2007年01月29日 12:00 [Edit]

書評 - 透明金属が開く驚異の世界

本日紹介するもう一冊のサイエンス・アイ新書が、こちら。

これまた「特定分野の最先端の著者が、その分野を裾野から解説」した本である。


本書「透明金属が拓く驚異の世界」は、透明金属、すなわち透明酸化物半導体の本である。一見「進化する電池のしくみ」より専門度が高いように思われるが、「金属とは何か」「透明とは何か」という解説をきちっとしてから専門分野である透明金属の解説に入るというスタイルは共通している。

『透明金属が拓く驚異の世界』概要 (サイエンス・アイ新書Web)
本書が取り上げる「透明金属」は耳慣れない言葉ですが、 鉄や銅のように電気を通す物質でありながら、 ガラスのように透明な材料「透明酸化物半導体」のことを指します。 「ふーん、それで」と思われるのも当然ですが、 実は透明なものは絶縁体であり、 電気を通すものは不透明であるのが常識です。 つまり「透明金属」とは、ありえない未知なる物質なのです。
『透明金属が拓く驚異の世界』目次 (サイエンス・アイ新書Web)より編集
  • 第1章 プロローグ 材料研究が持つ可能性
  • 第2章 透明金属の用途
  • 第3章 透明金属ってどういうこと? 金属と絶縁体の違いはなに?
  • 第4章 電気を流すもの、流さないもの
  • 第5章 色と電気伝導度の関係
  • 第6章 新しい透明金属と応用
  • 第7章 ガラスが高性能の透明トランジスタに変身
  • 第8章 セメントを透明な半導体に、さらに金属に返信させる
  • 第9章 エピローグ 材料科学への誘い
  • 付録  物理定数とその意味
    • 重要な用語集
    • 便利な公式集
    • 小さい数を表す単位
    • 周期表

ブルーバックスを読み慣れているひとなら、透明で電気を通す物体が存在し、すでにあちこちで利用されていることはご存じだろうと思う。iPhoneのタッチパネルにだって確実に使われているだろう。しかし12CaO・7Al2O3、すなわちセメントが成分が実は「透明金属」になりうるということまではどうか。私も本書をよんで「へぇ」とうなった一人である。物性物理は私が苦手な分野なだけに、他にもまして本書から得る事は大きかった。

ところでこのサイエンス・アイ新書、注目しておきたいのは各書の内容もさることながらシリーズを通したフォーマットである。全書二色刷り、200ページ前後で短いながら索引付き。そしてここが重要なのがだが、どれも1冊900円。依然指摘した通り、講談社ブルーバックスよりも、ナツメ社の図解雑学に近い。が、「図解雑学」が「雑学」、すなわち裾野探検に終止しているのに対し、「進化する電池のしくみ」および「透明金属が拓く驚異の世界」は、ブルーバックスともガチである。実に意欲的なのである。

これはソフトバンク クリエイティブが後発であることによる好影響だろう。ライバルを徹底的に研究してこのフォーマットにしたのは間違いないからだ。実際、新書の中でここまでフォーマットが徹底しているのはダントツでサイエンス・アイ新書だと思われる。他の新書はこういっては何だが、カバーさえ取り替えればどの出版社かはわからないが、このサイエンス・アイ新書はどこを切ってもサイエンス・アイ新書だとわかる作りになっている。

これがどれほど編集側に負担を要求するかは想像に難しくない。実際のサイエンス・アイ新書の出版点数はやっと10冊。ソフトバンク新書がもう30冊近いことを考えれば、後発であることを考慮に入れてもゆっくりであることがわかるだろう。この姿勢には非常に好感が持てる。

加えてサイエンス・アイ新書には実に充実したWebサイトが用意されている。他の新書ではこうした著書のWebへの反映はほとんど著者まかせだが、こちらは必ず概要と目次をblog entryで紹介している。まさにシステムで作り、システムで売るというおもむきだ。

ほんと、ブルーバックスもうかうかしてはいられない。これを機会にブルーバックスも巻き返しをはかってもらって、互いに切磋琢磨する関係になれば、一読者としてこれほどうれしいことはないのだが。

Dan the Reviewer


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この記事へのコメント
目次中の「返信させる」は、元のWebサイトですでに間違ってるんですね。
さらに本の目次も同じように間違っているとしたら、もう間違いとは言えない…?
Posted by sanewo at 2007年01月30日 17:42
直接関係ないですが、今朝の日経15面に
「文教堂、業界キーパーソン500人限定、
 書籍販売実績を毎朝電子メールで配信」
って記事がありましたよ。

文教堂のPOSデータはなかなか貴重なので、弾さんもらってblogに活かしてみては?(べっ別に弾氏をキーパーソンだなどと持ち上げる気はないんだからねっ←ツンドラ)
Posted by Bar@ブルーバックスを絵本がわりに育った at 2007年01月30日 08:01
透明電極なんかは液晶画面には不可欠ですよね。
Posted by bob at 2007年01月29日 17:21