2007年03月01日 00:30 [Edit]

書評 - われわれはどこへ行くのか?

松井孝典の本なら、やはり最初の一冊はこちら。

これを読んでから、「松井教授の東大駒場講義録」を読むというのが順序としてはいいと思う。


本書「われわれはどこへ行くのか?」は、地学の世界的第一人者、松井孝典による、チキュウ学(地球|知求)学の本(「チキュウ学」は松井教授の東大駒場講義録より)。チキュウ学は帯にあるとおり「宇宙の始まりから人類の運命まで」あつかう、実に壮大な科学だ。

その壮大な科学を、ちくまプリマー新書という、岩波ジュニア新書と並んで新書の中ではもっとも「わかりやすく」かつ「納得しやすく」書かなければならないメディアに対して書いたのが本書である。これが面白くないわけがない。

目次 - 筑摩書房 われわれはどこへ行くのか? / 松井 孝典 著より
  • 第1章 われわれはどこから来たのか
  • 第2章 われわれはどこへ行くのか
  • 第3章 地球生命とアストロバイオロジー
  • 第4章 地球環境の歴史
  • 第5章 われわれの宇宙はどうやって生まれたか
  • あとがきにかえて―「わかる」とはどういうことか

本書の魅力は、なんといってもその壮大さにある。その壮大さは、私が感想を述べるより本人に語ってもらった方がいいだろう。アトランダムに三カ所ほど。

p.84
われわれの宇宙は特殊である
p.89
生物学では宇宙人と議論できない
p.109
汚染が悪なら地球の歴史は悪の歴史である

このスケールの大きさは、Carl Saganを彷彿させる。実際氏が扱う分野はほぼSaganのそれと重なる。Saganが主に宇宙を、そして松井が主に地球を語っているのは、米日両国の国の事情--地球外科学の層の厚さ--の差によるが、どちらもすごい業績を上げているのは間違いない。松井がSaganほど知られていないのは、CosmosやContactというメディア露出の違いであって、業績は決して劣るものではないと思う。地球科学にノーベル賞があったら、受賞していて然るべき人だと思う。

もっとも、「人類圏」に関する松井の見解は、私個人としてはSaganのそれほど「わからない」し、特に政治的な見解に関しては、「納得できない」ことが多い。「昭和80年」戦後の読み方を見ると、この人も「品格オジサン」のエピゴーネンかという思いにとらわれなくはない。

しかし、「今の環境問題は、地球システムの理解なくしては考察できない」という点は完全に同意するし、「五億年後、地球から生物圏は消える」という知見がそれよりずっと短いであろう人類圏の行く末に確実に影響を及ぼすことは「わかる」し「納得できる」。

希有壮大で地に足のついた話が好きな人に勧めずにはいられない一冊。いや、一著者。

Dan the Pale Blog Dot on the Pale Blue Dot


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こんなサイトを立ち上げるというのも好きものだなと思うとともに、それを取り上げるのも暇だなという感がありますが、IEのブラウザーで見ようとするとIEが閉じてしまうサイトがあります。FirefoxとかOperaなど、IE以外のブラウザーならなんの問題もなく見ることができ....
インターネット エクスプローラでは見えないサイト【大西 宏のマーケティング・エッセンス】at 2007年03月01日 12:01
この記事へのコメント
>希有壮大

気宇壮大のシャレでつか?
Posted by 佐藤秀 at 2007年03月01日 08:08