2007年01月11日 04:30 [Edit]

書評 - Never Let Me Go

My Life Between Silicon Valley and Japan - 夏休みにお薦めの本、二冊。」をはじめ、各所で大絶賛の本書、原著の廉価版が出たという事で読んでみた。のだが....

わたし、もしかして見離されてる?


ピンと来なかったのだ。

何がピンと来なかったかと言えば、なぜKathやRuthやTommy、そしてHailshamの子供たちがdonorsとしての自分の境遇を唯々諾々と受け入れているかが。

何か見落としているかと思って読み返してみたのだが、わたしを説得する理由は見当たらない。強制されているわけじゃない。クスリを盛られているわけでもない。脳手術を施されているわけでもない。Hailshamの子供たちがあえて他と違うとしたら、両親がいない--らしいこと(はっきりとは書かれていない)何らかの形で不妊化されている程度のことぐらいだ(それがどんな方法かの記述ナシ)。

彼らdonorsはhalshamという全寮制の学校らしきところで懇ろに育てられている。ここはあくまで全寮制の学校であって、監獄ではないようだ。音楽だって聞けるし(タイトルがその伏線になっている)、映画だって見れる--それもよりによって大脱走 (The Great Escape)とか。性教育だってばっちりだ。

なのに、彼らは逃げない。脱走もしない。自殺もしない。ましてや凶暴化したりしない。いくら産まれた、いやもしかしてツクられた、時から安寧な環境で育てられたからといって、こんなのアリなのだろうか。いや、ありうるのかも知れない。子供の時から鎖でつながれて育った象の逸話じゃないけど、一見普通に育てられたが故に、運命を甘受するという可能性があるのはわたしも否定しない。

だけど、一人も脱走しないのである。gurdian(保護者)の一人、Miss Lucyが秘密をぶちまけても誰一人じたばたしたりしないのである。Hailshamを「卒業」した後、彼らは車を借りてドライブしたりもするのに、逃げようと思えばどこにも逃げられそうなのに、彼らはおとなしくcompleteするまでdonateしつづけるのである。

彼らに悩みがないわけではない。主人公Kathに至っては、自分の性衝動にさんざん悩んだりしている。彼らを我々と分け隔てるものは、出自ぐらいしかないように見える。しかし、なぜか自分がなぜdonorなのか、という悩みはないようなのだ。なぜ自分が弾なのか、5秒以上思考に空白が生じると悩みはじめるどこかのbloggerとは大違いなのだ。

これが例えばあずみのように、「超エリート教育」を受け、「使命」を果たすという経験を重ねて達観したというのであれば納得もいく。The Matrixのように、何者かによって夢を見続けさせられているとかというのでも話はわかる。羊のうたのように、運命を受け入れざるを得ないような自覚症状が出るでもまあいいだろう。

しかし、何度読み返しても、Never Let Me Goは、 How come it never occur to them to let themselves go? という疑問に答えてくれない。私が見落としているだけなのかも知れないが。

もしかしてわたしにはニンゲンとしてダイジなナニカがカケテイるという可能性もあるかなと思って書評を見回してみると、少ないながらも同様の感想を発見。

瓶詰地獄
ぜんっぜん面白くない。どんだけ各界で絶賛されようと、つまんないものはつまんないんだよう。
Digital X - リンク先ネタバレ警報アリ
まず、読み始めからして、調子が狂ったと言いますか、当てが外れてしまいました。本来なら冒頭からぐいぐい小説世界に引き込んでくれるのだろうと思っていたのですが、全く逆なのです。読み始めて数十ページがたってもいっこうに話が進みません。物語の核心がなんなのか、ほとんど触れられることがなく、周辺部をぐるぐる回っている感じ。ただヒントらしきものとして“提供”という言葉が何の説明もなく使われます。“提供”っていったい何のことよ、とイライラしながらちょうど100ページあたりまで付き合わされます。

Sci-Fiを今まで読みすぎたのかなあ。「生まれつきのdonor」というモティーフは、Sci-Fiの世界じゃ珍しいことでもなんでもなくて、一つだけ例をあげると新井素子今はもういないあたしへ....とかあるのだけど、いずれもdonorの心境(もし心境を持つ事が許されている場合)はほぼ例外なく描写されている。

それとも、翻訳の方がよかったのか。確かに「運命を従容する」おはなしは日本には少なくない。しかしその場合とてそれは不治の病でもなんでもいいけど、従容してしかるべき理由がどんなにさりげなくでも示されている。それをはしょっていきなり「運命を従容していくありさま」を描写されてもなあ。さすがThe Meaning of Lifeを出したお国の作品というのは偏見も過ぎるような気がする。あっちはちゃんと歌で説得してたもんな。♪Every sperm is sacred って。

冬目景あたりが漫画にしたら、まったく別の感慨が浮かんだかも知れない。

Dan the Reader Who is Let Go


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この記事へのコメント
わたしも(『も』と言っていいのか確証ありませんが)、冬目景の『ハツカネズミの時間』を思い出しました。
Posted by 遊庵 at 2007年01月11日 08:55