2007年05月01日 00:00 [Edit]

書評 - オックスフォード・サイエンス・ガイド

初掲載2007.03.05; Amazon販売開始につき再掲載

これはすごい。

重さも、厚さも、値段も--そして面白さも。


本書「オックスフォード・サイエンス・ガイド」は、英国屈指のサイエンスライターであるNigel Calderの大エッセイ集の全訳。主人公は建前では現代科学なのだが、本当は現代科学者たちである。

本書がドシャメシャのは、その網羅度。これが単著というのが信じられない凄まじさである。以下の目次を見れば、それがわかる。あまりに分量があるのでsignatureの後に掲載した。

しかし、この分量に圧倒される必要はない。文章は実に軽快で闊達なのだ。超重量級なのに身軽なこと関取のごとし。その上、本書には数式やグラフが一切登場しない。個人的にはこの点が不満なのだが、理科嫌いの人でもざくざく読める。本書の書評に当たっては

ライブドアの「本が好き!」担当のS氏
なお、大著のため築地書館さまからは、書評を書くにあたり1/3〜1 /4程度をお読みいただいた段階でいったん執筆していただき、読了後 に追記していただければかまわない旨を言付かっております。

という言葉をいただいているが、あまりに面白かったので、気がついたら体調不良でベッドにいたということもあって一気読みしてしまった。なんだかちょっともったいない。

いや、ちょっとどころではない。本書は税抜きで24,000円もするのだ。これは普通の人の一年分の本題に匹敵するだろうし、私ですら半月分に相当する。気軽に買って下さいといえる値段ではない。

この価格設定には、何とも複雑な心境である。確かに本の質量(質、量、そして質量 - B5版、832ページ、重さ2kg!)を考えれば、本書は決して不当に高いわけではない。しかし原著は£25、Amazonでも5000円ちょっとで買えることを考えると、もう少し手が届きやすい価格にして欲しかった。本書から一番得るものが大きいのは中高生だと思うのだが、これでは彼らの小遣いでは買えない。

だから、私は本書を親御さんに薦める。もうすぐ卒業式シーズン。卒業祝いとしてならこの価格も正当化されよう。本書にはそれだけの価値がある。もし卒業祝いとして渡すなら、中学卒業がふさわしいだろう。残念ながら高校卒業だとすでに文系、理系の分離がされてしまっているのでタイミングとしては遅い。もちろん懐に余裕があればそのタイミングである必要はない。

もう一つの潜在購読者は、やはり図書館だろうか。私は中学--いや不登校生だった頃、図書館にあれ買ってこれ買ってとずいぶんおねだりをしたものだが、当時の私なら本書は確実におねだりリストに入れていた。

にも関わらず、現時点において本書はAmazonにもLivedoor Booksにも置いてない。築地書館におかれては、一刻も早くネット書店での販売をはじめてもらうよう働きかけていただきたい。さもなきゃ卒業式に間に合わない!

ご覧のとおり、今回の書評は「本が好き!」経由の献本がベース。ただし今回は特別ルールで、出版社による書評者指定。書評者に選ばれたことに改めて感謝します。だから早くネットで入手できるようにしてくださいませ!どんな良著だって手が届いてなんぼなのですから。

Dan the Sciencephilia

目次 - http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1319-7.htmlより
  • 序文:クモの巣へようこそ introduction
    • あふれ出す玄武岩:衝突した彗星が大陸を動かしたのか 001 flood basalts
    • アルコール:酵母が酒を創るとき、遺伝学の夜明けがくる 006 alcohol
    • 暗黒エネルギー:加速する宇宙の力を暴く 008 dark energy
    • 暗黒物質:ピーピー泣く風か、ばりばりの機械か 015 dark matter
    • 遺伝子:先祖から授かった四色の知恵の言葉 021 genes
    • 遺伝子組み換え作物:よかれあしかれ、地球規模の実験は始まってしまった 030 transgenic crops
    • 宇宙:「我々の登場を知っていたに違いない」 037 universe
    • 宇宙から見た生物圏:「世界の全体を見たいんだ」 047 biosphere from space
    • 宇宙航法:宇宙開拓民は孫に先を越されるか? 054 astronautics
    • 宇宙線:一番強い粒子はどこからくるのか? 060 cosmic rays
    • 宇宙の鉱物:星くずから水晶、そして石 066 minerals in space
    • 宇宙の天気:なぜ昔よりやっかいの種になっているのか 070 space weather
    • 宇宙の分子:星々の中の不思議な化学 079 molecules in space
    • 宇宙背景輻射:宇宙の壁紙の模様を探す 085 microwave background
    • エネルギーと質量:アインシュタインのもっとも有名な方程式における通貨 092 energy and mass
    • エルニーニョ:暖かい海が世界の気候を揺らめかす 098 el nino
    • 開花:遺伝子通路の華麗な変異 103 flowering
    • 海流:世界のセントラルヒーティング 107 ocean currents
    • カオス:蝶とテントウムシ、そして水星効果 113 chaos
    • 核兵器:危機一髪勝利したのは 122 nuclear weapons
    • 火山噴火:次の大地震はどこで? volcanic explosions
    • 幹細胞:自然と医療の組織工学 136 stem cells
    • カンブリアの爆発:得やすいものは失いやすし、先史時代の動物たち 140 Cambrian explosion
    • ガンマ線バースト:毎日作られる新しいブラックホール 145 gamma-ray burst
    • 記憶:記憶を維持し、忘却する化学をさぐる 150 memory
    • 利き手:ついて離れぬ左対右の謎 158 handedness
    • 起源:ポインター 165 origins
    • 気候変動:凍るのか焼かれるのか 166 climate change
    • 恐竜:なぜ結局は小さいことが美しいのか 175 dinosaurs
    • 極端好み:思いもよらない場所で元気に生きる生き物たち 179 extremophiles
    • 銀河:生まれたての宇宙にユノの乳を探す 185 galaxies
    • クォークのスープ:陽子のない世界を再創造する 190 quark soup
    • クローニング:性交なしの子作りがなぜ健康に悪いか 193 cloning
    • ゲノム全般:化学コードで表される生命の全歴史 200 genomes in general
    • 言語:なぜ新しい話し方を作るのはいつも女性なのか 209 languages
    • 元素:崩壊する巨星と爆発する矮星、そして星のひと吹きが遺してくれたもの 216 elements
    • 光合成:庭の草木はどうやって大きくなるか 225 photosynthesis
    • 高速旅行:特殊相対性理論の常識 232 high-speed travel
    • 氷のいかだに乗せて:急激な気候の変化で氷河が押し寄せる 240 ice-rafting events
    • 穀物:地球でもっとも大事にされている住人を、遺伝子が後押しする 246 cereals
    • 細胞周期:いつどのように、ひとつの生体がふたつになるのか 254 cell cycle
    • 細胞の交通:郵便番号、踏み石、そして生命の複雑さを認識すること 258 cell traffic
    • 細胞の死:生命はどのようにして自殺を進化の計画に組み込んだのか 263 cell death
    • 地震:なぜ正確に予知できないのか、あるいは防げないのか 267 earthquakes
    • 重力:アルバートおじさんはほんとうに正しかったのか 274 gravity
    • 重力波:重たいニュースで宇宙を揺るがす 284 gravitational waves
    • 衝突:彗星、小惑星との衝突のもたらす物理的影響 288 impacts
    • 植物:ポインター 296 plants
    • 植物の病気:進化の武器か、それとも単なる塹壕戦か 297 plant diseases
    • シロイヌナズナ:植物学者に全体像を提供した目立たない雑草 301 arabidopsis
    • 進化:ダーウィンの自然淘汰で物語が完結しないわけ 304 evolution
    • 進化する分子:日本の異端児がいかにして汚名をすすいだか 317 molecules evolving
    • 人類の起源:なぜ掘り起こされるのはみんな大叔母さんなのか 322 human origins
    • 彗星と小惑星:雪の泥球といとこの岩球 331 comets and asteroids
    • S(スージー)粒子:異質な物質と力の超世界 339 sparticles
    • スターバースト:銀河の交通事故と星のベビーブーム 344 star bursts
    • スピーチ:ヒトをチンパンジーより能弁にしている遺伝子 348 speech
    • 生態進化論:変異性と生存とを捉える新しい視点 355 eco-evolution
    • 生物多様性:共存の数学 360 biodiversity
    • 生物時計:日常を支配する分子の仕組み 369 biological clocks
    • 生命の木:ふしだらな細菌と進化の道筋 376 tree of life
    • 生命の起源:謎の答えは外宇宙にあるのか 385 life’s origin
    • 絶滅:すべて天空からの一撃のせいだったのか 393 extinctions
    • 先史時代の遺伝子:旅の営業マンと定住者とを分類する 399 prehistoric genes
    • 相対性:ポインター 408 relativity
    • 素粒子の一族:物質とその振る舞いの標準理論を完成する 409 particle families
    • タイムマシン:現代物理学最大のテーマか? 417 time machines
    • 太陽の内部:音波がわれわれの母なる星をハダカにする 420 sun’s interior
    • 太陽風:太陽風はいかにして、われわれが暮らす太陽圏をつくってきたか 429 solar wind
    • 大陸と超大陸:世界の始まりからのコラージュ作り 438 continents and supercontinents
    • 炭素循環:それは地球の気候とどう関わり合っているのか 444 carbon cycle
    • 蛋白質生成:印象派のダンスからほんとうの分子映画まで 451 protein-making
    • 蛋白質の形:いつか、小刻みに震えだす蛋白質を見られる日 456 protein shapes
    • 力:ポインター 462 forces
    • 地球:太陽系のほかの惑星とどうしてこんなに違うのか 463 earth
    • 地球外生命:わたしたちは天の川にひとりぼっちか 472 extraterrestrial life
    • 地球の輝き:光り輝く雲が気象の変化を告げ、後押しする 482 earth shine
    • 地球の酵素:今、地質学者、化学者、生物学者をひきつけるもの 488 global enzymes
    • 地球のシステム:ポインター 497 earth system
    • 中性子星:空で時を刻む時計と、その静かな影 499 neutron stars
    • 超原子、超流動、超伝導:行進するボソン粒子 505 superatoms, superfluids, superconductors
    • 超弦理論:宇宙の想像力を調律しなおす 512 superstrings
    • DNA指紋:親子鑑定から顔の多様性まで 519 DNA fingerprinting
    • 天然痘:乳搾り女の恩寵と将軍の呪い 521 smallpox
    • ニュートリノ振動:見えない素粒子がかくれんぼをする 526 neutrino oscillations
    • 人間の生態学:環境植民地主義をどう越えるか 532 human ecology
    • 脳の画像化:鮮明な映像は何を語るのか? 540 brain images
    • 脳の配線:なぜ神経は、どこで接合すればいいかを知っているのか? 547 brain wiring
    • 脳のリズム:人間が思考するリズムの数学 552 brain rhythms
    • バーナルの梯子:ポインター 557 Bernal's ladder
    • 胚:「コントロール遺伝子が化学コンピュータを動かしている」 559 embryos
    • バッキーボールとナノチューブ:とことん小さく、とことんたくさん 565 buckyballs and nanotubes
    • 発見:なぜ第一級の研究者がたいてい間違うのか 574 discovery
    • 反物質:サハロフが作ったコートはほんとうに、それがないことを説明するのか 583 antimatter
    • ヒッグスボソン:数百万ドルを費やして質量の源を探る 593 Higgs bosons
    • ビッグバン:インフレーション宇宙の巧妙な早業 600 big bang
    • ビットとキュービット:デジタルの世界に忍び寄る量子の影 609 bits and qubits
    • ヒトゲノム:基礎生物学の産業化 614 human genome
    • 氷雪圏:氷床、海氷、山の氷河が語る複雑な物語 624 cryosphere
    • 不規則な材質:散らかった固体と固まった液体の不思議 630 disorderly materials
    • 不死:われわれは百歳までで満足したほうがいいのか 634 immortality
    • 物質:ポインター 640 matter
    • プラズマ結晶:新たに発見された力が埃に力を与える 641 plasma crystals
    • ブラックホール:クエーサーと活発な銀河の恐るべき動力 647 black hales
    • プリオン:人肉食と狂牛病から見えてくる遺伝と進化の新しい形 656 prions
    • プレートの動き:地球の表面を改造した岩の機械とは何か 663 plate motions
    • プロテオーム:生体分子のコールド・バレエ 672 proteomes
    • 分子のパートナー:化学反応の仕上げは自然に 679 molecular partners
    • 文法:コンピュータの世界支配の前に立ちはだかるもの 684 grammar
    • 星:彼らの歌を聴き、大きさを測る 690 stars
    • 捕食者:帰れ、オオカミどん。すべて水に流す 696 predator
    • ホットスポット:地球の奥深くには、ほんとうに煙突があるのか 700 hotspots
    • 哺乳類:乳を作る先祖を、漂流する大陸に探す 705 mammals
    • 免疫機構:何が私で、何があなたで、何が嫌らしいバイ菌なのか 712 immune system
    • 有望な怪物:彼らはいかにして進化の革命を告げたか 722 hopeful monsters
    • 弱い電気的力:ヨーロッパはいかにして素粒子物理学のかつての栄光を取り戻したか 732 electroweak force
    • 利他主義と攻撃性:人間性の二つの側面の起源を探る 739 altruism and aggression
    • 量子のもつれ:謎か不気味か、でも役に立つ 749 Quantum tangles
    • 霊長類の行動:人類の文化誕生のヒント 758 primate behaviour
  • 巻末解説:森山和道 764
  • 引用元一覧
  • 人物索引
  • 事項索引
  • 著者紹介


オックスフォード・サイエンス・ガイド
  • 著:ナイジェル・コールダー
  • 出版社:築地書館
  • 定価:25200円
livedoor BOOKS
書誌データ / 書評を書く

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これ、私が肌で感じている感覚とえらいちがう。 科学技術のアネクドート | 科学書のきびしい現状一般的に、科学書は、日本の読者からは疎まれている存在といえそうです。
科学書の定義、ぷりーず【404 Blog Not Found】at 2007年12月16日 06:45
The 2,3 turing machineが出たときに紹介しようと思っていたらなんだかんだで後回しになってしまった。 A New Kind of Science Stephen Wolfram 私はこれまで全てのページに少なくとも3度以上目を通した。 が、とても「読了」(read)したとは言えない。せいぜい「...
一年以上かけて読(める|むべき)一冊 - 書評 - A New Kind of Science【404 Blog Not Found】at 2007年11月13日 04:18
小飼弾氏が404 Blog Not Foundで<これはすごい>と評しているが、まったくそうとしか言いようがない。簡単にいえば英国屈指のサイエンスライター、ナイジェル・コールダーNigel Calderによるポピュラーサイエンスエッセーの倀??
「オックスフォード・サイエンス・ガイド」(築地書館)―これはすごい。【social web rambling】at 2007年05月07日 17:45
この記事へのコメント
Wikipediaの記事を便乗翻訳しました。業績年表は省いています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ナイジェル・コールダー

英語版の記事を作成したレナート・マルコス・エンドリッツィ・サバッティーニ博士も膨大な論文を書いていらっしゃるようで。
http://en.wikipedia.org/wiki/Renato_M._E._Sabbatini
Posted by courant at 2007年03月06日 01:09
本のAmazonへのリンクが404ではございませんか?
Posted by ねこねこ at 2007年03月05日 18:24