2006年12月11日 14:15 [Edit]

死後+20年より印税率20%を

どちらも同意なのだが、むしろ問題は法律というより現場の運用にあるということをコンセンサスとして確立した方がいいように思う。

池田信夫 blog 著作権の延長は有害無益だ
以前にも紹介したミッキーマウス訴訟の意見書でも明らかなように、経済学では著作権の延長が有害無益であることは100%のコンセンサスである。これは「著作者の権利と消費者の権利にはトレードオフがある」という一般論ではなく、著作者の保護はすでに過剰なので、これ以上強化することは害しかないのである。
著作権保護は死後ゼロ年でいい。著作権保護期間延長って意味わかんない。 [絵文録ことのは]2006/12/08
そんなことより、せめて「初版発行部数の10%」の印税が確実に手に入るようにしてください。そこを保護してくださいよ、死後の他人の利益より、今現在の本人の生活費を。

404 Blog Not Found:著作権vs著作利権
これが何を意味するかというと、「強い」著作権保持者ほど、多くの利権を手にする、ということになる。実は著作物の値段を決めているのは、著作権そのものではなく交渉なのだ。

その結果、作品を成り立たせるのに最も重要であるはずの著作権者の取り分は、今では異様なほど低いものとなってしまっている。印税は10%というのは世間の常識であるが、これは今や最低ではなく最高に近い。技術書ではさらに低いし、これが単著ではなく共著となると当然のことであるがさらに低くなる。自分で本を書くより、人の書いた本を売った方がマシという場合の方が多いのだ。

少し考えてみればわかる。Amazonでは最高6%(といって、そこまで行くアフィリエイトはかなり稀だとも思うが)を還元して、しかもコストが安いとは言えない個別宅配をしても利益を出している。裏を返せば流通マージンがいかに高いかということだろう。技術革新で出版コストも流通コストも下がっているはずのに、著作権者にはその利益がほとんど還元されていないのが現状なのだ。

その結果、日本の作家たち(本に限らない)は、信じられないほど多くの本を上梓する。まあ中谷彰宏だの和田秀樹はさておき、年間二桁という人も珍しくない。印税率10%で計算しても1000円の本が一万部売れてやっと100万円。四半期ごとに一冊出さないととても食えないだろう。

せめてこれを倍にすることは不可能なのだろうか?

著者の手取りを倍にして、残りのステークホルダーの受け取り分を据え置いても、1000円の本は1100円になるだけだ。印税率でいうと200円/1100円=18.18%ということになる。仮に印税率を20%としても、残りのステークホルダーの受け取り分を据え置くには 900円/80% = 1125 円でいいことになる。

ましてや、今や本の単価は新書ブームで下がっている。私にとって新書は「安い」というより「かさばらない」ことが問題なので、むしろ1500円程度だった新刊書がどんどん新書に移行して今の状況は大歓迎だが、印税の安さがやはり気になる。新刊書で1500円のものは、新書ならおよそ750円。しかし印税率が倍になれば、一冊あたりの受取額は新刊書と変わらないことであれば、新書の作りももっと丁寧になるのではないか。その際の価格は上の計算法で843.75円。私としては、850円なら喜んで買うのだが。実際今や1000円を超える新書も少なくないので、抵抗感はほとんどない。

法律をどうにかするのも必要だが、それは現場をもっと改善してからでもよいのではないだろうか。

Dan the Paperback Reader


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 いや、弾さんだけがそう主張しているのですよ。 つまり、弾さんは「日本中の書店は潰れてしまえ」と言いたいらしいです。 私がそう言っているのではない。本を買う人々が無言のうちにそういうメッセージを発しているということだ。
ご自分が書いたこともお忘れですか【浅倉卓司のログ】at 2007年01月01日 16:21
 弾さんのひどい難癖に対するフォローを簡単に。
弾さんの難癖にいちおうフォローいれておく。読む人少ないだろうけど。【浅倉卓司のログ】at 2006年12月23日 01:20
 現行の印税が安いと言うのであれば、ご自分で出版社を立ち上げて変えてみてはいかがでしょうか?
それなら自分で出版社を立ち上げればいいじゃない。【浅倉卓司のログ】at 2006年12月14日 22:44
読む方はとにかく、しゃべった後の編集は楽とはとても言えない。 池田信夫 blog バラエティ化する新書座談会という形式は、日本独特のものである。菊池寛が『文藝春秋』で始めたといわれ、しゃべるほうも文章を書くより楽だし、読むほうも流し読みできる。
バラエティとバリエーションの違い【404 Blog Not Found】at 2006年12月14日 05:49
著作権保護期間の話。 最近、現行の50年から70年へ延長しようって動きがあるけどコレってどうよ? まぁ、詳しくは以下を見て貰うとして、結局は企業が得をするだけじゃないの? 「著作者に敬意を!」って言っても、70年って長すぎない? なぜ20年延長するのが権利者
[I think] 死後70年【『ちゃっちゃ、ちゃっちゃ、うるさいっちゃ!』】at 2006年12月13日 21:07
#とりあえず簡単に報告を。もっとも前回のJASRACシンポジウムのほうもまだ手つかずなので、できれば一緒にまとめて、改めてこの延長問題についてエントリーしようと思う。ということで、ここが一番早かった、さすが。ネット時代の著作権保護期間延長問題??公開シンポジウ...
著作権保護期間の延長問題を考える国民会議のシンポジウム。【ふっかつ!れしのお探しモノげっき】at 2006年12月12日 10:25
英国著作権の保護期間、95年間への延長はなし そもそも、著者・作曲家の死後と著作権をなんでむすびつけなきゃいかんのかという話。
著作権と死後と何の関係がある?【佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン】at 2006年12月11日 23:43
この記事へのコメント
 私自身本をよく買うので、現在の形態の書籍がなくなるのは問題だと思ってますが、出版してもメリットがないと著者の方(専業の人は除く)に思われたら、それこそ商品がなくなります。
 版元の人が本があふれすぎていて、売れないと申してましたが、システム・業界構造上の問題が深く関わっているんですね。

音楽業界の方、全ての元凶はJASRACにあるように思えますが、どうでしょうか? 彼らが徴収しているお金は本当に演奏家などの手に渡ってるのでしょうか?

みしまさん、これがあまり箔にはならないんですよ。自分の作ったソフトの方がよほど良い仕事してくれます。

Posted by とある技術書の著者 at 2006年12月13日 13:22
 編集者さん。私もリアルのしがらみがあるので、あまり過激なことは書けませんが、出版社と編集プロダクションは作者を使い捨てにしている感があります。企画段階でこちらが色々提案しても、好きにしてくださいってスタンスです。
 また、2冊目の時は編集プロダクションがこれは売れないだろって企画を無理無理に通してしまいました。結果、私が書いた3冊のうち一番売れてません。

 再販制度や編集者さんが指摘しているシステム上の問題点は、業界の方が是正していくしかないと思いますよ。別の業界が主軸の私から見て、出版業界は既に斜陽だなぁと感じてます。
Posted by とある技術書の著者 at 2006年12月13日 13:21
書籍の印税はまだマシでしょう。音楽はひどいですよ。とくに実演家印税(音楽ソフトの売上印税)なんて、新人クラスならわずか1〜2パーセントの印税を演奏者(=バンドメンバー)で分け合うのですが、もちろんマネジメント事務所がその前に手数料を天引きしますから、一人あたりの分け前といったら…
Posted by 音楽業界 at 2006年12月12日 22:35
ひとつひとつの本が長く売れれば、こんなに印税が安くなることもないのですが…
しかし、実際には書店の棚は新刊書が多くを占めてしまい、
新刊書以外の売上は期待できません。
しかも、コンピュータ関係の書籍はスパンが短く、
ムックで三ヶ月、書籍で半年もすれば、情け容赦なく、版元の倉庫に戻ってきます。
一年以上書店に置いてもらえるのは、ごくわずかの例外に過ぎません。
欧米では、技術書であっても同じ書名の本を何回も改訂していくことができますが、
日本ではほとんど考えられません。

とにかく新刊書を書店に並べたい取次と、新刊書を出さないと取次から書籍の売却代金を回収できない日本の出版業界のシステムが日本の出版界をダメにしているように感じています。
まあ、本の企画を作っている私なども同罪かもしれませんが…
Posted by ある編集者 at 2006年12月12日 21:24
技術書は、自分自身の箔付けと思って書くしかないでしょう。
類書が多いのであまり売れませんし。
Posted by みしま at 2006年12月12日 02:11
ここ2, 3年くらいhitを飛ばしまくってるPragmatic Bookshelfは印税50%だそうです。
http://www.pragmaticprogrammer.com/authors/index.html
直接経費を抜いた分から50%なので、実際には35~40%くらいになるそうですが、それでもかなりの高率には違いない。
プログラマが本業を差し置いて本を書くためにはそれくらいじゃないとインセンティブがないかも。Rails本なんかは10月時点で2万5千部売れてるそうなので、十分な見返りだったと想像してます。
Posted by ogijun at 2006年12月11日 23:37
それでも印税は安すぎる。
と技術書を3冊出版した経験を持つおいらがコメントしてみる。
もう本は書きたくありません。
Posted by それでも at 2006年12月11日 16:52
中間マージンを大きくすることで雇用を創出している面もあるので単純な話ではないですよね。下手に現在の出版業界の構造をいじると街の本屋は大手を除いて軒並み閉店なんてことにもなりかねません。
Posted by bob at 2006年12月11日 16:01