけないといけないはずなのに。。
筋を通さないとなんて思います。
(たとえば)日本で生まれた人はすべて自動的に日本国籍として、成人したときに、日本国籍を捨てたい人には、選択してもらえばいいのだと思います。
今回はイラン人家族の問題でしたが、国際化が進む世界の中で、在日韓国・朝鮮人の方々の問題を解決しようとしないこと自体、おかしいのです。
ただ、それでも、法が実態と乖離している場合は、法務省のトップが柔軟に対応することが必要ではないでしょうか。すべて法律を厳格に適用するのであれば、そもそも、トップが人間である必要すらありません。(厳格に適用する、というのは論理学のようにはいきませんが・・・)
何十年たっても、抜本的な改正が行なわれない国籍法。
十年後も改正は無理だと(私は)考えています。
気持ちはわかるけど、今日日大岡裁きってのも……。
多分、件の家族が日本で生活していけるようにすることが目的なら、アプローチを変えた方がいい。
法を変えるためのアプローチは別途進めるとして。
どうせ大半は本件が忘れられた頃には興味を失ってるんだろうけど。
それが「かわいそう」drivenの行動の限界。
頭が冷えたら行動原理が消える。
属地主義ならば日本国籍を取れたはずの人々を、属人主義によって原則排除し、例外は大臣の許可で拾う、というのが現在のシステム。ならば批判しうる点は、1.原則排除してる点 2.例外機構が今回うまく働いてない ですかね。
それは結局、この国の民主主義が、戦争に負けたおかげでタナボタ式に手に入ったもので、自ら勝ち取ったものではないというところに起因する気がします。
一度、お涙頂戴で属地主義を認めれば次が大変です。
なんとしても日本に侵入してそこで子供を生めば子供は日本国籍です。
で、子供が日本国籍なのに親が日本国籍ではないのはおかしい、とマスコミと善良な人々が騒いでこれまたお涙頂戴……。
移民が押し寄せて日本が崩壊すると思います。
彼らがうまくいかない代わりに自分が幸福を享受していることは自覚した上で、私は法が無情だとは思いません。
国は、「その国の国民」を守るために存在しているはずですから。
>竹内薫さま
在日韓国朝鮮人の方々は、ちゃんと日本国籍への変更手段が用意されています。
にも関わらず彼らは在日外国人であることに固執しているので、この件とは話が違うように思います。
国籍問題を整理しようとすると、必ず在日朝鮮人問題や中国人が大量に移民してきたらどうするかなどの問題にぶち当たるので、政治家や役人や法がふぬけなのはしょうがない。誰も死にたくはないから。
そう、問題は自分は死んでもいいから世の中をよくしたいという人がいなくなったことに原因がある。
不法滞在が素行不良と評価されているわけですか?
難民申請や帰化申請をせずに不法滞在に陥ってしまったのであれば、これは相談に与っていた弁護士の不作為の問題であって、行政の責任ではないでしょう。
不法移民で苦しんでいる欧米の例を見ても、問題はどうやって帰化手続きに持ち込むのか、さもなければ本国に送還するのかという辺りに集約化してきているように思うのですが…。そして、後者は容易ではありません。
何ンでも特別ナントカで処理するばかりでなく、通常の手続きで済むことは済ませた方が良いように思うのです。
不法滞在が素行不良と評価されているわけですか?
つまりそういうことだと思います。
不法滞在の場合、何年いたとしても帰化は認められないと考えたほうがよいでしょう。
この事件のような例を「かわいそう」と多くの人が思っても、国籍法改正の話につながらないのは、やはり多くの日本国民は血統主義を保ちたいと考えているということではないでしょうか?
(私は出生地主義に変えたほうがいいと思いますけどね)
>官僚が法律を作るという三権分立を無視した行為が平然と行われている日本は、実は法治国家では無いのでは?
憲法72条前段「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し」
この「議案」には法律案も含まれる。それを受けて
内閣法5条内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し」
ついでに日本は議院内閣制だから、内閣の出す法律案は結局のところ政権与党の出すそれと同一視しうる。ついでに、内閣がどんな法案を出そうが国会は自由に否決できる。
官僚が法律を作ることには法の裏付けがあるし、むしろ三権分立だからこそ安心して官僚が法律を作っていい。