2007年03月19日 00:00 [Edit]
書評 - あなたはコンピュータを理解してますか?
初掲載2007.03.18
その「蛭子能収」先生(笑)も納得するであろう一冊。
finalventの日記 - 蛭子能収先生、それは違いますだこれを大学の一、二年生の教科書に使える先生が少ねーからですだ。
本書「あなたはコンピュータを理解していますか?」は、コンピューターという、人間にとってはあまりに単純ゆえ明解でない装置のしくみを、どこまで平易に説明できるのかに挑戦した本。正確には、2002年に技術評論社から出た同名書をサイエンス・アイ新書に再収録したものである。きっかり半額になったのも素晴らしい。
目次 - 『あなたはコンピュータを理解していますか?』目次 (サイエンス・アイ新書Web)より加筆- 第1章 その味噌汁の塩分はいかほど? - 正味の情報量は意外と少ない
- インスタント味噌汁が商品として存在可能な理由
- 人間の手、ドラえもんの手、そしてコンピュータの手
- 1杯の味噌汁の中に塩を求めて
- たいへん「ありがたい」お話
- 言葉の塩分量を調べてみよう
- まとめ:データとは情報を入れる容器である
Column アナログマンとデジタルマン
- 第2章 油田のパイプラインと伝言ゲームの連続 パイプが細けりゃ、通るものも通らない
- パイプをつなげ! はて、どうやって?
- 向こう側とこちら側をつなぐもの
- 限界のその向こう側
- 濃縮還元な塩水の作り方
- コンピュータには何が見えているか
- まとめ:情報量はわかった、では情報とは?
Column 魔法の塩分計測器・エントロピー
- 第3章 自動販売機はコンピュータ理解の始まり - あるいは、自動販売機と人生ゲームのステキな関係
- 自動販売機の気持ちになって考える
- 入ってきたお金を覚えよう
- 他に似ているものがないか考える
- ちょっと難しく考える:抽象化のキモ
- まとめ:計算機の動きは絶えずして、しかも元の状態にあらず
Column エントロピーのグラフ
- 第4章 記憶のカースト制 - 時間と空間の近さ・遠さ
- 汝のプログラムを愛せよ
- 蓄音機の針は踊る
- 二兎を追うモノ
- まとめ:メモリは一列でもあり、ピラミッドでもある
Column もう一つの局所性 - 超整理法は昔からあった?
- 第5章 師宣わく「未来は常に移り変わっておる」- コンピュータの限界とその先
- チューリングの置き土産
- 未来へと続く道
- 未来の社会は
- まとめ:未来は常に移り変わっている
Column アプリケーション
目次を見てわかる通り、本書がカバーするのは計算機科学の基礎理論。基礎として必要な範囲を必要充分に抑えている。フォン・ノイマンのオートマトンの説明として自動販売機というのはありふれてはいるけど、シャノンの情報理論が味噌汁の塩加減に化けるとは誰が予想しただろう?
ただし、本書でわかるのは理論なので、実際に動いているコンピューターのしくみを知るには次に進む必要がある。本書の次に読むべきは「石頭コンピュータ」だろう。両方きちんと読んでいれば、SICPに進むには充分だろう。
本書に対する批判としてすぐに思いつくのは、「話が冗長」というものだ。技評版に対するAmazonの書評を見ればそれがわかる。計算機科学をきちんと履修した人ならなおのことそう思うだろう。しかし、「知っている」のと「わかってもらう」のには天地の差がある。嘘だと思うのなら、あなたのご両親でも子供でもカレカノでも誰でも言い。コンピューターのしくみをまだ知らない人に、本書よりも簡単に説明してみればいい。まず無理だから。
同じ内容のが書いてある本なら、私が専門書よりも一般書を高く評価するのはそのためだ。専門家になるとこのことを忘れてしまいがちになるが、違う説明を通してすでに理解していることを再発見するのは、専門家にとってもよいことなのである。本書が再々発見している「『超』整理法」もまさにそうだった。著者も「超」整理法に関しては、私と全く同じ見解を示している点にも我が意を得たり。
コンピューターのしくみを知らない人にはもちろん、知っているつもりの人にも、本当に知っている人にも読んで欲しい一冊。知らない人は知るために、知っているつもりの人は「つもり」をなくすため、そして本当に知っている人は知らない人に説明するというのはどういうことかを知ってもらうために。
Dan the Codesmith

